エネルギー基本計画
ファクトチェック

 第5次エネルギー基本計画が7月3日に閣議決定されました。再生可能エネルギーを主力電源とすることを課題としながら、原子力発電・石炭火力発電をベースロード電源と位置付ける従来の計画のままで、世界のエネルギーシフトの流れに逆行するものです。「原発依存度を最小限に」と言いながら2030年における全エネルギーに対する原子力発電の割合を20~22%としています。
矛盾やごまかし、事実誤認満載の「エネルギー基本計画」をファクトチェックし、104カ所(下にリンクを配置)に絞って以下に掲載します。
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パブコメくん
 第5次エネルギー基本計画にある記述に対して、下記の5つの評価を下し、その理由や問題点をコメントしています。
  • 矛盾(エネルギー基本計画の他の箇所あるいは現行のエネルギー・環境政策と矛盾している)
  • 意味不明(文意が不明である)
  • 半分間違い(部分的な情報は正確だが、重要な詳細情報が不足している。または文脈から逸脱して歪曲されている)
  • ほぼ間違い(若干の正確な情報を含むが、重大な事実を無視して印象操作している)
  • 間違い(不正確な情報である)
#1 矛盾・
ほぼ間違い
  • 復興庁の「所在都道府県別の避難者数 (2018年2月13日現在)(pdf) 」によると、避難者数は、福島県だけでも50,562人(県内16,467人、県外34,095人)である。もし、政府が深い反省をしているのであれば、このような被害規模の矮小化は問題である。なお、第4次エネルギー基本計画では、復興庁の避難者数とほぼ同じ避難者数の数字が記述されていた。(pdf)
  • ここでは、「安全神話」は、政府及び原子力事業者が陥ったとしている。しかし、#64では、国民が「安全神話」に陥ったと読める箇所がある。このような矛盾した記述は、「安全神話」を作った政府及び原子力事業者の責任が曖昧なことが要因だと考えられる。
#2 矛盾
  • もし安全を最優先するであれば、原発の再稼働はより慎重であってしかるべきである。また、今のエネルギー・ミックスの数値目標も政策も再生可能エネルギーの拡大には不十分、原発依存度の低減にもなっていない。
  • 九州電力のように太陽光発電を抑制して川内原発を再稼働させるというのは、第5次エネルギー基本計画にたびたび出てくる「再生可能エネルギーの拡大」という目標と矛盾している。
#3 意味不明
  • エネルギー技術が希少資源というのは意味不明。必要なのはエネルギーであるのに、それを生み出す技術(発電方法)が資源という非論理的な議論になっている。そして、資源だから原発技術も残すべきと示唆しているように読める。
  • エネルギー技術自体は、再生可能エネルギーの発展経路を見ればわかるように、今後、ますますパソコンや家電のように日用品(コモディティ)化していく。その意味でも希少資源という言い方は理解が難しい。
  • 「競争力」が日本全体の産業の競争力を意味するのであれば、産業団体など主張しているように、必要なのは安価な電力であり、エネルギー技術そのものではないはず。
  • また、再生可能エネルギーは、日本においても、賦存量は大きく、希少資源ではない。
#4 間違い・
意味不明
  • 再生可能エネルギーに調整電源が必要なことは確かであるが、それはすべての発電エネルギー技術に言えることである(原発も調整力が必要である)。すなわち、各電源の役割に過ぎないことを、ことさら再生可能エネルギーに限定して議論している。
  • 現在のレベルの再生可能エネルギー普及率では、再生可能エネルギーのさらなる普及は、巨額の追加的投資を必要とするような調整力に依存しなくても可能であり、それによって低炭素化は確実に実現できる(例えば、IEA2014を参照のこと)。
  • 脱炭素化は、まず低炭素から始めるべきであり、「脱炭素ではないから問題」というような議論は本末転倒している。
#5 間違い
  • この4年間の再生可能エネルギーコストの低下、化石燃料価格の低下、原子力のコストの増加は、たとえ2030年段階だとしても、それぞれの技術動向を予測する際に、極めて大きな変化であり、その予測自体も大きく変化している。たとえば、IEAなどの技術動向予測は大きく変化している。
  • 再生可能エネルギーの発電コストの急激な低減は、技術革新も大きく影響している。
  • 技術および技術動向は、そのコストの変化と切り離せないものである。コストを議論しないのであれば、3E+Sという考え方も意味がなくなる。
#6 間違い
  • 原子力は輸入ウランによって発電され、精錬もウラン濃縮も概ね海外依存である。それを国産資源と同列に扱うのは間違いである。
  • エネルギー自給率はもともと低く、その原因は1970年代の再生可能エネルギー開発を原子力開発によって潰した政策によるものである。
  • リスクが大きい原子力に依存したゆえに脆弱なエネルギー供給構造を持ったと考えられる。たとえば2002年には東京電力が原発でのトラブルを隠した結果、東京電力が保有するすべての原発が止まり、その夏、電力不足危機が発生した。2007年には北陸電力でトラブル隠しや機器故障により志賀原発が長期間停止した。2011年東日本大震災によって被災した複数の原発が発電できなくなったことは記憶に新しい。
  • 原発は巨大な電源であり、そのような電源が何らかのトラブルで計画外に脱落した場合、代替供給源の確保は容易ではない。1つの原因(巨大地震や事故隠蔽など)により、複数の原発が一度に停止することもありうる。安定供給の面からも経済性の面からもその意味で、本末転倒な議論である。
#7 半分間違い
  • IEAのシナリオは複数あり、常にアップデートされている。IEAのWEO2017年版(IEA 2017)には、「持続可能な発展シナリオ」もあり、このシナリオでは2040年でのエネルギー起源CO2の排出量は約180億トンと減少に転じる。このシナリオはレファレンスシナリオに対してエネルギー投資額を15%増加させるだけで実現するとしている。
#8 間違い・
矛盾
  • #4でも述べたように、「火力発電による補完が必要」というのは極めてミスリーディングである。火力発電による補完が必要なのは原子力も同じであり、それを脱炭素電源として、再生可能エネルギーだけ火力による補完を持ち出すのは間違いである。また、#4の「現状において、太陽光や風力など変動する再生可能エネルギーはディマンドコントロール、揚水、火力等を用いた調整が必要」という記述とも矛盾する。
  • 将来的には、再生可能エネルギーの中には水力、地熱、バイオマスがあり、相互補完により火力も不要になる。そのような構成が、できるだけ早く実現できるよう政策支援するのがエネルギー政策である。
  • 多くの国・地域が、再生可能エネルギー100%による脱炭素化を具体的なロードマップに基づいて目指している。
  • 再生可能エネルギーの導入量が多い国(例:ドイツやデンマーク)などにおいて、すでに電力供給の信頼度や品質の安定には問題ないことが明らかになっている(例えば、安田2016)。
  • 送電網の増強投資を通じた送配電ネットワーク全体の再設計を行う必要があるのは確かであるものの、どのような発電エネルギー技術においても送電網の増強投資は不可欠である。
    確かに、再生可能エネルギーの一定量以上の普及には、蓄電システムの開発は必要である。そして実際に開発が進んでおり、現在、小型化・低額化が急激に進んでいる。また、バランスの良い再エネラインナップが揃った時には、蓄電池の役割は小さくなる。
#9 矛盾
  • 再生可能エネルギー資源が潤沢にあり、大型原子炉の80年運転という危険なチャレンジを行う必要性はない。小型原子炉も原発であり、現政権の政策目標である「原発の依存度低減」とそもそも矛盾する。
  • 大型炉に関しては、2018年7月時点で、田中元IEA事務局長が「大型原子力発電は、再生可能エネルギーに対しての競争力は持たない」と宣言するような状況である(朝日新聞 2018年7月24日)。
  • 小型炉・新型炉に関しては、東芝の小型ナトリウム冷却高速炉(4S)など、一部で研究開発が行われており、前出の田中元IEA事務局長なども、高速炉の開発を推奨している。しかし、高速炉は、高速増殖炉もんじゅがそうであったように、基本的には増殖炉であり、技術的に解決すべき問題は極めて多い。また、小型で、たとえ「安全」な原発でも、新たな核廃棄物が発生する。その管理を次世代に負担させることは、気候変動対策の負担を先送りするのと同じように倫理的に問題がある。
  • より「安全」な小型炉・新型炉の導入には非常に長いタイムスパンと多額のコストを要する。その間に、再生可能エネルギーへのコスト競争力は一段と上がると考えられる。したがって、実際に高速炉などの開発への投資、あるいは高速炉などを購入する可能性がある買い手が存在すると考えるのは、かなり無理な想定である。
  • 再生可能エネルギーによる将来のエネルギー構成(変動電源と非変動電源のバランスの良い配置)が見通せるにも関わらず、原子力への投資を続けるのは疑問である。限られた資源は、集中して効果的なものに投入すべきである。
#10 意味不明・
ほぼ間違い
  • 「技術の変化が増幅する地政学的リスク」というタイトルが意味不明である。
  • IEAのシナリオは、ダイナミックに変化している再生可能エネルギーなどに関する状況が必ずしも十分には反映されていない。 実際にIEAは、再生可能エネルギー普及想定を常に過小評価してきた。
  • そのようなIEAのWEO 2017においては、各国で実行される可能性の高いエネルギー政策を前提とした「新政策シナリオ」でさえ、2040年までに総発電量に占める再生可能エネルギーのシェアが40%に達するなど、電力部門における再生エネ利用が爆発的に拡大し、石炭火力が全盛だった時期が終了するとしている。一方、石油の需要は2040年まで伸び続けるが、そのペースは着実に低下すると予想している。
  • 石油による地政学的リスクが存在するのは確かである。だからこそ、安全保障のために再生可能エネルギーの拡大が日本において必要である。それなのに、第5次エネルギー基本計画の目標は、このような事実と矛盾している。
  • 一次エネルギーの再生可能エネルギーへの置き換えにおいて、例えば都市の巨大な熱需要、とくに温暖化の進行に伴う冷熱需要は、再エネ電気によるヒートポンプ、地中熱、太陽熱などで対応が可能である。これらは石油に頼るのではないので、地政学的リスクは関係がない。
#11 間違い
  • 技術革新は日進月歩で進んでいる。過去の技術を「コア技術」と称してしがみつくのではなく、常に新しく効率の良いものに門戸を開いた方が合理的である。
  • 日本はかつて、再生可能エネルギーの「技術自給率」が非常に高かったが、今はドイツやデンマーク、スペイン、中国などに何周も遅れる結果となっている。これは日本の政策的失敗であり、この事実に対する反省が全く感じられない。
  • 日本が今持っている古い技術を「自給率」を理由に維持しようとすれば、さらに世界から遅れることになるであろう。
  • サイバーであろうとなかろうと、攻撃リスクが最も大きいのは原発であり、それは新たなリスクでも何でもない。実際に、イランへの核施設に対するマルウェア(Stuxnet)を使ったサイバー攻撃が2010年に起きており、9.11ニューヨーク・テロでも、原発への攻撃は検討されたとされる。そのような状況において、原発への依存度を現状よりもあげるということは、ここの記述にあるような危機意識とは矛盾している。
#12 矛盾
  • 第5次エネルギー基本計画では、ここに記述されているような「徹底した省エネルギー、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化、原発依存度の可能な限りの低減」が、具体的には規定されていない。例えば、太陽光発電の2030年エネルギー・ミックス目標(発電量割合で7%)は、2018年時点でほぼ達成している。これは、今後12年間、さらなる導入に対する努力の実施を自ら否定する目標で、「再生可能エネルギーの最大限の導入」という記述とは矛盾する。
  • 問題は、3E+Sという「標語」が「感覚的」に使用されていることである。実際に3E+Sの指標も作られておらず、それに基づく検証データもない。実際には恣意的なのに、何らかの客観的な判断に基づいたものという印象を国民に与えている。これはミスリーディングそのものだと言える。
#13 ほぼ間違い
  • #12でも述べたように、3E+Sという標語だけが掲げられている。この評価方法を否定するものではないが、この4つの指標のより細かい要素や要素間・指標間の重み付けや実際のエネルギー・ミックスの数値に至るまでの思考プロセスがある程度定量的に示されなければ、結果は極めて恣意的なものになる。政府は3E+Sの細かい要素や要素間・指標間の重み付けなどを、具体的には明らかにしておらず、その考え方などに関しても国民の意見を聞いてもいない。
  • 実際に、4つの指標をさらに具体的に細分化し、それぞれ点数化して合計してみると、人によって評価結果は異なる。例えば、人によっては、経済よりも安全や環境を重視する場合もあり、逆もまたしかりである。
  • つまり、3E+Sはそれによって、一部の人間が独断で結論を導く絶対的手法であってはならず、さまざまな意見の違いを示しあい、それを踏まえた議論と検証を経て合意を導く相対的評価手法である。したがって、この検証作業も行わず、3E+Sの方向で「最大限の取り組みを行う」というのは論理的に成立しない。
#14 間違い・
矛盾
  • 多くの国が、パリ協定にある1.5℃目標を達成するため、石炭消費のフェーズアウトを検討している。その中で、日本政府が海外の石炭資源権益獲得のために出している公的補助金は、G7の中でも突出しており(Whitley et al. 2018)、国際的な批判を浴びている。
  • すなわち、第5次エネルギー基本計画はパリ協定と矛盾する。世界の潮流や国際的批判を無視した計画は、さらなる国際批判を受けることは必至である。
  • 再生可能エネルギーを基幹エネルギーとする政策と化石燃料開発への予算投入は矛盾する。
#15 間違い
  • #27#36において後述するように、日本の省エネは、2000年以降停滞し、他国に先駆けていない。
  • 省エネ技術では、日本は諸外国に遅れを取ってしまった。それは、省エネ投資を渋る産業界への配慮を優先させた結果である。そのため、省エネ技術を売ろうとする企業が育たなかった。
  • 産業分野においても、高効率な照明や高効率な空調設備の採用、ボイラ蒸気系統の保温対策、ヒートポンプへの入れ替え、機械設備でのインバーターなどの高効率機器の採用などが実施されていない工場が多くあり、日本国内の普及拡大が課題となっている。
  • 日本の省エネ技術の輸出補助よりも、まず国内での省エネ技術導入のための施策を強化することが低炭素や脱炭素につながる。それが結果的に技術レベルを高め、輸出拡大にも貢献する。
#16 間違い
  • 日本の温室効果ガス排出削減目標の野心度や公平度は他の主要国にくらべて低いというのが各国の温暖化目標を相対的に評価している研究機関(例えば、Climate Action Tracker)の評価となっている。
  • 温暖化対策は、基本的には各国が(海外ではなく)国内での排出削減を強化することが重要だとされる。実際に、例えば韓国では、文政権が、NDC(GHG排出削減数値目標)における国内排出削減量の目標を引き上げている。
  • 二国間オフセット・クレジット制度は、新しい柔軟性メカニズムであり、他のオフセットメカニズムと比較した場合のコスト効果性や追加性が十分に検証されるべきである。
  • 二国間オフセット・クレジット制度は、日本国民の税金や特別会計を用いた日本の低炭素技術の輸出補助金とも言える。また、現時点では、クレジット発生量も限られている。そのような観点からの制度としての持続可能性の分析や他の温室効果ガス排出削減施策との比較評価が必要だと考えられる。
  • 政府が考えている低炭素型インフラ輸出、たとえば高効率石炭火力発電技術の輸出は低炭素にも寄与しない。
#17 ほぼ間違い・
意味不明・矛盾
  • 第5次エネルギー基本計画に書かれている「再生可能エネルギーの最大限の導入」という目標と矛盾する。なぜなら、#13で述べたように、例えば太陽光発電に関しては、2030年目標(発電量割合で7%)は、現時点ですでにほぼ実現されているからである。
#18 間違い
  • 世界では、太陽光の「発電コスト」は急激に下がり続けており、「出力不安定性」などの問題に関しても、現時点の導入レベルでは大きな投資を必要としない解決策が存在する。IEAは、多くの国で再生可能エネルギーが最も安価な電源になっていることから、2016年から2040年までに行われる発電設備投資の2/3は再生可能エネルギー発電設備へ向けられると予想している(WEO 2017)。
#19 間違い
  • 「燃料投入量に対するエネルギー出力」という指標は技術的意味がない。
  • 原子力を「準国産エネルギー」などとしているが、ウランは100%輸入なので、「準国産」などとは言えない。実際に、資源エネルギー庁のホームページでは「日本はウランの100%を輸入に頼っており、輸入先はカナダ、カザフスタン、ニジェールなどである。安定供給の観点から長期購入計画を結んで輸入しているが、供給源の多様化が課題となっている。」という説明もしており(資源エネルギー庁 2019)、矛盾している。
  • 原子力発電が「優れた安定供給性」を有していないことは福島第一原発事故で実証されたはず。
  • 原子力発電は、たとえ運転コストが低廉でも、その他のコストやリスクが他の発電エネルギーに比較して格段に大きい。運転コストのみを議論するのは、第5次エネルギー基本計画の他の部分でシステム・コストなど統合的なコスト議論の必要性を主張していることと矛盾する。
  • 「変動が少ない」というというのは調整力として使いにくいという欠点でもある。
#20 矛盾・
間違い
  • #2でも述べたように、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させる」というのが本当であれば、3E+Sという考え方は論理的には生まれない(Sのみになるはず)。
  • 「世界で最も厳しい水準の規制基準」という言い方自体が、曖昧で科学的な表現ではない。なぜなら、原発の安全性を考える際には、立地条件(例:地震発生などの地学的環境)など様々な個別的な要素を考慮する必要があるからである(その意味で、「世界で最も厳しい水準かどうか」は実質的に検証不可能である)。
  • 「世界で最も厳しい水準の規制基準」は、実質的には「原発は安全」という安全神話として機能している。
#21 矛盾・
間違い
  • 現状は、「万全の対策を尽くす」前の段階で原発の再稼働を進めている。
  • 福島第一原発事故では、巨額の国費負担が発生しているが、政府の「原子力損害賠償法の見直し案」では賠償措置額の引き上げは行われなかった(2018年12月5日に参議院で可決され成立)。
  • 原子力損害賠償法第6条は「原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置(以下「損害賠償措置」という。)を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない。」としている。法に従うなら、現実に即した十分な「損害賠償措置」ができていない原発は再稼働することもできないことになる。また、原子力事業者の「無限責任」は有名無実化している。
  • すなわち、今回の見直し法案では、賠償措置額の引き上げ、事業者・国の責任のあり方、原子力損害賠償審査会指針への被害者の声の反映、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)の実効性の確保などによる被害者保護の強化など、多くの宿題が先送りにされている。
  • そもそも原発事故というのは、国が責任をもって対処できるレベルの事故とならない可能性が極めて高いことが福島第一原発事故の教訓である。
#22 間違い・
矛盾
  • 石炭消費の継続は、日本も批准したパリ協定の目標に反する。そのため、世界各国が消費をフェーズアウトしようとしている燃料が石炭である。すなわち、第5次エネルギー基本計画において、たとえ「現状において」という言葉があったとしても、石炭をベースロード電源の燃料として重要視して活用していくのは、世界の潮流に逆行するものであり、すでに国際的な非難の対象となっている。
  • 高効率化・次世代化を推進するとあるが、資源エネルギー庁の資料(資源エネルギー庁2018)にもあるように、石炭火力のCO2排出量は「高効率・次世代火力」とされる超々臨界圧(USC)で820g/kWh程度、石炭ガス化複合発電(IGCC)では650g/kWh程度と、ガス火力のガスタービン複合発電(GTCC)の340g/kWh程度に比べて環境負荷が2倍以上になる。石炭は、非効率石炭火力とともに、高効率であってもフェーズアウトしなければパリ協定とは整合しない。
#23 間違い・
矛盾
  • 石炭の場合、#22で指摘したように、高効率発電においても温室効果ガスは大量に発生する。現在、パリ協定にある目標の達成には化石燃料の消費を早急にゼロにする必要があり、多くの国が具体的な石炭消費フェーズアウトのロードマップや石炭火力発電所の新設を禁止するような政策を導入している。また、世界銀行や多くの国の輸出入銀行が、実質的にあらゆる種類の石炭火力技術の公的資金による輸出支援を止めている。したがって、第5次エネルギー基本計画において、高効率化技術等を国内のみならず海外でも要請に応じて導入を推進していくとするのは、パリ協定と矛盾する。
#24 間違い
  • 東日本大震災後の電気料金上昇の大きな要因の一つとしては、為替や化石燃料単価の上昇もある。また、政府が再生可能エネルギー導入を消極的であったことも原因と言える。
#25 ほぼ間違い
  • 系統整備や系統安定化のための追加コストを抑えることは重要である。中でも最もコストがかかるのは、巨大電源を維持するための長距離の超高圧送電・変電システムの更新である。電力システムを巨大集中型から、小規模分散型に変換することで、これらのコストを削減することができる。既存システムのままでコスト議論をするのではなく、変化を踏まえた議論をすべきである。
  • FITによる賦課金は、やがて負担はゼロとなる。実際に、ドイツなどでは2020年代前半で賦課金の大幅な低下が想定されており、日本でも2030年頃をピークに大幅に下がることが予想されている。また、すでに米国など多くの国で、FITや補助金なしでも、再生可能エネルギーは、化石燃料や原子力に比較してコスト競争力がある発電エネルギー技術となっている。
#26 矛盾・
間違い
  • パリ協定遵守のために多くの国が石炭消費のフェーズアウトを検討する中、日本政府が海外での石炭資源権益獲得のために出している公的な補助金は、G7の中でも突出しており、前述のように、国際的な批判を浴びている(Whitley et al. 2018)。第5次エネルギー基本計画は、このような世界の潮流や国際的批判を無視しており、さらなる国際批判を受けることは必至である。
  • そもそも「石炭市場における日本の輸入国としての相対的地位の低下」は、好ましいことであり、憂うことではない。
  • 「近年、中国・インドの輸入量増加」という記述は、石炭需給や貿易量の変化を示すものとしては単純すぎる(間違っているとも言える)。例えば、IEAの “Coal 2017 Analysis and Forecasts to 2022”によると、海上輸送される石炭の貿易量については、インドと韓国は潜在的な成長の可能性を秘めているものの、インド政府による輸入依存度低減政策などの影響もあり、2022年にかけて縮小する見込みである。一方、欧州、カナダ、米国、中国では,石炭需要は緩やかに減少すると予測している。世界全体の石炭需要は,2022年時点で55億3000万トンと、2016年の水準からわずかに増大するにとどまり、石炭需要は約10年間にわたり停滞する見通しである。たとえば、BPの予想でも、2040年の石炭需要は2016年から0.8%増加するに過ぎない。これは、ピークの2014年からは3.3%の減少である(BP 2018BP Energy Outlook
    また、BPなどによると、石炭の可採年数推計は100年以上もある。Coal - BP Statistical Review of World Energy 2018 (pdf)
  • すなわち、現状は、日本がエネルギー安全保障のために公的資金を用いて海外の石炭資源権益を確保することが必要な状況ではない。
#27 間違い
  • 産業分野の省エネ努力は主に1990年までで、それ以降2010年頃まで停滞している。わざわざ1970年代のことを言わなければならないのは、1990年以降は停滞しているからだと思われる。
  • 2011年3月11日の福島第一原発事故以降は、制度改正があまりないものの、企業と家庭の努力で改善している。
  • 「4割改善」というのはGDPあたりエネルギー(一次エネor最終エネ)だろうが、これは産業構造転換などで先進国では改善して当然の指標(数値)である。一方、90年以降2010年までで比較すると、日本の改善率は先進国で最低に近い。GDP比一次エネを73-90年でみると、日本で大きく改善したが、他の先進国、米国やドイツでもこれに近いレベルまで改善している(他は産業が海外に出て行ったためとの意見があるが、日本でも非鉄金属製造業は同じ)。
  • 90年以降は改善率が他国に劣り、73-90年は改善率が同等とすると、日本が優れているなら73年以前から優れていたためになる。これは石油危機後の省エネ努力ではなく、しばしば「ウサギ小屋と満員電車のため」と表現されるような国民生活の貧しさが大きな理由であり、政策の有効性や産業界の努力とは関係が乏しい。
#28 半分間違い
  • 90年以降2010年頃まで停滞している。工場では90年以降の技術改良を反映できていない。
  • 個々の事業者で省エネが進んだのは事実だが、モーターなどで見ても最先端とは言えない。
  • 書かれていないが建築では欧米より遅れている。
  • 複数連携は実施した方が良いものの、個別企業や機器の取組みは十分行われたと認識しているなら誤りである。
#29 半分間違い
  • エネルギーの使用実態に関するデータ活用が必要なのは事実である。しかし、政府は、例えば、これまで省エネ法定期報告の対象となっている約13000事業所の個別データを明らかにせず、NGOとの間で裁判にもなった。関係省庁や自治体にも明らかにしていないと見られる。これらの実態から見れば、「行政の保有する関連データについても可能な限りオープン化を進める」といっても本当に開示するのかと不審の目で見られるだろう。
  • 行政の得たデータの活用も不明である。東京都は排出量取引データで原単位の動向を分析しているが、経産省の省エネ法データ活用はごく一部の業種のみである。内部に活用のための知見があるのかも不明である。CO2の排出量公表制度の場合は、所管の経産省・環境省がチェックできる立場にありながら、開示データに基本的な間違いが相次いでいる。
#30 間違い
  • 国交省との調整で毎回道路建設が入るようだが、一般に道路建設は自動車交通量の増加を招き、結果的に増エネになる。
#31 間違い
  • 40年以上も前の対策や状況と比較して、「高いレベルの省エネルギーを達成している」などと現在形で記述するのは間違いである。
  • 「個別単位の取組が相当進展した」というのも、約50年前の第二次石油ショック直後の話なら意味がなく、かつ日本の産業部門が対策を後退させた1990年以降の省エネ技術進展を踏まえない点で問題である。
  • 複数事業者連携以前に、個別事業所の対策強化が不可欠。現状では例えば省エネ法ベンチマークも未達成の事業所が多い。
  • 設備更新が必要なのは当然である。そのためには「省エネ法規制と補助金等の支援策の両輪」とあるが、温室効果ガスの排出量取引制度(キャップ&トレード)や炭素税などの制度の方が有効である。なぜなら、省エネ法規制は産業には限定的で、「毎年1%効率向上」「ベンチマーク」などの基本的なものも義務でない。また、補助金は役所がばらばらに定め、投資回収年のごく短いものにまで補助をしており、矛盾も多い。
#32 半分間違い
  • 産業トップランナー制度における業務部門のベンチマークは、売上高当たり(コンビニ)、複雑な回帰分析(ホテル)、診断ソフト分析(事務所ビル)など、複雑あるいはエネルギー消費との関係の薄い(逆にエネルギー消費を増やしてしまう可能性がある)ものが指標化されている。
#33 間違い
  • 「革新的な技術の開発」よりも、「既存優良技術の普及」の方がより重要である。政府は、「普及は不要」とは言ってはいないものの、産業分野で省エネ技術の普及に限界があるようなことをずっと主張してきた。これは大きな間違いである。
  • 経団連などが、「既存優良技術の普及」よりも、革新的技術開発が重要(かつ開発費は不確実性があるので政府支援が重要などとし自前で出さず政府予算分配を要求してきた)だと主張して、排出量取引制度、炭素税導入に反対してきたのも問題である。
#34 ほぼ間違い
  • 産業分野で、事業所などが安い深夜電力料金などで操業体制の夜間シフトも含めて対応しているのは事実である。
  • しかし、原発停止で深夜電力は減少、逆に太陽光発電などの普及が進み昼の需給は大幅に緩和、季節・日によっては昼間に揚水発電汲み上げも実施されている。家庭向け深夜電力新規契約を大幅に制限している事業者もある。こうした中で福島第一原発事故前に目指されていた深夜電力活用が今後も有効であるかのような記述は問題である。
#35 半分間違い
  • 供給と需要の両方の情報とも公開が必要である。
  • 需要情報は、例えば、電力会社が、市町村内の年間電力消費量など基本情報を、自治体に対しても情報開示を拒むなど問題ある行動がなされてきた。また、監督官庁も事実上それを放置してきた。
  • 今後、時間別の需要の開示なども必要になる。
  • 需要家情報の活用として、こうした基本インフラとしての共有が必要である。共有なしに電力系などの特定ビジネスがよりふみこんだビッグデータ活用をするなどを意味しているとしたら極めて問題である。
#36 意味不明
  • 省エネとは関係ない。
#37 ほぼ間違い
  • まず、一次エネルギー価格下落や原発の安全対策コスト上昇などの最新状況を考慮した発電コストの再計算なしでは、発電コストの議論はできない。
  • また、発電コストには様々な要素が含まれている。日本の場合、気候変動被害などの外部性を考慮した十分なレベルのカーボン・プライシングが導入されておらず、その意味では化石燃料による発電のコストは安すぎる。
  • 一方、原発や化石燃料への補助金が無くなり、自由化が進んで公正な競争が行われれば再生可能エネルギー発電の相対的なコストは安くなる。
  • すなわち、再生可能エネルギーの発電コストが国際水準と比較して依然高い状況にあるのは、再生可能エネルギーの大量導入を阻むようなエネルギーシステムの制度構築全体の問題である。
  • そもそも国のエネルギー関連予算は現状でも原発と石炭が大部分を占めており(田中2019)、累積で考えれば、圧倒的に原発と石炭への国の補助金が多い。そのような状況で再生可能エネルギーの国民負担のみを議論するのは不公平である。
#38 間違い
  • 再生可能エネルギーの普及によって、化石燃料輸入が減少している部分が費用計算にカウントされていない。
  • FITは国民による国民への投資であり、効率性や公平性が常に問題となる政府による補助金とは、同じ資金移転であっても異なる種類のものである。
#39 間違い
  • 小規模電源による発電事業は、すでに安定的なビジネスとなっており、新しい産業として確立している。
  • そのような懸念の原因となっているのが政府の消極的な再生可能エネルギー政策である。その意味で、本末転倒な議論である。
#40 矛盾
  • 実際には、政府の石炭火力重視政策によって、福島では複数の石炭火力発電所新設計画があり、すでに建設も進んでいる。この点からは、福島の再生可能エネルギー産業拠点化には矛盾がある。
#41 ほぼ間違い
  • #1でも述べたように、復興庁の「所在都道府県別の避難者数 (2018年2月13日現在) 」によると、避難者数は、福島県だけでも50,562人(県内16,467人、県外34,095人)である(第4次エネルギー計画では、復興庁の避難者数とほぼ同じ避難者数の数字が記述されていた)。
#42 矛盾
  • 原発での労働に関しては、「多重の下請け構造」という根本的な問題がある。また、原子力規制委員会が検討している原発の新たな安全基準は、施設などのハード面が中心であり、「労働環境改善」などのソフト面が不十分である。
  • 「労働環境改善」は、エネルギー基本計画などの政府施策では常に唱えられるものの、具体的な中身が伴っていない。
#43 間違い
  • 前述のように、現状では、原子力発電は低廉かつ安定的な電力供給を担う発電エネルギー技術ではない。
  • 「総合的かつ責任ある取組を進めていくことが必要である」という結論は正しいものの、その理由として「原子力の利用を安定的に進めていくため」を挙げているのが論理的におかしい。通常の文章は、「事実→結論・主張」という構造だが、この文章は、「主張→主張」となっていて、論理矛盾とも言いうる構造になっている。
#44 間違い
  • 前述のように、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させる」のであれば、原発の再稼働は論理的におかしい。
  • #20でも述べたように。「世界で最も厳しい水準の規制基準に適合する」というのは科学的な言説ではない。また、原子力規制委員会がそのような「お墨付き」を与えるような組織ではないことを田中俊一元委員長も述べている。
#45 間違い
  • 世界でも日本でも、事故の確率は極めて低いという安全神話が存在する中で、チェルノブイリ事故や福島第一原発事故が起きた
  • そもそも何万分の1といったような数値を伴った確率論的リスク評価(PRA)は技術目標であり、安全性の尺度として使うべき指標ではない。
  • さらにPRAにはすべてのリスクを網羅できていないという不完全性、自然現象や人為的な行為による不確実性が残る。
  • 日本政府や事業者は、福島第一原発事故後、PRAの議論を援用して、「ゼロリスクは無い」ということを主張するようになっている。しかし、そうであれば、可能な限りすべての安全対策を施した上で、それでも発生しうる過酷事故に対して、一人も被曝させない避難計画をまずつくるべきであり、それが原発を扱う事業者の責務である。
#46 間違い
  • まず「地球温暖化対策やベースロード電源による安定的な供給に貢献することが求められている」というのは政府の独自の見解であり、世界の潮流や国民の期待とは逆行していることを認識すべきである。
  • また、「高いレベルの原子力技術・人材を維持」というのも実際には実現困難である。すなわち、「廃炉」に特化したような人材育成の方がより現実的だと思われる。
#47 ほぼ間違い
  • 確かに中国は、2010年頃に建てられた計画では、2020年までに非常に速いペースで新しい原発をつくる予定であった。しかし、2017年には、原発新設の許可は一つもなく、現在、2020年までの計画は達成できないことは政府も認めている。その背景には、電力需要の過大見積もり、福島第一原発事故の影響、建設コストの上昇、再生可能エネルギーの普及などがある。
  • 他の新興国においても、計画と実際の建設には大きなギャップがあるのが現状である。
  • その証拠の一つが日本の官民協力による原発輸出計画がことごとく頓挫している事実である。
#48 矛盾・
間違い
  • 「世界共通の課題」ではない。原子力利用を選択した31ヶ国のみの課題であり、利用をやめれば課題解決の難しさは減少する。
  • 今の政府のエネルギー政策は、原発においても石炭火力においても、実質的に将来世代に負担を先送りするものとなっている。
#49 間違い
  • ウランを燃やす普通の原発よりも高速炉は発電コストが高い。このため米英独は早くに開発から撤退している。
  • 最近になって、フランスも次世代原子炉である高速炉「アストリッド」の開発計画を縮小する方針を示している。すなわち、日本政府の思惑とフランス政府の思惑は完全に食い違っている。
  • 2018年4月12日に、米原発最大手エクセロンの上級副社長William Von Hoeneが「コストが高すぎるため(小型炉・新型炉を含め)これ以上の米国での新設はないだろう」と発言している(S&P Global 2018)。このような状況は米国に限ったことではなく、小型炉・新型炉も含めて、いくら開発しても買い手がないのが現状である。
  • 日本でも、原子力委員会の岡芳明委員長が、廃炉作業が始まった高速増殖原型炉もんじゅの後継となる高速炉開発に関し、高速炉「アストリッド」のようなもんじゅと同じナトリウム冷却型は経済性がなく「無理なものを研究しても予算と優秀人材を浪費する」との見解を、原子力委員会のメールマガジンで公表している(毎日新聞 2018年9月21日)。
#50 間違い
  • 原子力の経済性について現状を反映した再計算をあえてしていない第5次エネルギー基本計画では、「科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する」と言われても、それを簡単に信頼することできない。
  • この第5次エネルギー基本計画自体が対話のないままに策定されている。
#51 間違い
  • #48で述べたように、「原子力の平和利用を掲げている国が多く存在する」「中国、東南アジア、インドをはじめとする新興国における原子力発電の導入は今後も拡大していく」という状況認識は間違っている。
  • 世界的にみれば、原発を温暖化対策として重視しようとしている国は少数派である。例えば、パリ協定のために各国が提出した温暖化対策目標に関する文書(INDC)の中で、温暖化対策として原発を増強するとしている国は、中国、インド、トルコ、ベラルーシ、UAE(アラブ首長国連邦)、日本の6ヵ国のみである(World Nuclear Industry Status Report 2016)。
  • 一方、核兵器保有国である米国やロシアでは、政府関係者が、原子力の民間利用が軍事利用に貢献することを明確に述べている。また、例えば、カナダ、ドイツ、スウェーデン、スイスのように、今では原子力の民間利用のみを進めている国も、初期は核兵器の野心を持っていた(その後の政策的変換で核兵器を放棄した)。さらに、アルゼンチン、バングラデシュ、ブラジル、日本、南アフリカ、韓国を含む現在の非核兵器保有国の表向きには原子力の平和利用を建前とした核開発計画の歴史の中にも、核兵器製造の野心を見いだすことができる。そのような野心は、エジプト、イラン、サウジアラビア、トルコおよびアラブ首長国連邦における原子力利用計画においては、よりあからさまになっている。これらの国では、原子力の軍事的利用に関する発言はタブーではない。例えば、最近でも、原子炉やウラン精製技術の導入を積極的に進めるサウジアラビアのムハンマド皇太子が、「イランが核兵器を持つのであれば、我が国も核兵器を持つ」と明言している。
#52 間違い
  • IGCC・IGFCは、CO2排出係数がLNG火力よりも大きく、脱炭素という世界の潮流に逆行するものである。また、実際の開発においても、技術的な問題も少なくなく、IGCCは30年以上の開発時間をかけながら実用化に至っていない。コスト的にも再生可能エネルギーに対する競争力を持ち得るかは疑問で、座礁資産化するリスクもある。
  • CCSも同様であり、国際社会においては、CCSの温暖化対策に中での位置付けは定まっていない。また、日本などでは地震を誘発するリスクも持つ。
#53 間違い・
矛盾
  • 前項(#52)と同様に、高効率石炭火力の導入は、脱炭素という世界の潮流に逆行するものであり、座礁資産化するリスクもある。日本政府の公的資金による自国企業が持つ石炭火力発電技術の輸出支援は、地球環境よりも自国企業の利益を優先するものであり、多くの政府、研究機関、NGO、現地住民から批判されている行為である(JICAが関わっているインドネシアの案件では、訴訟にもなっている)。パリ協定とも明らかに矛盾する。
#54 ほぼ間違い
  • 水素は2次エネルギーであり、「一次エネルギー構造を多様化させる」わけではない。また、何からどのように製造するかで大きく意味合いが異なる。CCSなしで化石燃料から製造することは温暖化対策にはならず、たとえCCS技術を活用して化石燃料から製造したとしても、コスト的に、風力や太陽光などの再生可能エネルギー利用と競争力を持ちえるかは疑問である。
  • 水素は、再生可能エネルギーで発電して余った分(需要を超過して供給した分)を利用して製造するべきである。その意味で、研究開発やインフラ整備は必要であるものの、それによって他の再生可能エネルギーの普及が遅れるようでは本末転倒である。
#55 ほぼ間違い
  • このような施策によって、市場の取引量の増大、電源の広域経済運用の実現、新規参入者の競争支援等が実現され、最終的には適切な競争進展による電気料金の低減で、需要家がメリットを享受できる可能性はある。しかし、ベースロード電源は長期固定電源と規定され、間接オークションにおいても運転継続を保証される。すなわち、ベースロード電源市場比率が大きくなると、短期的限界費用が原発や石炭より安価な再生可能エネルギーが市場から締め出される恐れがある。
  • 他国の事例や現状の制度設計内容を考えると、現在、日本で行われつつある電力システム改革は、結果的に、原発や石炭火力を維持することを助け、再生可能エネルギーの普及を妨げる可能性が高い。そうなれば、再生可能エネルギーの普及というより上位の政策目標と矛盾する。
#56 間違い
  • ベースロード電源市場の創設だけでも、十分に再生可能エネルギーを市場から締め出すことが懸念されており、さらに容量市場を設けることは、再生可能エネルギーをほぼ完全に市場から締め出すことにもなりかねない。
  • 市場にFIT再生可能エネルギーが流れなければ、非化石価値取引市場の存在する意味はなくなる。
  • 発電コストを考慮しない容量市場の設置は、英国での事例などを考えると、結果的に原子力や石炭火力の維持につながる可能性がある。
  • そもそも容量市場は容量メカニズムの一つでしかなく、他にも戦略的予備力や定額支払いなど様々な制度設計オプションがある。それなのに、日本の審議会などでは容量市場のみが議論されるのはおかしい。
#57 間違い
  • 原子力事故や廃炉にかかる費用を託送料金の中に含ませることは、会計学の基本ルールに反するものであり、モラル・ハザードをももたらす。第1に会計の基本ルールでは、事故コストは特別損失に分類されるべきであるから、託送料金のような営業費用に含ませるのは間違いである。第2に会計の基本ルールでは収益を生み出さない資産は減損すべきであるから、これを継続的に資産計上するのは間違いである。第3に電気料金は会計を基礎に算定されるものであるから、会計が電気料金を前提に廃炉資産を計上するのは間違いである。
#58 意味不明・
矛盾・間違い
  • 「あらゆる選択肢を追求できる人材・技術・産業基盤の維持・強化」が、結果的に原子力や石炭火力の維持につながるのであれば、「原発依存度の低減」や「温暖化対策の強化」などの目標や政府公約と矛盾することになる。また、「リソースが限られている中では選択と集中が必要」という戦略論の基本から考えても問題である。
#59 半分間違い
  • パリ協定は、「全ての国が参加する公平で実効的」と能天気に言えるような協定ではない。まず、「参加」と、「温室効果ガス排出削減数値目標が公平」とは同義ではない。例えば、日本の温室効果ガス排出削減数値目標は、他国の目標に比較して非常に甘い目標だというのが国際的な研究機関のコンソーシアムであるClimate Action Trackerなどによる評価である。また、日本政府が公平性が欠如していると批判する京都議定書も、実際には全ての国が参加していた。その後、京都議定書もパリ協定も米国などが脱退したが、それは米国政府が問題であり、議定書や協定そのものに問題があったのではない。
#60 ほぼ間違い
  • 「革命的なエネルギー関係技術の開発」には期待する。しかし、それよりも重要で、より優先順位が高いのは、省エネや再生可能エネルギー分野での既存のエネルギー関係技術の普及である。
#61 間違い
  • 「現段階では技術間競争の勝者を見極めることは困難」という認識に問題がある。原子力と石炭火力に対しては、発電エネルギー技術としての将来性がないことは、「市場」が証明している。このような現状を無視することは、政府による資金分配の効率性を大きく損なうものである。
  • 「科学的レビューメカニズム」が、とりあげて強調するような新規の仕組みであること自体がおかしい。本来であれば、政府の審議会や委員会において「科学的レビューメカニズム」がなされているはずである。逆に言えば、政府自身が、これまでの審議会や委員会において「科学的レビュー」がなされていなかったことを自ら認めたとも考えられる。
#62 間違い・
矛盾
  • 高温ガス炉は、基本的には原子力発電であり、「原発依存度低減」という政府公約などと矛盾する。
#63 間違い
  • 水素エネルギーは2次エネルギーであり、1次エネルギーである再生可能エネルギーと並べて比較するようなものではない。
  • 「利用促進などのための技術課題の解決に向けた取組み」は必要ではあるものの、再生可能エネルギーの普及政策が不十分である現状では、その政策的優先順位は高くない。
#64 間違い
  • #20でも述べたように第5次エネルギー基本計画の他の部分にある「世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」という考え方自体が、新たな「安全神話」であり、根本的には何も改善されていない。実際に、そのような発言を、(リスクの具体的な説明なしに)首相をはじめ政府関係者が繰り返すことで、結果的にリスクはゼロとなるような印象を国民に与えてしまっている。その意味では、政府の「安全神話」に依存したやり方や考え方は全く変わっていない。
  • そもそも、政府の推し進めたい政策をPRすることを「広報」と位置付ける事自体が問題である。すでに指摘されているあらゆる矛盾やリスクに対して政府自身が目を背けず、国民に対して誠実に説明を尽くすべきである。政策の実現のために広報が必要だという認識自体が誠実さを欠いている。
#65 意味不明・
矛盾
  • 「正しい理解」が意味不明である。「正しい」とは何を意味するのだろうか?
  • 第5次エネルギー基本計画の他の箇所で、「原子力発電所の再稼働を進める」とあるので、これと組み合わせて考えると、再稼働を認めることが「正しい理解」と忖度される。しかし、これは「結論ありき」であり、後述されている「双方向のコミュニケーションの充実」と矛盾する。
#66 矛盾・
ほぼ間違い
  • 本来であれば、審議会や委員会も、「第三者が独自の視点に基づいて情報を整理」する役割を持つべきであった。しかし、実際には利益関係者が多く委員を占めるような構成であり、それは現状でも変わっていない。そのような認識や反省が見られない現状では、これから「第三者が独自の視点に基づいて情報を整理」することが本当に実施されるかは疑問を持たざるを得ない。
  • また、「民間調査機関や非営利法人等が指摘するリスクや批判について積極的に取り上げ、議論する」というのが、本来の審査会・委員会の正しい在り方である。「国全体としてエネルギーに関する広報が広く行われるような環境を実現」も上記を考えれば本末転倒である。
  • すなわち、「双方向的なコミュニケーション」を、単なる「広報(と言う名の世論誘導)」と取り違えている。そのようなもののために審査会や委員会が利用されているのが現状である。
#67 矛盾
  • 前項と同じく、現状の審議会や委員会などの委員に対して利益相反の有無を問い、利益相反がある場合は委員から除外するような措置を取らないかぎり空言である。
  • そもそも、委員の選定に対して国民に何の根拠も示されていない、ブラックボックスであるのが現状である。せめて、委員の選定に関するルールを公開するなどの措置が必要である。
  • 今回の第5次エネルギー基本計画の策定に関しても、意見箱の意見がどのように議論され反映されたのか、パブリックコメントから閣議決定に至るまでに国民の意見がどのように反映されたのか、説明がないままである。
#68 矛盾・
間違い
  • 「原子力に関するコミュニケーションを実施」は必要である。しかし、例えば、2017年11月6日にさいたま市内で開催された原子力発電環境整備機構(NUMO)主催による高レベル放射性廃棄物の最終処分地に関する住民意見交換会で意見交換会では、参加者の学生らへの金品の提供があり、金品の提供は常態化していた可能性もあると報道されている(週間東洋経済オンライン2017年11月27日)。このような現状に対する反省がない限り、第5次エネルギー基本計画においていくら「双方向のコミュニケーションの充実」を唱えても、それを国民が信用することはできない。
  • この文章では、政府の政策(現政権の場合は原子力・石炭の重視)を国民が理解する必要があるように読める。しかし、本来、政策を決めるのは国民であり、政府の役割や政策に関する考え方が根本的に非民主的なものになっている。
#69 間違い
  • 再生可能エネルギー発電のコスト低減および温暖化対策の必要性の増加は極めて確実である。その意味で「技術間競争の帰趨」は、すでにはっきりしている。
#70 意味不明
  • 今後、再生可能エネルギーは、パソコンのようにコモディティ(日用品)化していく。その意味で、地経学的リスクを過大評価している
#71 矛盾・
意味不明
  • 「日本の存在感が相対的に低下」したのは、第4次エネルギー基本計画などに基づいた政府の再生可能エネルギー普及策が十分ではなかったからである。したがって、第4次エネルギー基本計画と基本的に変わらない第5次エネルギー基本計画によって状況を変えることは論理的に不可能である。
#72 間違い
  • 英国でCO2削減に成功している要因としての原発の役割は小さい。なぜなら、英国における原発発電量は、1998年に最大値を記録したあと、2017年時点では約3割減少した。それにも関わらず、同期間の二酸化炭素排出量は約3割減少している。一方、温室効果ガス排出量取引制度(ETS)などの規制のもと、省エネ、天然ガスへの燃料転換、再生可能エネルギーの導入拡大によってCO2削減が実現している。
  • 英国では、原子力発電の維持・新設のために多額の補助金を政府が支払う(例:ヒンクリーポイントC原発)。そのことが英国内で批判されており、英国の会計検査院(NAO)も問題にしている(NAO2017)
  • 最近、英国のサセックス大学の一部門であり、世界の科学・技術政策研究やイノベーション政策のメッカとも言える科学政策研究所(SPRU)の研究グループが、「英国政府が原発を多額の補助金まで出して推進するのは、実質的に国民が払う税金や電気料金を使って核兵器産業を維持するため」という内容のレポートを発表した(Stirling and Johnstone 2018)。
  • このように、英国の「原発維持」の背景は複雑であり、その帰趨は不確実である。
#73 間違い
  • ドイツでCO2排出削減が停滞しているのは、一部の人々の権益を守るために石炭火力を止められないからであり、具体的には、炭鉱や石炭火力発電所をかかえるNWH州の利益団体や政治家の影響力が強いからである。すなわち、省エネルギーや再生可能エネルギーに関する政策とは関係ない。
  • CO2排出削減が停滞しているとしても、1990年比で見れば日本よりもはるかに大きな削減を実現している。また、2017年のCO2排出は2016年よりも減少している。
  • ドイツの電気代は、確かに民生用の電気は高いものの、産業用の電気はEUで2番目に安い。
  • 民生用電気の単価は高いものの、省エネで毎月の家庭の電気代は米国とほぼ同じ。民生用電気単価も2023年から低下する予定。
  • 2019年1月26日、ドイツの政府委員会は、2038年までの石炭火力の全廃を決めた。2038年という時期に関して議論は可能であるものの、日本と比べると格段に脱石炭に積極的である。
#74 間違い
  • 原子力が過去および現在において本当に安価であるかどうかは議論がある。例えば、政府による補助金などが電気料金に十分には反映されていたとは言い難い。また、多くの事故やトラブルを考慮すれば、原子力が安定なツールとは言い難い。
  • 再生可能エネルギーによる発電価格が相対的に高かった過去において、安価で脱炭素化に近いレベルでのCO2排出削減を達成している国や地域が少ないことと、再生可能エネルギーの発電価格が相対的に安くなり、さらなる低コスト化が確実に予想される中、脱炭素という観点から、どのような発電エネルギー技術を現時点で選択するかというのは全く別の話である。
  • 現在、多くの国・地域において再生可能エネルギー100%が具体的なロードマップとともに示されている。そのような事実が無視されている。
#75 間違い
  • 前述のように、各国の事情はそれぞれ異なる。英国とドイツの一面だけを取り上げて、かつ地形的な類似性から、「英国に近い」と結論づけるのは強引な議論である。
#76 ほぼ間違い
  • 再生可能エネルギーの出力変動の制御に活用可能な技術や制度はすでに存在する。また、日本の電気容量はフランスとドイツを合計したものよりも大きい。すでにある技術や制度を採用するような施策を積極的に取ろうとしていないのが今の第5次エネルギー基本計画である。
#77 意味不明・
間違い
  • 再生可能エネルギー導入量にはおそらく水力が入っている。また、面積あたりで国際比較する意義は小さい。
  • 人口減少や技術発展を考慮すれば、再生可能エネルギーが面積制約に直面するのはかなり先である(耕作放棄農地などの増加も予想されている)。具体的に、例えば、NEDOは、太陽光発電の最大導入ポテンシャルを7億kWとしている(NEDO 2014)。すなわち、制約に直面する可能性自体も大きくない。
#78 矛盾・意味不明・
間違い
  • 「あらゆる選択肢を追求」「全方位での野心的な複線シナリオ」という方針は、「資源が限られている中では選択と集中が必要」という戦略論の基本に反している。また、原子力依存低減や再エネ主力電力化という政府方針にも矛盾する。
#79 ほぼ間違い
  • #27#36で述べたように、現在のエネルギー多消費産業の省エネは、1990年以降において停滞している。また、1990年以降のGDPあたりの効率改善は、他の主要国にも劣っている。
#80 意味不明・
矛盾
  • #2#13でも述べたように、「3E+Sが基本」と言っても、その評価基準、重み付け、実際の計算プロセスなどがはっきり明確に示されていなければ何も意味しない。その意味では、「より高度な3E+S」というのは言葉遊びでしかない。また、「基本方針」と「評価軸」は意味的に異なるものである。
#81 ほぼ間違い
  • これが1990年代に政府や産業界が唱えていて3E、そして2011年以降に政府が唱え始めた3E+Sの考え方であり、まさに、本来であれば、選択肢の相対的重点度合などが審議会や委員会で議論されてきたのではないだろうか?しかし、これまで、委員の大半は利益関係者で、その議論の内容や思考プロセスが明示的に示されることはなかった。すなわち、ブラック・ボックスの中で、実質的に「結論ありき」の議論が行われ、原発推進などのエネルギー政策が決められてきた。そのことに対する反省がないまま、同じ内容を違う言葉で語るだけでは、国民に対する説得力はない。
#82 間違い・
矛盾
  • 国民一人ひとりが暮らしの中で主体的なエネルギー選択をするためには、より一層の情報開示や双方向のコミュニケーションが必要である。例えば、電力供給における再生可能エネルギー割合、原子力割合の記述を義務化することなどが不可欠であり、市民の意見をより取り入れた政策の策定もなされるべきである。しかし、これらの情報の開示義務化や双方向のコミュニケーションなどに関しては、政府や大手電力会社が消極的であり、そのような状況は今でも変わっていない。
#83 間違い
  • 現時点においても、また将来においても「電源別コスト検証」の意義はある。実際に、多くの政府、企業、国際機関、研究機関などが、エネルギー選択の判断材料として採用している。したがって、日本政府のみが急に止めるのは極めて不自然である。
  • システム全体でのコストを議論すること自体は間違いではないものの、システムの考え方や発電エネルギー技術の組み合わせは極めて多様である。そのような議論なしに、特定の組み合わせを政府が勝手に決めて、そのコストの具体的計算方法を示さずに結果だけ唐突に国民に提示するのは極めてミスリーディングである。
#84 間違い
  • 再生可能エネルギーは、すでに実用段階にある技術である。また、再生可能エネルギーのベースロード化の鍵を握る技術は、蓄電や水素といった技術のみではない。
  • 現状の日本の再生可能エネルギーの普及率程度では、このような蓄電や水素といった技術の調整力としての優先順位は低い。なぜなら、例えば、IEA(2014)では、太陽光と風力などの変動電源の系統連系において、現時点で適用可能な柔軟性(需給調整)対策の総合的な評価に基づくと、変動電源の高い導入シェア(変動電源の発電量割合として40%まで)は、長期的には電力システムにかかる費用コストの大きな増加なしで実現できるとしている。また、同じ IEA(2014)は、再生可能エネルギー普及の障害となっているのは、1)変動電源統合を既存系統への付加と考える古典的かつ保守的な見方の存在、2)このような転換で起きる勝ち組と負け組の発生、の二つをあげている。すなわち、変動電源の系統接続の問題は、技術的な問題というよりも、既存企業の権益をどれだけ保護するべきかという政治的な問題だとしている。
#85 半分間違い・矛盾
  • 現状では、石炭火力の輸出などに力を入れる日本の政策は「海外での脱炭素化貢献による大幅な排出量削減」になり得ず矛盾している。
  • 「海外での脱炭素化貢献による大幅な排出量削減」が、その「大幅な削減分」を自国の排出削減にカウントすることも意味するのであれば、ダブルカウンティングへの懸念などから、そのようなことを国際社会は期待していない。基本的には、一義的にパリ協定に基づき国内の脱炭素化を実現することが不可欠とされている。
#86 半分間違い・矛盾
  • 早急に国内の再生可能エネルギー価格を国際水準並みに引き下げることが必要とされるものの、このための具体的な施策が不十分である。現状の制度設計のままでは、国内の再生可能エネルギー価格を国際水準並みに引き下げるのは極めて難しい。
  • 「既存送電網の開放を徹底」するための施策も不十分である。
  • 政府が導入しようとしている容量市場は、まさに原子力発電および火力発電の維持につながる可能性が高い。それは、「再生可能エネルギー発電の主要電力化」や「脱炭素」とは明らかに矛盾する。
#87 矛盾
  • #86と同じく、ここに書いてあることと「実際の施策」、あるいは「他の箇所で書いてあること」が、それぞれ矛盾している。
#88 間違い
  • 「脱原発」の動きは一部ではない。原子力発電は、発電量も発電容量も、すでに2000年代にピークを迎えている。
  • 現在、実質的に、付随するインフラ施設も含めて本格的な原発推進計画があるのは中国のみと言っても過言ではない(インドやロシアにも大規模な計画があるものの、計画通りに建設されるかについては大きな疑問がある)。その中国でも、建設は、電力需要の停滞、安全性への懸念、再生可能エネルギーのコスト低減、などの理由で計画通りには進んではいない。
  • 安全性・経済性・機動性の更なる向上への取組はあるものの、その可能性や実際に買い手がいるかどうかに関しては、多くの市場関係者が懐疑的である。例えば、#49で述べたように、2018年4月12日に、米原発最大手エクセロンの上級副社長William Von Hoeneが「コストが高すぎるため(小型炉・新型炉を含め)これ以上の米国での新設はないだろう」と発言している(S&P Global 2018)。このような状況は米国に限ったことではなく、小型炉・新型炉も含めて、買い手がないのが現状である。
  • ベトナム、リトアニア、米国、台湾、トルコ、英国などにおいて日本が官民で手がけた原発輸出計画はすべて頓挫したことこそが、日本政府が世界のエネルギー情勢の変化を見誤っていることを如実に示している。
#89 矛盾・
間違い
  • #88で述べたように、「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求」は、まさに市場を無視したものであり、「原子力船むつ」や「もんじゅ」の二の舞になる可能性が極めて高い。
  • 「原子力発電依存度低減」という政府基本方針と矛盾する。
  • 「人材・技術・産業基盤の強化」は、「社会的信頼の回復」の必要条件も十分条件でもない。
#90 間違い
  • 過渡期を終わらせるためには、化石エネルギー源の非主力化のための政策が不可欠である。それなのに、石炭を重要なベースロード電源と規定し、多くの石炭火力発電所の新設を認め、既設の石炭火力発電所を容量市場などで保護しようとしている現在の政府施策は完全に矛盾している。
  • 例えば、国際エネルギー機関(IEA)の報告書であるWEO 2017(IEA 2017)では、そのエグゼクティブ・サマリーにおいて、「(2040年までに)再生可能エネルギー源は一次需要の増加分の40%を満たし、電力部門においてその利用が爆発的に増加することにより、石炭が好調だった時期が終わりを告げることになる。2000 年以降、石炭火力発電の容量は 900ギガワット(GW)近く増加したが、現在から2040年までの純増分は400GWに過ぎず、その多くはすでに建設が始まっている発電所によるものである。インドでは電源構成に占める石炭の比率が2016年は4分の3だが2040年には半分以下になる。二酸化炭素回収貯留が大規模に行われない限り、世界の石炭消費量は横ばいで推移する。石油の需要は2040年まで伸び続けるが、そのペースは着実に低下する。天然ガスの消費量は2040年までに45%増加するが、電力部門では拡大の余地が限られており、産業が需要の最大の増加をもたらすセクターとなる」「再生可能エネルギーは、世界全体の発電所向け投資総額の3分の2を占めており、多くの国々で、新規の電源の中で最も低コストな電源となっている。太陽光発電は、中国とインドを筆頭とする急速な普及により、2040年までに低炭素発電容量の最大の供給源になる。その頃までには、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は40%に達する。欧州連合では、再生可能エネルギーが新規発電容量の80%を占め、風力発電が陸上、海上双方において大幅に伸びるため、2030年を過ぎる頃には発電の主要な電源になる」とある。
  • すなわち、エネルギー安全保障という観点から考えれば、現状での化石燃料の自主開発の政策的優先順位は高くないはず。それなのに、多額の公的資金を用いて自主開発を進めるのは、リソースが限られている中、戦略論的に合理的ではないと考えられる。
#91 ほぼ間違い
  • #27#36で述べたように、日本の産業分野の省エネによる効率改善は、90年以降は停滞している。また、現況でも、必ずしもグローバル・トップレベルでない分野もある。すなわち、日本の産業分野の省エネポテンシャルはまだ大きく、トップランナー制度も、義務制の導入やベンチマーク指標の見直しなどやるべき制度改革は多い。
#92 意味不明・
矛盾・間違い
  • リソースが限られている中、先手を打つためには、ある程度の「選択と集中」が論理的に不可欠である。その事実と「複線シナリオ」」とは矛盾する。
  • これまでの政府の再生可能エネルギー政策や電力自由化政策は、欧米や中国などと比較して、常に「後手」であり、第5次エネルギー基本計画でもそれが踏襲されている。
#93 矛盾・意味不明・
間違い
  • エネルギー政策、特に電力供給においては、究極的な目的は、安全で安価で温室効果ガス排出が少ない発電エネルギー技術での電力供給である。その供給の形は市民発電など様々な形があり、その意味で、グローバル競争や強力な国家・企業群に伍していく必要性はない。
  • ここの記述は、「どの国にも強大なエネルギー総合企業が必要」という重商主義的で前近代的な発想のもとに書かれている。
#94 矛盾
  • 第5次エネルギー基本計画では、石炭と原子力を重要と位置づけているが、現実にはこれらのエネルギーを長期的な視点で行動する金融資本がダイベスト(化石燃料関連ビジネスからの投資撤退)、すなわち社会的受容性とコストの両方の面から支持しなくなっている。このような冷徹な現実を見ない(見ようとしない)記述は問題である。
#95 間違い
  • まず、再生可能エネルギーの特徴である低い運転コストによって、市場を通して全体的に電力価格が下がることは、基本的には喜ばしいことであり、批判されるようなものではない。安価な電力供給は日本の産業界が期待することであり、政府も大きな目標の一つとしているはずである。
  • 他の電源の投資回収の問題は、根本的には、大きく産業構造が転換する際の既得権益や衰退産業に関わる人々をどう保護するかという問題である。
  • そもそも、総括原価方式によって、原発も石炭火力も、投資コストは利潤を載せた上で規制料金によって回収されてきたという現実がある。FITのみを批判するのは不公平である。
  • 様々な保護政策が考えられるが、常に公平性と効率性を考える必要がある。
  • 発電エネルギー技術に対する補助に関して言えば、世界においても、日本においても、原発や化石燃料に対して多額の補助金が政府から供与されていた。この事実を無視して再生可能エネルギーの賦課金制度であるFITだけを問題にするのは、公平な議論ではない。
  • 「再生可能エネルギーの大量導入で先行するドイツでも、この事態を放置すれば、これからは、再生可能エネルギーも含めて、いかなる投資も回収できなくなる可能性があると指摘されている。」とあるが、引用先が不明なのは問題である。いわゆる容量メカニズムには様々な議論があり、制度設計の選択肢も多用である。それらを捨象した断定した言い方は乱暴だと言える。
#96 意味不明
  • 脱炭素化は、低炭素化の不断の努力の結果に実現するものであり、非連続的に実現するものではない。また、石炭重視などの低炭素化に逆行する政策を実施している状況で、脱炭素を議論するのは矛盾であり、低炭素化と脱炭素化をわざわざ区別しているのも違和感がある。低炭素化の努力をしないまま、脱炭素の試みが失敗した場合のリスクなどは一切検討されておらず、もともと温暖化対策に関心がないことを如実に示している表現である。
  • 温暖化対策が進むことと、「(意味曖昧な)エネルギー競争」は本質的には無関係である。
  • 予見性の確保のためにも、「選択と集中」が必要である。しかし、これは第5次エネルギー基本計画のキーワードにされた「あらゆる選択肢の可能性の追求」「複線シナリオ」「総力戦対応」などとは明らかに矛盾する。
#97 間違い・
意味不明
  • 「エネルギー転換・脱炭素化は日本一国で成し遂げられるものではない」という断定的な記述は間違いである。多くの国が、エネルギー転換・脱炭素化を目指しており、具体的なロードマップを提示しているが、そこに基本的に他力本願的な要素はない。すなわち、自国におけるはっきりした目標や具体的な制度設計が必要であり、それがない日本の現状においては、このような記述は、本末転倒な議論であると同時に、単なる責任転嫁でもある。
  • 「日本のエネルギー企業による海外市場の獲得」は、エネルギー転換・脱炭素化に対する必要条件でも十分条件でもない。
#98 矛盾
  • 日本政府が原発と石炭を重要なベースロード電源と規定している限り、エネルギー転換に向けた国際連携を日本が提唱しても、化石資源に依存する資源国以外、呼応することはないだろう。
  • 化石資源に依存する資源国は、基本的に自国の化石資源の売却益を最優先しており、温暖化対策などの国際社会の取り組みを阻止する立場である。そのような国と協力関係を結ぶことは、日本を国際社会において一層孤立化させることになる。
#99 半分間違い
  • 各発電エネルギー技術の導入予測に関して極めてミスリーディングな記述である。
  • 例えば、IEAの報告書であるWEO 2017(IEA 2017)では、そのエグゼクティブ・サマリーにおいて、「(2040年までに)再生可能エネルギー源は一次需要の増加分の40%を満たし、電力部門においてその利用が爆発的に増加することにより、石炭が好調だった時期が終わりを告げることになる。2000 年以降、石炭火力発電の容量は 900ギガワット(GW)近く増加したが、現在から2040年までの純増分は400GWに過ぎず、その多くはすでに建設が始まっている発電所によるものである。インドでは電源構成に占める石炭の比率が2016年は4分の3だが2040年には半分以下になる。二酸化炭素回収貯留が大規模に行われない限り、世界の石炭消費量は横ばいで推移する。石油の需要は2040年まで伸び続けるが、そのペースは着実に低下する。天然ガスの消費量は2040年までに45%増加するが、電力部門では拡大の余地が限られており、産業が需要の最大の増加をもたらすセクターとなる」「再生可能エネルギーは、世界全体の発電所向け投資総額の3分の2を占めており、多くの国々で、新規の電源の中で最も低コストな電源となっている。太陽光発電は、中国とインドを筆頭とする急速な普及により、2040年までに低炭素発電容量の最大の供給源になる。その頃までには、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は40%に達する。欧州連合では、再生可能エネルギーが新規発電容量の80%を占め、風力発電が陸上、海上双方において大幅に伸びるため、2030年を過ぎる頃には発電の主要な電源になる」とある。すなわち、第5次エネルギー基本計画の記述は、2040年における化石燃料と原子力の位置づけを過大評価したものとなっている。
#100 意味不明・
間違い
  • 「全方位でのエネルギー選択に関する技術を持つ」ことは、原発、化石燃料の選択肢を含むと考えられるが、1)限られたリソース、2)脱原発や再生可能エネルギーの爆発的な普及の動き、3)パリ協定の遵守、などを考慮すれば、戦略論的に間違っている。
#101 意味不明・
矛盾
  • #94で述べたように、第5次エネルギー基本計画に象徴される日本のエネルギー政策に対する国内外の金融資本の支持は急激に低減している。すなわち、実際には、石炭関連案件は、一部の商社、銀行、そしてJBICや日本政策投資銀行などの公的な金融機関からの投融資に大きく依存している状況である(最近は、日本の民間銀行も石炭火力に対する融資は抑制することを表明している)。したがって、現状の方針を変えないかぎり、少なくとも国際資本の支持を得ることは不可能である。
#102 矛盾・意味不明・
間違い
  • 2050年エネルギーシナリオは、「複線シナリオ」という曖昧な表現にとどまっており、具体性にかける。その意味で、脱炭素化に向けたシナリオには全くなっていない。
  • また、具体的な方針や施策にはツギハギ感があり、矛盾にも満ちている。
#103 意味不明・
矛盾
  • 前述のように、限られたリソースの元では、「全ての選択肢に関して、官民協調の開発プロジェクトを立ち上げる」ことは非効率的であり、戦略論的に疑問である。
  • 今の日本のエネルギー政策を支持するのは化石燃料資源国や原発推進国のみであり、その数は限られている。その中で、「国際協力体制を構築」というのは、世界の潮流に逆行するものであり、協力体制ができたとしても、極めて歪なものになる。パリ協定にも明らかに矛盾する。
#104 間違い
  • 「しなやか」という言葉が意味不明である。このような曖昧な言葉を第5次エネルギー基本計画のような具体性が求められる文書で使うのは問題である。
  • 「技術に基づく3E+S」という考え方も、説明なくここで初めて出てくる。エネルギーや環境においては、技術で解決できない部分は極めて大きい。すなわち、なんでも技術で解決できると思うのは間違いである。
  • 日本の今の石炭火力重視政策や公的資金での石炭火力技術の輸出は「脱炭素化への国際貢献」と矛盾する。
  • 第5次エネルギー基本計画の実施は、一部の既得権益層の短期的な権益保護は達成できたとしても、国全体で見た場合には、世界の脱炭素の流れに逆行する。このような国際社会からの孤立は、「成長と生活の安定と繁栄」を実現することには貢献しない。
参考文献

エネルギー基本計画


平成30年7月

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はじめに

2011年3月の東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、政府は、2014年4月、2030年を念頭に、第4次エネルギー基本計画を策定し、原発依存度の低減、化石資源依存度の低減、再生可能エネルギーの拡大を打ち出した。
第4次エネルギー基本計画の策定から4年、2030年の計画の見直しのみならず、パリ協定の発効を受けた2050年を見据えた対応、より長期には化石資源枯渇に備えた超長期の対応、変化するエネルギー情勢への対応など、今一度、我が国がそのエネルギー選択を構想すべき時期に来ている。このため、今回のエネルギー基本計画の見直しは、2030年の長期エネルギー需給見通し(2015年7月経済産業省決定。以下「エネルギーミックス」という。)の実現と2050年を見据えたシナリオの設計で構成することとした。

エネルギー選択を構想するに際して、常に踏まえるべき点がある。

第一に、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが原点であるという姿勢は一貫して変わらない。
東京電力福島第一原子力発電所事故で被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添い、福島の復興・再生を全力で成し遂げる。政府及び原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り、十分な過酷事故への対応ができず、このような悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならない。発生から約7年が経過する現在も約2.4万人の人々が避難指示の対象となっている。
#1原子力損害賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉・汚染水対策や風評被害対策などへの対応を進めていくことが必要である。また、使用済燃料問題、最終処分問題など、原子力発電に関わる課題は山積している。これらの課題を解決していくためには、事業者任せにするのではなく、国が前面に立って果たすべき役割を果たし、国内外の叡智を結集して廃炉・汚染水問題を始めとする原子力発電の諸課題の解決に向けて、予防的かつ重層的な取組を実施しなければならない。

東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、2030年のエネルギーミックスの実現、2050年のエネルギー選択に際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。#2

第二に、戦後一貫したエネルギー選択の思想はエネルギーの自立である。膨大なエネルギーコストを抑制し、エネルギーの海外依存構造を変えるというエネルギー自立路線は不変の要請である。今回のエネルギー選択には、これにパリ協定発効に見られる脱炭素化への世界的なモメンタムが重なる。

こうした課題への取組は、いつの日か化石資源が枯渇した後にどのようにエネルギーを確保していくかという問いへの答えにつながっていく。エネルギー技術先進国である我が国は、脱炭素化エネルギーの開発に主導的な役割を果たしていかなければならない。
エネルギー技術こそ安全確保・エネルギー安全保障・脱炭素化・競争力強化を実現するための希少資源である。#3全ての技術的な選択肢の可能性を追求し、その開発に官民協調で臨むことで、こうした課題の解決に果敢に挑戦する。

以上の2点を前提とし、2030年のエネルギーミックスの実現と2050年を見据えたシナリオの設計の検討にあたっての視点は次のとおりである。
エネルギー情勢は時々刻々と変化し、前回の計画の策定以降、再生可能エネルギーの価格が世界では大幅に下がるなど大きな変化につながるうねりが見られるが、現段階で完璧なエネルギー源は存在しない。

現状において、太陽光や風力など変動する再生可能エネルギーはディマンドコントロール、揚水、火力等を用いた調整が必要であり、それだけでの完全な脱炭素化は難しい。#4蓄電・水素と組み合わせれば更に有用となるが、発電コストの海外比での高止まりや系統制約等の課題がある。原子力は社会的信頼の獲得が道半ばであり、再生可能エネルギーの普及や自由化の中での原子力の開発もこれからである。化石資源は水素転換により脱炭素化が可能だが、これも開発途上である。4年前の計画策定時に想定した2030年段階での技術動向に本質的な変化はない。#5我が国は、まずは2030年のエネルギーミックスの確実な実現に全力を挙げる。

他方で2050年を展望すれば、非連続の技術革新の可能性がある。再生可能エネルギーのみならず、蓄電や水素、原子力、分散型エネルギーシステムなど、あらゆる脱炭素化技術の開発競争が本格化しつつある。エネルギー技術の主導権獲得を目指した国家間・企業間での競争が加速している。我が国は、化石資源に恵まれない。エネルギー技術の主導権獲得が何より必要な国である。脱炭素化技術の全ての選択肢を維持し、その開発に官民協調で臨み、脱炭素化への挑戦を主導する。エネルギー転換と脱炭素化への挑戦。これを2050年のエネルギー選択の基本とする。

以上を踏まえ、第5次に当たる今回のエネルギー基本計画では、2030年のエネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組の更なる強化を行うとともに、新たなエネルギー選択として2050年のエネルギー転換・脱炭素化に向けた挑戦を掲げる。こうした方針とそれに臨む姿勢が、国・産業・金融・個人各層の行動として結実し、日本のエネルギーの将来像の具現化につながっていくことを期待する。

第1章 構造的課題と情勢変化、政策の時間軸

我が国が抱える構造的課題

資源の海外依存による脆弱性

我が国は、国民生活や産業活動の高度化、産業構造のサービス化を進めていく中で、1973年の第一次石油ショック後も様々な省エネルギーの努力などを通じてエネルギー消費の抑制を図ってきた。
我が国では現状、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っているため、海外においてエネルギー供給上の何らかの問題が発生した場合、我が国が自律的に資源を確保することが難しいという根本的な脆弱性を有している。
こうした脆弱性は、エネルギー消費の抑制のみで解決されるものではないことから、我が国は中核的エネルギー源である石油の代替を進め、リスクを分散するとともに、国産エネルギー源を確保すべく努力を重ねてきた。

その結果、東日本大震災前の2010年の原子力を含むエネルギー自給率は20%程度まで改善されたが、東日本大震災後、原子力発電所の停止等により状況は悪化し、2016年のエネルギー自給率は8%程度に留まっている。根本的な脆弱性を抱えた構造は解消されていない。#6

中長期的な需要構造の変化(人口減少等)

我が国の人口は減少に向っている。こうした人口要因は、エネルギー需要を低減させる方向に働くことになる。
また、自動車の燃費や、家電の省エネルギー水準が向上しているほか、製造業のエネルギー原単位も減少傾向にあるなど、我が国の産業界の努力により、着実に省エネルギー化が進んでいる。
さらに、電気や水素などを動力源とする次世代自動車や、ガス等を効率的に利用するコージェネレーションの導入などによるエネルギー源の利用用途の拡大なども需要構造に大きな変化をもたらすようになっている。
急速に進行する高齢化も、これまでのエネルギーに対する需要の在り方を変えていくこととなる。さらに、AI・IoTやVPPなどデジタル化とその利用による需要構造の大きな変革の可能性が高まっている。
こうした人口減少や技術革新等を背景とした我が国のエネルギー需要構造の変化は、今後とも続くものと見込まれ、このような変化に如何に対応していくかが課題となっている。

資源価格の不安定化(新興国の需要拡大等)

世界に目を転じると、エネルギーの需要の中心は、先進国から新興国に移動している。世界のエネルギー需要は、大幅に増加すると見込まれているが、需要増加の多くは非OECD(経済協力開発機構)諸国のエネルギー需要の増加によるものである。
エネルギー需要を拡大する中国やインド等の新興国は、国営企業による資源開発・調達を積極化させており、新興国の企業群も交えて激しい資源の争奪戦が世界各地で繰り広げられるようになっている。特に、中国のエネルギー需要拡大と資源獲得や電気自動車(EV)の導入拡大等への積極的・戦略的な動きは、世界の資源とその価格動向のみならず、我が国の中長期的なエネルギー安全保障にも大きな影響を与えうる。
一方、米国のシェールガス・オイルの供給拡大など供給面でも大きな構造変化が生じている。2015年には、米国が国別原油生産量の第1位となり、天然ガスの生産量でも第1位に躍り出た。シェール革命は、原油・天然ガスの価格にも影響を与え、例えば、原油価格は2016年に一時的に30ドル/バレルを切り、2003年以来の低い水準となった。その後、石油輸出国機構(OPEC)の減産合意や地域紛争の影響などで原油価格は持ち直しているが、こうした供給面での構造変化が原油価格の乱高下を助長している側面もある。
以上のような資源獲得競争の激化や地域における紛争、さらには経済状況の変化による需要動向の変動や供給構造の変化が、長期的な資源価格の上昇傾向と、これまで以上に資源価格の乱高下を発生させやすい状況を生み出している。国際エネルギー機関(IEA)は2040年で、60~140ドルの幅で原油価格が変動する可能性を示している。中東地域における政治・社会情勢や欧米、中国等の経済状況によって、原油価格に大きな変動が生じる状況が続いていくものと考えられる。

世界の温室効果ガス排出量の増大等

新興国の旺盛なエネルギー需要は、温室効果ガスの排出状況の様相も一変させるに至っている。世界のエネルギー起源二酸化炭素(CO2)排出量は、全体として増加してきているが、特に新興国における増加が顕著である。今では、世界全体の排出量全体に占める先進国の排出量の割合は、1990年には約7割であったものが、2010年には約4割に低下し、先進国と途上国の排出量の割合が逆転した。
IEAによれば、世界全体のエネルギー起源CO2の排出量は、更に増加することが予測されている。具体的には、パリ協定に基づく各国のNDC(自国が決定する貢献)を踏まえた新政策シナリオにおいて、2016年の約320億トンから、2040年に約360億トンへ増加する見通しになっている。#7気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書では、気候システムの温暖化について疑う余地がないこと、また、気候変動を抑えるためには温室効果ガスの抜本的かつ継続的な削減が必要であることが示されている。こうした中、特筆すべきは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の国連での採択や、「パリ協定」の発効である。同アジェンダにおいては、エネルギー、経済成長と雇用、気候変動等に関する持続可能な開発目標(SDGs)が掲げられている。また、同協定では、世界全体で今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出量と吸収源による除去量との均衡の達成を目指すとしており、世界的に脱炭素化(本計画では「今世紀後半の世界全体での温室効果ガスの人為的な排出量と吸収源による除去量との均衡の達成に向けて、化石燃料利用への依存度を引き下げること等により炭素排出を低減していくこと」を指す。)へのモメンタムが高まっている。このようなSDGsの達成や、地球温暖化問題の本質的な解決のためには、国内の排出削減はもとより、世界全体の温室効果ガス排出量の大幅削減を行うことが急務である。

エネルギーをめぐる情勢変化

脱炭素化に向けた技術間競争の始まり

再生可能エネルギーへの期待の高まり

ここ数年で、再生可能エネルギーの価格は、固定価格買取制度(FIT制度)などによる大量導入を背景に、海外では大きく低下している。EVも、主要国による政策支援を通じた大量導入により、車載用蓄電池の価格が低下し始めている。
これらを契機に、再生可能エネルギー・蓄電・デジタル制御技術等を組み合わせた脱炭素化エネルギーシステムへの挑戦が、幅広い産業を巻き込んで加速しつつある。大規模な電力会社やガス会社の中には、再生可能エネルギーを中心とした分散型エネルギーシステムの開発に着手する企業も出始めた。需要側でも、一部のグローバル企業が電力消費を再生可能エネルギーで100%賄うことを目指している。こうした企業による動きが世界的に高まってきており、エネルギー転換による脱炭素化を図りつつ経済成長を実現できるとの期待も生じつつある。
一方、再生可能エネルギーを大量に導入するには様々な課題があることも同時に明らかになってきている。例えば、現状において、太陽光や風力など変動する再生可能エネルギーは火力・揚水等を用いて調整が必要であり、それ単独では脱炭素化を実現することはできない。天候次第という間欠性の問題から、供給信頼度は低く、その依存度が高まるほど自然変動によって停電を防ぐための品質の安定(周波数の維持)が困難になる。また、発電効率を更に向上して設置面積を抑制する必要や、火力や原子力とは異なる発電立地となるために送電網の増強投資を通じた送配電ネットワーク全体の再設計を行う必要がある。また、分散型エネルギーシステムとして活用するためには小型の蓄電システム等の開発が重要となる。#8
このように、再生可能エネルギーへの期待はかつてなく高まっているものの、それ単体による電力システムは、自立化や脱炭素化に向けて、現段階では課題が多く、発電効率の向上、火力・揚水等への依存からの脱却や蓄電システムの開発、分散型ネットワークシステムの確立などの技術革新競争が今後本格化していくことが予想される。

再生可能エネルギーの革新が他のエネルギー源の革新を誘発

再生可能エネルギーやガスの価格低下は、他の化石エネルギーや原子力の技術革新を誘発し、再生可能エネルギーに対抗、あるいは共存する動きも出ている。
その一例として、褐炭をガス化して水素を製造し、その過程で発生するCO2を安価に炭素固定化(CCS)することにより脱炭素化エネルギー源に転換する日豪の取組など、化石燃料の脱炭素化へ向けた試みが始まっている。
原子力も例外ではない。米国では、大型原子炉の安全運転管理を徹底して80年運転を実現しようとする動きなどに加えて、小型原子炉の開発も始まっている。投資期間を短縮し投資適格性を高め、再生可能エネルギーとの共存可能性を目指した新しいコンセプトに基づく挑戦であり、英国・カナダなどでも同様の試みが民間主導で生じている。このように大型炉・小型炉を問わず、社会的要請に応えるイノベーションへの挑戦が世界で始まっている。#9
「可能性」が高まっている一方で、現時点では、経済的で脱炭素化した、変動するエネルギー需要を単独で満たす完璧なエネルギー技術は実現していない。技術間の競争は始まったばかりであり、その帰趨は未だ不透明である。

技術の変化が増幅する地政学的リスク

地政学的リスクの増大

技術の変化はエネルギーをめぐる地政学的な環境に影響を与える。米国のシェール革命や再生可能エネルギーの価格低下により、中東に偏在する石油に依存した構造から、石油よりも地域的な偏りが小さい再生可能エネルギー・ガス主体のエネルギー構造への転換が実現すれば、各国は特定の国の影響力に左右されることのないエネルギーの民主化がもたらされるとの見解がある。
その一方で、IEAによれば、2040年段階で、持続可能な発展シナリオというSDGsに基づくシナリオであっても、一次エネルギー供給に占める化石燃料の比率は、先進国で53%、新興国にあっては63%という比率を占めると予想されている。他方、再生可能エネルギーは、先進国でも32%、新興国で29%を占めるに過ぎない。こうした見通しを踏まえれば、現実的には、世界のエネルギー情勢は石油による地政学的リスクに大きく左右される構造が依然続くと考えられる。#10
また、中国の急激なガスシフトがアジアのLNG価格を瞬間的に2倍に跳ね上げたことが示すように、中国、インド、東南アジアといった新興国のエネルギー需要の増勢は、化石資源価格の変動リスクを高める影響があることを無視することはできない。さらに、化石資源価格のボラティリティの上昇は、産油国の国家財政の不透明さが高まることを意味し、産油国の経済構造に伴う不安定性が地政学的リスクを高める可能性もある。
以上を踏まえれば、少なくとも過渡的には、エネルギーをめぐる地政学的リスクは、緩和するのではなく増幅する可能性が高いと考えられる。

エネルギーをめぐるリスクの多様化(地経学的リスクの顕在化等)

さらに注目しなければならない点は、中国やインドといった新興の大国が、エネルギーの需要・供給両面でその影響力を高め、それを通じて政治的なパワーを発揮する、いわゆる「地経学的リスク」が顕在化しうるという点である。特に、太陽光パネルやEVを支える蓄電、デジタル化技術、原子力といった脱炭素化を担う技術分野での中国の台頭は著しい。我が国の太陽光パネルの自国企業による供給は、ここ数年で大きく低下し中国に依存する状況になってきている。こうした状況変化の中、もはや「エネルギー技術先進国=日米欧」という構図は与件ではない。エネルギーのサプライチェーンの中でコア技術を自国で確保し、その革新を世界の中でリードする「技術自給率」(国内のエネルギー消費に対して、自国技術で賄えているエネルギー供給の程度)という概念の重要性を再確認すべき事態になっている。また、デジタル化やIoT化等が進めば、発電施設や送電網などエネルギー関連設備へのサイバー攻撃リスクといった新たなリスクへの対応を意識しなければならないなど、過渡的にはエネルギー情勢は不安定化する可能性が高い。#11

国家間・企業間の競争の本格化

主要国が提示している長期低排出発展戦略は、温室効果ガス排出削減目標の水準という点においていずれも野心的だが、絵姿や方向性を示しており、具体的な達成方法を明確にしている国はない。他方で、どの国もその国ごとの課題を抱えつつも、各国政府は脱炭素化に向けた「変革の意思」を明確にし、そのことが脱炭素化に向けた世界的なモメンタムを生み出している。
欧米の主要エネルギー企業においても、脱炭素化に向けた取組を競う状況となっている。彼らは、自社の事業ポートフォリオの中のコア事業を見極めながら、新たな技術の可能性を並行して追求している。その戦略は各社ごとに異なり多様だが、エネルギー転換・脱炭素化へのうねりに対しての危機感と期待感が交雑する中、変革に対して前向きに模索を続けている点において概ね一致している。
なお、金融資本市場においては、エネルギー転換・脱炭素化のうねりが企業や産業、社会の持続可能性に与える影響を見極めようとする動きが本格化している。環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資の拡大と並行して、エンゲージメント(建設的な対話を通じて投資先企業に働きかけ、改善を促す)の事例やダイベストメント(化石燃料、とりわけ石炭火力関連資産からの資金の引き揚げ)の事例など、石炭等の温室効果ガス排出量の多い化石燃料の利用の抑制に繋がり得る動きがある。長い目で見れば、金融資本市場においても、「時間軸を設定したエネルギー転換・脱炭素化シナリオ」を掲げる企業経営にこそ、長期的な企業価値が見出され、注目が集まる可能性がある。

2030年エネルギーミックスの実現と2050年シナリオとの関係

2030年のエネルギーミックスは、既存のインフラ・技術・人材を総合的に勘案し、相応の蓋然性をもって示された見通しである。当該見通しは、パリ協定におけるNDCとして、国連気候変動枠組条約事務局に提出された削減目標(温室効果ガスを2030年度に2013年度比▲26.0%(2005年度比25.4%))と整合的なものとなっており、民間の中期的な投資行動に対して一定の予見可能性を与え、そのよりどころとなっている重要な指針である。
このエネルギーミックスに向けた進捗を確認すれば以下のとおりであり、着実に進展してきていると評価できるものの、その水準は十分なものではなく、道半ばの状況である。
以上を踏まえ、2030年のエネルギーミックスについては、3E+Sの原則の下、徹底した省エネルギー、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化、原発依存度の可能な限りの低減といったこれまでの基本的な方針を堅持しつつ、エネルギー源ごとの施策等の深掘り・対応強化により、その確実な実現を目指す。#12
他方、2050年という長期展望については、技術革新等の可能性と不確実性、情勢変化の不透明性が伴い、蓋然性をもった予測が困難である。このため、野心的な目標を掲げつつ、常に最新の情報に基づき重点を決めていく複線的なシナリオによるアプローチとすることが適当である。

省エネルギー

2013年度の最終エネルギー消費は原油換算で3.6億kl程度であり、2030年度には徹底した省エネルギーで対策前比0.5億kl程度の削減を見込む。これは、年280万kl程度の削減に相当する。2016年度時点の削減量は880万kl程度であり、現状は年220万kl程度のペースで削減している。なお、2016年度時点の最終エネルギー消費(3.4億kl程度)の内訳は、電力が0.9億kl程度、運輸が0.8億kl程度、熱が1.8億kl程度となっている。

ゼロエミッション電源比率

2013年度のゼロエミッション比率は再生可能エネルギー11%と原子力1%を合わせて12%程度であり、2030年度には再生可能エネルギーの導入促進や、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を通じて、44%程度とすることを見込む。これは、年2%ポイント程度の上昇に相当する。2016年度は16%程度となっており、現状は概ね年2%ポイントずつ上昇している。

エネルギー起源CO2排出量

2013年度のエネルギー起源CO2排出量は12.4億トンであり、2030年度には9.3億トン程度を見込む。これは、年0.2億トン程度の削減に相当する。2016年度は11.3億トン程度であり、現状は年0.4億トン程度のペースで削減している。

電力コスト

2013年度の電力の燃料費とFIT制度の買取費用等を足した電力コストは9.7兆円であり、2030年度は電力コストを引き下げて9.2兆円から9.5兆円を見込む。現状はFIT制度による買取費用の増加がある一方で資源価格が下落し、2016年度は全体として6.2兆円となっている。

エネルギー自給率

2013年度のエネルギー自給率は東日本大震災後大きく低下し6%となったが、2030年度には再生可能エネルギーの導入促進や、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を通じて、24%とすることを見込む。これは、年1%ポイント程度の上昇に相当する。2016年度は8%程度となっている。

第2章 2030年に向けた基本的な方針と政策対応

基本的な方針

エネルギー政策の基本的視点(3E+S)の確認

エネルギー政策の基本的視点(3E+S)

エネルギーは人間のあらゆる活動を支える基盤である。
安定的で社会の負担の少ないエネルギー供給を実現するエネルギー需給構造の実現は、我が国が更なる発展を遂げていくための前提条件である。
しかしながら、我が国のエネルギー需給構造は脆弱性を抱えており、特に、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故後に直面している課題を克服していくためには、エネルギー需給構造の改革を大胆に進めていくことが不可避となっている。
エネルギー政策の推進に当たっては、生産・調達から流通、消費までのエネルギーのサプライチェーン全体を俯瞰し、基本的な視点を明確にして中長期に取り組んでいくことが重要である。
エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取組を行うことである。#13
この3E+Sの原則の下、エネルギー政策とそれに基づく対応を着実に進め、2030年のエネルギーミックスの確実な実現を目指す。

国際的な視点の重要性

現在直面しているエネルギーをめぐる環境変化の影響は、我が国の国内のみならず、新たな世界的潮流として多くの国に及んできている。エネルギー分野においては、直面する課題に対して、一国のみによる対応では十分な解決策が得られない場合が増えてきている。
例えば、資源調達においては、各国、各企業がライバルとして競争を繰り広げる一方、資源供給国に対して消費国が連携することにより取引条件を改善していくなど、競争と協調を組み合わせた関係の中で、資源取引を一層合理的なものとすることができる。
また、例えば、原子力の平和・安全利用や地球温暖化対策、安定的なエネルギー供給体制の確保などについては、関係する国々が協力をしなければ、本来の目的を達成することはできず、国際的な視点に基づいて取り組んでいかなければならないものとなっている。
エネルギー政策は、こうした国際的な動きを的確に捉えて構築されなければならない。さらに国際動向は、地政学や地経学的な観点も含めて、より動きが加速し、流動的になっており、これに迅速かつ適切に対応することが一層求められる。
こうした国際的視点が一層必要となりつつあることは、エネルギー産業も同様である。
海外資源への高い依存度という我が国のエネルギー供給構造や、今後、国内エネルギー需要が弱含んでいくことを踏まえれば、エネルギー産業が我が国のエネルギー供給の安定化に貢献しつつ、経営基盤を強化して更に発展していくために、自ら積極的に国際化を進め、内外を問わず企業間の連携・協力も追求しながら、海外事業を強化し、海外の需要を自らの市場として積極的に取り込んでいくことがなお一層求められる。

経済成長の視点の重要性

エネルギーは、産業活動の基盤を支えるものであり、特に、その供給安定性とコストは、事業活動に加えて企業立地などの事業戦略にも大きな影響を与えるものである。
基本的視点で示されるとおり、経済効率性の向上による低コストでのエネルギー供給を図りつつ、エネルギーの安定供給と環境負荷の低減を実現していくことは、既存の事業拠点を国内に留め、我が国が更なる経済成長を実現していく上での前提条件となる。
また、エネルギー需給構造の改革は、エネルギー分野に新たな事業者の参入を様々な形で促すこととなり、この結果、より総合的で効率的なエネルギー供給を行う事業者の出現や、エネルギー以外の市場と融合した新市場を創出する可能性がある。
さらに、こうした改革は、我が国のエネルギー産業が競争力を強化し、国際市場で存在感を高めていく契機となり、エネルギー関連企業が付加価値の高いエネルギー関連機器やサービスを輸出することによって、貿易収支の改善に寄与していくことも期待される。
加えて、地域に賦存するエネルギー資源を有効に活用し、自立・分散型のエネルギーシステムを構築することは、地域の経済活性化、防災などの強靱化につながる。
したがって、エネルギー政策の検討に当たっては、経済成長に貢献していくことも重要な視点とすべきである。その際、我が国企業が有する優れたエネルギー技術の活用とそれによる国内外の市場創出、海外貢献の拡大といった視点も、併せて重要である。

“多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”の構築と政策の方向

国内資源の限られた我が国が、社会的・経済的な活動が安定的に営まれる環境を実現していくためには、エネルギーの需要と供給が安定的にバランスした状態を継続的に確保していくことができるエネルギー需給構造を確立しなければならない。そのためには、平時において、エネルギー供給量の変動や価格変動に柔軟に対応できるよう、安定性と効率性を確保するとともに、危機時には、特定のエネルギー源の供給に支障が発生しても、その他のエネルギー源を円滑かつ適切にバックアップとして利用できるようにする必要がある。
このような“多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”の実現を目指していく。
こうしたエネルギー需給構造の構築に向けては、以下の方向性を踏まえて政策を展開していく。

各エネルギー源が多層的に供給体制を形成する供給構造の実現

各エネルギー源は、それぞれサプライチェーン上の強みと弱みを持っており、安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しない。
危機時であっても安定供給が確保される需給構造を実現するためには、エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多層的な供給構造を実現することが必要である。

エネルギー供給構造の強靱化の推進

多層的に構成されたエネルギーの供給体制が、平時のみならず、危機時にあっても適切に機能し、エネルギーの安定供給を確保できる強靱性(レジリエンス)を保持することは、エネルギーの安定供給を真に保証する上での重要な課題の一つである。
そのため、電力など二次エネルギーを含めたエネルギー・サプライチェーン全体を俯瞰して、供給体制の綻びを最小化し、早期の供給回復を実現すべく、問題点の把握を注意深く継続し、必要な対策に迅速に取り組むことが必要である。

構造改革の推進によるエネルギー供給構造への多様な主体の参加

電力・ガスシステム改革等を通じて、産業ごとに存在していたエネルギー市場の垣根を取り払うことで、既存のエネルギー事業者の相互参入や異業種からの新規参入、さらに地域単位でエネルギー需給管理サービスを行う自治体や非営利法人等がエネルギー供給構造に自由に参加することが期待される。
こうした多様な主体が、様々なエネルギー源を供給することができるようになることで、エネルギー市場における競争が活性化し、エネルギー産業の効率化が促進されていくことになる。現在、電力・ガスシステム改革が進行中であるが、こうしたプロセスを通じて、多様な主体による競争の促進と効率的な市場への変革、公益性も踏まえた市場改革と過少投資問題への対応など中長期的な事業環境の整備、グローバル展開やAI・IoTを利用したイノベーションなどを推進する必要がある。
また、地域に新たな産業を創出するなど、地域活性化に大きく貢献することなどが期待される。

需要家に対する多様な選択肢の提供による、需要サイドが主導するエネルギー需給構造の実現

需要家に対して多様な選択肢が提供されるとともに、需要家が、分散型エネルギーシステムなどを通じて自ら供給に参加できるようになることは、エネルギー需給構造に柔軟性を与えることにつながる。
需要家が多様な選択肢から自由にエネルギー源を選ぶことができれば、需要動向が供給構造におけるエネルギー源の構成割合や供給規模に対して影響を及ぼし、供給構造をより効率化することが期待される。
供給構造の構成が、需要動向の変化に対して柔軟に対応するならば、多層的に構成された供給構造の安定性がより効果的に発揮されることにもつながる。
また、地産地消型の再生可能エネルギーの普及やコージェネレーションの普及、蓄電池等の技術革新、AI・IoTの活用などにより、需要サイド主導の分散型エネルギーシステムの一層の拡大が期待される。

海外の情勢変化の影響を最小化するための国産エネルギー等の開発・導入の促進による自給率の改善

我が国は、海外からの資源に対する依存度が高く、資源調達における交渉力の限界等の課題や、資源国やシーレーンにおける情勢変化の影響などを背景として、供給不安に直面するリスクを常に抱えており、エネルギー安全保障の確保は、我が国が抱える大きな課題であり続けている。
こうした課題を克服し、国際情勢の変化に対する対応力を高めるためには、我が国が国産エネルギーとして活用していくことができる再生可能エネルギー、準国産エネルギーに位置付けられる原子力、さらにメタンハイドレートなど我が国の排他的経済水域内に眠る資源などを戦略的に活用していくための中長期的な取組を継続し、自給率の改善を実現する政策体系を整備していくことが重要である。また、こうした中で、例えば、海外の資源権益の獲得も含めて、石油・天然ガスや石炭における自主開発比率(輸入量及び国内生産量に占める、我が国企業の権益に関する引取量及び国内生産量の割合)の目標などを必要に応じて設定することは有効である。#14

国内外で温室効果ガスの排出削減を実現するための地球温暖化対策への貢献

我が国は、他国に先駆け、エネルギー効率の改善等を通じて地球温暖化問題に積極的に取り組んできた。省エネルギーや環境負荷のより低いエネルギー源の利用・用途の拡大等に資する技術やノウハウの蓄積が進んでおり、こうした優れた技術等を有する我が国は、技術力で地球温暖化問題の解決に大きく貢献できる立場にある。#15
このため、引き続き、「地球温暖化対策計画」(2016年5月13日閣議決定)に沿って、日本国内で地球温暖化対策を進めることはもとより、世界全体の温室効果ガス排出削減への貢献を進めていくことが重要である。例えば、我が国の優れたエネルギー技術を活かして、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の活用や低炭素型インフラ輸出なども含めた海外貢献の拡大が有効であり、こうした取組を積極的に展開すべきである。#16

一次エネルギー構造における各エネルギー源の位置付けと政策の基本的な方向

我が国が、安定したエネルギー需給構造を確立するためには、エネルギー源ごとにサプライチェーン上の特徴を把握し、状況に応じて、各エネルギー源の強みが発揮され、弱みが補完されるよう、各エネルギー源の需給構造における位置付けを明確化し、政策的対応の方向を示すことが重要である。
特に、電力供給においては、安定供給、低コスト、環境適合等をバランスよく実現できる供給構造を実現すべく、各エネルギー源の電源としての特性を踏まえて活用することが重要であり、各エネルギー源は、電源として以下のように位置付けられる。

こうした整理を踏まえ、我が国のエネルギー需給構造が抱える課題に対応していくための“多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”における各エネルギー源の位置付けと政策の方向性について、以下のように整理する。

再生可能エネルギー

位置付け

現時点では安定供給面、コスト面で様々な課題が存在するが、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、長期を展望した環境負荷の低減を見据えつつ活用していく重要な低炭素の国産エネルギー源である。

政策の方向性

再生可能エネルギーについては、2013年から導入を最大限加速してきており、引き続き積極的に推進していく。そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを着実に進める。再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議の司令塔機能を活用し、引き続き関係府省庁間の連携を促進し、更なる施策の具体化を進める。これにより、2030年のエネルギーミックスにおける電源構成比率の実現とともに、確実な主力電源化への布石としての取組を早期に進める。#17
これに加えて、それぞれに異なる各エネルギー源の特徴を踏まえつつ、世界最先端の浮体式洋上風力や大型蓄電池などによる新技術市場の創出など、新たなエネルギー関連の産業・雇用創出も視野に、経済性等とのバランスのとれた開発を進めていくことが必要である。
1) 太陽光
大規模に開発できるだけでなく、個人を含めた需要家に近接したところで自家消費や地産地消を行う分散型電源としても、非常用電源としても利用可能である。一方、発電コストが高く、出力不安定性などの安定供給上の問題があることから、更なる技術革新が必要である。#18中長期的には、コスト低減が達成されることで、市場売電を想定した大型電源として活用していくとともに、分散型エネルギーシステムにおける昼間のピーク需要を補い、消費者参加型のエネルギーマネジメントの実現等に貢献するエネルギー源としての位置付けも踏まえた導入が進むことが期待される。
2) 風力
大規模に開発できれば発電コストが火力並であることから、経済性も確保できる可能性のあるエネルギー源である。ただし、需要規模が大きい電力管内には供給の変動性に対応する十分な調整力がある一方で、北海道や東北北部の風力適地では、必ずしも十分な調整力がないことから、系統の整備、広域的な運用による調整力の確保、蓄電池の活用等が必要となる。こうした経済性も勘案して、利用を進めていく必要がある。
3) 地熱
世界第3位の地熱資源量を誇る我が国では、発電コストも低く、安定的に発電を行うことが可能なベースロード電源を担うエネルギー源である。また、発電後の熱水利用など、エネルギーの多段階利用も期待される。一方、開発には時間とコストがかかるため、投資リスクの軽減、送配電網の整備、円滑に導入するための地域と共生した開発が必要となるなど、中長期的な視点を踏まえて持続可能な開発を進めていくことが必要である。
4) 水力
水力発電は、渇水の問題を除き、安定供給性に優れたエネルギー源としての役割を果たしており、引き続き重要な役割を担うものである。このうち、一般水力(流れ込み式)については、運転コストが低く、ベースロード電源として、また、揚水式については、発電量の調整が容易であり、ピーク電源としての役割を担っている。一般水力については、これまでも相当程度進めてきた大規模水力の開発に加え、現在、発電利用されていない既存ダムへの発電設備の設置や、既に発電利用されている既存ダムの発電設備のリプレースなどによる出力増強等、既存ダムについても関係者間で連携をして有効利用を促進する。
また、未開発地点が多い中小水力についても、高コスト構造等の事業環境の課題を踏まえつつ、地域の分散型エネルギー需給構造の基礎を担うエネルギー源としても活用していくことが期待される。
5) 木質バイオマス等(バイオ燃料を含む)
未利用材による木質バイオマスを始めとしたバイオマス発電は、安定的に発電を行うことが可能な電源となりうる、地域活性化にも資するエネルギー源である。特に、木質バイオマス発電及び熱利用については、我が国の貴重な森林を整備し、林業を活性化する役割を担うことに加え、地域分散型、地産地消型のエネルギー源としての役割を果たすものである。
一方、木質や廃棄物など材料や形態が様々であり、コスト等の課題を抱えることから、既存の利用形態との競合の調整、原材料の安定供給の確保等を踏まえ、分散型エネルギーシステムの中の位置付けも勘案しつつ、森林・林業施策などの各種支援策を総動員して導入の拡大を図っていくことが期待される。
輸入が中心となっているバイオ燃料については、国際的な動向や次世代バイオ燃料の技術開発の動向を踏まえつつ、導入を継続する。

原子力

位置付け

燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。#19

政策の方向性

いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。#20その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。
原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から確保していく規模を見極めて策定した2030年のエネルギーミックスにおける電源構成比率の実現を目指し、必要な対応を着実に進める。
また、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて、そのリスクを最小限にするため、万全の対策を尽くす。その上で、万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する。#21
加えて、原子力利用に伴い確実に発生する使用済燃料問題は、世界共通の課題であり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、国際的な人的ネットワークを活用しつつ、その対策を着実に進めることが不可欠である。
さらに、核セキュリティ・サミットの開催や核物質防護条約の改正の採択など国際的な動向を踏まえつつ、核不拡散や核セキュリティ強化に必要となる措置やそのための研究開発を進める。

石炭

位置付け

温室効果ガスの排出量が大きいという問題があるが、地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量当たりの単価も化石燃料の中で最も安いことから、現状において安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源の燃料として評価されているが、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、適切に出力調整を行う必要性が高まると見込まれる。今後、高効率化・次世代化を推進するとともに、よりクリーンなガス利用へのシフトと非効率石炭のフェードアウトに取り組むなど、長期を展望した環境負荷の低減を見据えつつ活用していくエネルギー源である。#22

政策の方向性

利用可能な最新技術の導入による新陳代謝を促進することに加え、発電効率を大きく向上し、発電量当たりの温室効果ガス排出量を抜本的に下げるための技術等(IGCC、CCUSなど)の開発を更に進める。
パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素等も含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、「低炭素型インフラ輸出」を積極的に推進する。その中で、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、相手国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭である超々臨界圧(USC)以上の発電設備について導入を支援する。
#23

天然ガス

位置付け

現在、電源の4割超を占め、熱源としての効率性が高いことから、利用が拡大している。海外からパイプラインを通じた輸入はないが、石油と比べて地政学的リスクも相対的に低く、化石燃料の中で温室効果ガスの排出も最も少なく、発電においてはミドル電源の中心的な役割を果たしている。
水素社会の基盤の一つとなっていく可能性もある。今後、シェール革命により競争的に価格が決定されるようになっていくことなどを通じて、各分野における天然ガスシフトが進行する見通しであることから、長期を展望した環境負荷の低減を見据えつつその役割を拡大していく重要なエネルギー源である。

政策の方向性

我が国は、現時点では、国際的には高い価格でLNGを調達しており、電源としての過度な依存を避けつつ、供給源多角化などによりコストの低減を進めることが重要である。
また、地球温暖化対策の観点からも、コージェネレーションなど地域における電源の分散化や水素源としての利用など、利用形態の多様化により、産業分野などにおける天然ガスシフトを着実に促進し、新陳代謝によりコンバインドサイクル火力発電など天然ガスの高度利用を進めるとともに、緊急時における強靱性の向上などの体制整備を進める必要がある。

石油

位置付け

国内需要は減少傾向にあるものの、現在、一次エネルギーの4割程度を占めており、運輸・民生・電源等の幅広い燃料用途や化学製品など素材用途があるという利点を持っている。特に運輸部門の依存は極めて大きく、製造業における材料としても重要な役割を果たしている。そうした利用用途に比べ、電源としての利用量はそれほど多くはないものの、ピーク電源及び調整電源として一定の機能を担っている。調達に係る地政学的リスクは最も大きいものの、可搬性が高く、全国供給網も整い、備蓄も豊富なことから、他の喪失電源を代替するなどの役割を果たすことができ、今後とも活用していく重要なエネルギー源である。

政策の方向性

供給源多角化、産油国協力、備蓄等の危機管理の強化や、原油の有効利用、運輸用燃料の多様化、調整電源としての石油火力の活用等を進めることが不可欠である。
また、災害時には、エネルギー供給の「最後の砦」になるため、供給網の一層の強靱化を推進することに加え、内需減少とアジア全域での供給増強が同時に進む中、平時を含めた全国供給網を維持するため、石油産業の経営基盤の強化に向けた取組などが必要である。

LPガス

位置付け

中東依存度が高く脆弱な供給構造であったが、北米シェール随伴の安価なLPガスの購入などが進んでおり、地政学的リスクが小さくなる方向にある。化石燃料の中で温室効果ガスの排出が比較的低く、発電においては、ミドル電源として活用可能であり、また最終需要者への供給体制及び備蓄制度が整備され、可搬性、貯蔵の容易性に利点があることから、平時の国民生活、産業活動を支えるとともに、緊急時にも貢献できる分散型のクリーンなガス体のエネルギー源である。

政策の方向性

災害時にはエネルギー供給の「最後の砦」となるため、備蓄の着実な実施や中核充填所の設備強化などの供給体制の強靱化を進める。また、LPガスの料金透明化のための国の小売価格調査・情報提供や事業者の供給構造の改善を通じてコストを抑制することで、利用形態の多様化を促進するとともに、LPガス自動車など運輸部門において更に役割を果たしていく必要がある。

二次エネルギー構造の在り方

新たなエネルギー需給構造をより安定的で効率的なものとしていくためには、一次エネルギーの構成だけでなく、最終需要家がエネルギーを利用する形態である二次エネルギーについても検討を加える必要がある。特に、省エネルギーを最大限に進めるためには、電気や熱への転換を如何に効率的に行い、無駄なく利用するかということについて踏み込んだ検討を行い、具体化に向けた取組を進める必要がある。
また、技術革新が進んできていることから、水素をエネルギーとして利用する“水素社会”についての包括的な取組を進めるべき時期に差し掛かっている。
各エネルギー源について、強みが発揮され、弱みが補完されるよう、多層的な供給構造の構築を進めつつ、最大限に効率性を発揮できるよう、二次エネルギー構造の在り方についても検討を行う。

二次エネルギー構造の中心的役割を担う電気

電気は、多様なエネルギー源を転換して生産することが可能であり、利便性も高いことから、今後も電化率は上がっていくと考えられ、二次エネルギー構造において、引き続き中心的な役割を果たしていくこととなる。
我が国の電力供給体制は、独仏のような欧州の国々のように系統が連系し、国内での供給不安時に他国から電力を融通することはできず、米国のように広大な領域の下で、複数の州間に送配電網が整備されている状況にもない。したがって、電源と系統が全国大でバランスのとれた形で整備・確保され、広域的・効率的に利活用できる体制を確保していくことが不可欠である。
電力供給においては、低廉で安定的なベースロード電源と、需要動向に応じ出力を機動的に調整できるミドル電源、ピーク電源を適切なバランスで確保するとともに、再生可能エネルギー等の分散型電源も組み合わせていくことが重要である。
電源構成は、特定の電源や燃料源への依存度が過度に高まらないようにしつつ、低廉で安定的なベースロード電源を国際的にも遜色のない水準で確保すること、安定供給に必要な予備力、調整力を堅持すること、環境への適合を図ることが重要であり、バランスのとれた電源構成の実現に注力していく必要がある。
一方、東京電力福島第一原子力発電所事故後、電力需要に変化が見られるようになっている。こうした需要動向の変化を踏まえつつ、節電や、空調エネルギーのピークカットなどピーク対策の取組を進めることで電力の負荷平準化を図り、供給構造の効率化を進めていくことが必要である。
今後、電力システム改革により、電源構成が変化していく可能性があり、その場合、再生可能エネルギー等の新たな発電施設整備のための投資だけでなく、エネルギー源ごとに特徴の異なる発電時間帯や出力特性などに対応した送配電網の整備と調整電源や蓄電池などの系統安定化対策が必要となることから、大規模な投資を要する可能性がある。
なお、東京電力福島第一原子力発電所事故後の原子力発電所の停止を受け、それまで原子力が3割前後の比率を占めていた電源構成は、原子力発電の割合が急激に低下し、海外からの化石燃料への依存度が上昇して8割を超え、電力供給構造における海外からの化石燃料への依存度は、第一次石油ショック当時(76%の依存度を記録。その後、石油代替や原子力の利用などにより60%強まで改善。)よりも高くなっている。我が国の電気料金は、こうした化石燃料調達の増加に伴うコスト拡大を背景に、国際水準に照らして家庭用・産業用ともに高い状況が続いており、エネルギーコスト面での日本の国際競争力がより劣後する懸念が高まっている。東日本大震災後の電気料金上昇の最大の要因が発電用化石燃料費の大幅増大であったことを踏まえ、化石燃料調達コストの低減を官民挙げて実現していくことも極めて重要である。#24
今後の電気料金は、系統整備や系統安定化のための追加コストやFIT制度により将来にわたって累積的に積み上がる賦課金等が上乗せされる可能性があり、発電事業自体のコストは競争によって抑制されていくと考えられるが、その他の要因も含めて電気料金負担の抑制に努め、産業の国際競争力等の確保につなげていく必要がある。#25
そのため、電源構成の在り方については、追加的に発生する可能性のあるコストが国民生活や経済活動に大きな負担をかけることのないよう、バランスのとれた構造を追求していく必要がある。
また、大規模災害を想定した電力供給の強靱化の観点から、天然ガスのインフラ整備とあわせた地域における電源の分散化などについても推進する必要がある。

熱利用:コージェネレーションや再生可能エネルギー熱等の利用促進

我が国の最終エネルギー消費の現状においては、熱利用を中心とした非電力での用途が過半数を占めている。したがって、エネルギー利用効率を高めるためには、熱をより効率的に利用することが重要であり、そのための取組を強化することが必要になっている。熱の利用は、個人・家族の生活スタイルや地域の熱源の賦存の状況によって、様々な形態が考えられることから、生活スタイルや地域の実情に応じた、柔軟な対応が可能となる取組が重要である。
熱と電気を組み合わせて発生させるコージェネレーションは、熱電利用を同時に行うことによりエネルギーを最も効率的に活用することができる方法の一つである。また、通常は一定の余剰発電容量を抱えていることが多いことから、緊急時に電力供給不足をバックアップする役割も期待できる。
東日本大震災後、電気料金の上昇や省エネルギーへの取組が進む中で、コージェネレーションの導入が増加している。低炭素化の観点からも、建築物や工場、住宅等の単体での利用に加え、周辺を含めた地域単位での利用を推進することで、コージェネレーションの一層の導入拡大を図っていくことが必要である。
また、太陽熱、地中熱、雪氷熱、温泉熱、海水熱、河川熱、下水熱等の再生可能エネルギー熱をより効果的に活用していくことも、エネルギー需給構造をより効率化する上で効果的な取組となると考えられる。
こうした熱源がこれまで十分に活用されてこなかった背景には、利用するための設備導入コストが依然として高いという理由だけでなく、設備の供給力に比して地域における熱需要が少ないなど、需要と供給が必ずしも一致せず事業の採算が取れないことや、認知度が低く、こうした熱エネルギーの供給を担う事業者が十分に育っていないことも大きな要因であり、こうした熱が賦存する地域の特性を活かした利用の取組を進めていくことが重要である。

水素:“水素社会”の実現

将来の二次エネルギーでは、電気、熱に加え、水素が中心的役割を担うことが期待される。
水素は、取扱い時の安全性の確保が必要であるが、利便性やエネルギー効率が高く、また、利用段階で温室効果ガスの排出がなく、非常時対応にも効果を発揮することが期待されるなど、多くの優れた特徴を有している。
水素の導入に向けて、様々な要素技術の研究開発や実証事業が多くの主体によって取り組まれてきているが、水素を日常の生活や産業活動で利活用する社会、すなわち“水素社会”を実現していくためには、技術面、コスト面、制度面、インフラ面で未だ多くの課題が存在している。このため、2017年12月に策定した水素基本戦略(再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議決定)等に基づき、水素が、自国技術を活かした中長期的なエネルギー安全保障と温暖化対策の切り札となるよう、戦略的に制度やインフラ整備を進めるとともに、多様な技術開発や低コスト化を推進し、実現可能性の高い技術から社会に実装していく。

2030年に向けた政策対応

資源確保の推進

化石燃料への依存が引き続き高い状況の中で、不安定性を増す国際的なエネルギー需給構造に応じ、将来の変化も視野に入れつつ、資源の確保を進めることは重要な課題である。従来、1主要な資源を複数のものに分散させること、2それぞれの資源に関して、調達先の分散化や上流権益の確保、供給国との関係強化によって調達リスクを低下させることを通じて、資源の適切なポートフォリオを実現させ、安定的かつ経済的な資源確保を目指してきたところである。
一方、新興国の台頭等に伴い、我が国の交渉力の低下や国際需給の不安定化が顕在化しつつある中、従来の取組に加え、3柔軟かつ透明性の高い国際資源市場を形成していくことや、4アジアの旺盛な需要を取り込みつつ、そのエネルギーバリューチェーンに参画することで、アジア規模でエネルギーセキュリティを確保していく発想が重要となる。
従来から、米国、ロシア、サウジアラビア、UAE、カタール等を訪問した内閣総理大臣を筆頭に積極的に資源国との資源外交を展開し、日本企業が関与する米国LNGプロジェクトの輸出許可の獲得やUAEにおける日本の自主開発油田権益の確保などの成果を挙げてきており、引き続き安定的な資源確保を実現するための総合的な政策を推進する。

化石燃料の自主開発の促進と強靱な産業体制の確立

資源のほぼ全量を海外からの輸入に依存する我が国において、資源の安定的かつ低廉な調達を行うためには、国際市場から調達するのみならず、我が国企業が海外での資源権益を確保し、直接その操業に携わることで、生産物の引取りを行う、いわゆる自主開発の推進を図ることが極めて重要である。
1970年代の石油危機を経験して以降、我が国は石油をはじめとする化石燃料の自主開発政策を推進してきた。直近では、UAE・アブダビ首長国における陸上鉱区(2015年)及び海上鉱区(2018年)の権益獲得、北米におけるシェールオイル・ガス開発への参画、豪州におけるLNGプロジェクトの生産開始等、着実に成果を上げている。
近年は、資源開発における技術的難易度の高度化・複雑化に加え、中国・インド等、化石燃料需要の増加著しい国々の国営石油企業と我が国資源開発企業との競争がますます激化している。しかしながら、我が国資源開発企業の生産規模や財務基盤は欧米資源メジャーや新興国の国営石油企業と比べて小さく、国際競争力の強化が喫緊の課題となっている。一方、エネルギーミックスでは2030年においても化石燃料は一次エネルギー供給の約8割を占める見込みであり、エネルギー小国である我が国において、石油・天然ガス・石炭の安定供給の確保は引き続き重要な課題である。
こうした状況を踏まえれば、石油・天然ガス・石炭の安定供給に向け、上流権益の確保に、継続的に取り組んでいくとともに、諸外国との競争に負けない、強靱な産業体制を確立していくことが必要である。このため、石油・天然ガスの自主開発比率(2016年度は27%)を2030年に40%以上に引き上げること、石炭の自主開発比率(2016年度は61%)は2030年に60%を維持することを目指す。
また、中国、インド等新興国の台頭により今後ますます激化する資源獲得競争を勝ち抜くべく、国際競争力を持った上流開発企業の育成が急務である。具体的には、一定の生産規模、資源価格の変動に耐える適正かつ強靱な財務基盤及び優良な資産を保有し、需要開拓にも長けた「中核的企業」の創出を引き続き目指すとともに、上流産業の将来像及びそれに至る道筋について検討する。これらの実現に向け、2016年11月の法改正により企業買収支援等の機能が拡充された独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の民間主導の原則に基づくリスクマネー供給を通じた資産・企業の強靱化、AI・IoT等を応用した革新的な資源開発技術の獲得支援、政策金融等を活用した上流及び中下流の展開支援等に取り組む。

資源外交の多角的展開等による資源調達環境の基盤強化

これまで我が国は、内閣総理大臣を筆頭に積極的に資源国との資源外交を展開し、UAEにおける日本の自主開発油田権益の確保や、日本企業が関与する米国LNGプロジェクトの輸出許可の獲得などの成果を挙げてきた。資源の安定供給確保に向け、石油におけるサウジアラビア、UAE、天然ガスにおける豪州、カタール、石炭における豪州、インドネシア、金属鉱物におけるチリ、ペルー、豪州、カナダ、南アフリカ、LPガスにおける米国、サウジアラビアなど、我が国に資源を供給している国との関係を、単に資源の取引をしているだけのものとはせず、多様な経済取引、国民各層における多面的な人的交流を活発化する等、包括的かつ互恵的な二国間関係として発展させていくための総合的な外交的取組を推進していくことが引き続き重要である。一方、資源をめぐる国際情勢は近年目まぐるしく変化しており、我が国の資源外交もより総合的、多角的かつ戦略的に展開していく必要がある。
伝統的な資源国においては、例えば石油・天然ガスの一大供給地域である中東では、2014年以降の原油価格低迷を受けて国家財政が逼迫しており、原油そのものだけでなく、より付加価値の高い石油製品を今後需要の急増が見込まれるアジアに販売することで収益を確保しようとする動きや、エネルギー産業に依存しない経済体制の構築に取り組む動きが顕著にみられる。また、需要国側では、「パリ協定」も踏まえた世界的な環境意識の高まりから、エネルギーの低炭素化が課題となっており、その中で発電燃料として最も炭素排出の少ないLNGの調達に関し、柔軟かつ透明性の高い国際市場の確立が求められている。今後、資源需要の減少が見込まれる我が国において、引き続き化石燃料の安定供給を確保していくためには、こうした資源国・需要国双方のニーズを捉えながら、世界全体、特に今後の成長エンジンであるアジアのエネルギー安全保障に貢献し、もって我が国の化石燃料の安定供給を実現していくことが重要である。
このため、資源供給国・資源需要国双方に対し、こうした包括的かつ互恵的な二国間関係の構築に向けた取組の中で、首脳外交の戦略的活用を含め閣僚等による資源外交を積極的に展開し、強い信頼関係に基づいた二国間関係の上で、資源の取引が安定的に行われる環境を整備していく。
具体的には、資源供給国に対しては、1上流分野にとどまらず、石油精製、石油化学、LNG液化等の中下流分野におけるビジネス機会の創出や、アジア等第三国への需要開拓における協力に加え、2水素やIoTなど新たな技術の導入による産業多角化・低炭素化への貢献、資源需要国に対しては、1特にアジアにおいて急成長する資源需要に対応するためのインフラ整備への支援及び人材育成や、2マルチの枠組みを活用した国際ルール・慣行の醸成に向けた需要国間連携等を実施していく。
また、シーレーンの安定性向上のためには、シーレーンに関わる国・地域との関係強化が重要であり、アジア海賊対策地域協力協定やマラッカ・シンガポール海峡の航行の安全に関する「協力メカニズム」の運用を基礎としつつ、各国海上保安機関に対する各種協力や、港湾などのインフラ、船舶運航管理体制の整備支援、沿岸部における災害時の救助・復旧支援体制の強化などを進めるとともに、海洋を含む安全保障分野での日米協力を深めていくことで、商用船舶の航行の安全性・安定性を確保するための取組を強化していく。
なお、近年存在感を増している新たな資源供給国との関係も忘れてはならない。シェール革命により化石燃料の国際供給構造に大きな影響を与えている米国、豊富な資源ポテンシャルを有し地理的にも近接するロシア、LNGや金属鉱物などの「最後のフロンティア」として期待されているアフリカなどからの供給の確保は、我が国の供給源の多角化に寄与し、エネルギー安全保障をますます強固にするものであり、こうした新たな資源供給国とのエネルギー分野・非エネルギー分野での協力を進めていく。

柔軟かつ透明性の高い国際取引市場の確立による資源調達条件の改善等

資源調達条件の改善については、個別の契約レベルでは、基本的に民間企業間で調達条件が決定されることになる。国としては、価格決定方式や仕向地条項など取引条件の多様化に向けた議論が行われる環境整備を進めていくなど、資源の安定的かつ安価な調達に向けた戦略的な取組を支援していくことが必要である。
天然ガス市場は、これまで域内や近隣国のガス田とパイプライン網が各々整備された欧州市場・北米市場と、LNGでの運搬と長期契約を中心としたアジア市場とで3つに分断され、公平で柔軟な裁定取引を可能とする国際的な取引市場が十分に確立されていなかった。
こうした中、需要面では、急成長する中国・インドをはじめとしたアジア諸国が急速に今後のLNG需要を牽引すると見られており、欧州や中東、中南米においても一定の需要拡大が見込まれるとともに、供給面では、米国や豪州がLNG供給国としての存在感を強めているなど、LNGをめぐる世界の市場環境は変革期にある。
現在、世界最大のLNG輸入国である我が国でも電力・ガス市場の完全自由化が始まるなど、より柔軟なLNG調達を志向する環境が醸成されており、柔軟かつ透明性の高いLNG取引市場確立を我が国が主導する好機にある。
我が国としては、柔軟かつ透明性の高い国際LNG市場の構築に向け、2016年5月に発表した「LNG市場戦略」に基づき、1LNG取引の流動性の向上、2需給を反映したLNG価格指標の確立、3オープンかつ十分なインフラの整備、に引き続き取り組んでいく。
具体的には、仕向地制限をはじめとする取引の流動性を阻害する商慣習の弾力化や、新規プレーヤーの参加促進を通じたLNG取引の活性化により市場の流動性を向上させるとともに、上流開発・液化案件の立ち上がりを促し、我が国含めたアジア規模のLNGサプライチェーンへの我が国企業の参画を促進するため、潜在的なアジア需要開拓に向けた資金面や人材育成等の支援に取り組む。
また、LNGバンカリング等の新たな需要の開拓や、価格報告機関による価格評価の信頼性向上、先物取引の活性化、最適な取引を促すための価格等の情報発信、LNG受入基地等のインフラのアクセス向上を一層進めていく。
また、柔軟かつ透明性の高い国際LNG市場の実現には、他国を含めた官民連携が重要となる。このため、LNG産消会議やG7、G20、APEC、EAS等の国際会議に加え、2017年に締結したEUとの協力覚書に基づくワークショップなど、国際的な対話の機会を数多く確保することで、産消国間の意思疎通の円滑化、消費国間の連携強化などを進めていく。
具体的な取組の一つとして、LNG産消会議2017(2017年10月)において、経済産業大臣から、アジアでのLNG需要拡大に向け、LNGの上流・中流・下流のプロジェクトに対する官民で100億ドルのファイナンス供給、及び5年間で500人の人材育成支援の構想を発表した。これらのイニシアティブに基づく取組を、民間企業・関係機関とも連携して今後着実に進めるとともに、新たな国・地域との連携関係も結びながら、柔軟かつ透明性の高い国際LNG市場を構築していく。
石炭市場においては、近年、中国・インドの輸入量増加、石炭メジャーによる上流権益の寡占化の進展などにより、世界の石炭市場における日本の輸入国としての相対的地位は低下してきている。今後とも石炭の経済合理的で安定的な調達を確保するため、短期・スポット取引の拡大、石炭調達の柔軟性確保や交渉力の拡大により、需給動向を適切に反映した価格の形成が行われるよう、民間企業や関係機関と連携し課題解決に取り組んでいく。#26

国内の海洋等におけるエネルギー・鉱物資源の開発の促進

世界で第6位の広さを誇る我が国の管轄海域内には、海洋由来のエネルギー・鉱物資源の賦存が確認されている。これらの国産資源の開発が進めば、地政学リスクに左右されず安定的なエネルギー・鉱物資源の供給が可能となることから、国内資源開発の推進は、エネルギー安全保障の観点から引き続き重要である。また、関係省庁・機関と民間企業が連携して海洋開発を促進することで、関連する産業の振興も期待される。このため、鉱業権者の新陳代謝を進めるなど、国内外を問わず意欲・能力ある適切な開発事業者が民間主導の資源開発に取り組めるよう、事業環境を整備する。なお、国産資源の開発においては、環境面での影響評価についても確実に取り組む。
2018年5月には、海洋基本法に基づく「海洋基本計画」(2018年5月15日閣議決定)の見直しが行われ、海洋エネルギー・鉱物資源の開発については新しい政府目標が定められた。
今後は、「海洋基本計画」を踏まえ、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の見直しを行い、海洋エネルギー・鉱物資源の開発計画を明確にする。

メタンハイドレート

日本周辺海域に相当量の賦存が期待されるメタンハイドレートについて、我が国のエネルギー安定供給に資する重要なエネルギー資源として、2023年から2027年の間に、民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指して、技術開発を行う。
主に太平洋側で存在が確認されている砂層型メタンハイドレートについては、2013年3月に、国立研究開発法人海洋研究開発機構が有する地球深部探査船「ちきゅう」を活用して、世界で初めて海域において減圧法によるガス生産実験を実施し、2017年4月から6月にかけて第2回試験を実施した。引き続き、これまでの研究成果を適切に評価した上で、長期間の安定生産を実現するための生産技術の確立、経済性を担保するための資源量の把握、商業化を睨んだ複数坑井での生産システムの開発等について取り組む。
また、日本海を中心に存在が確認されている表層型メタンハイドレートについては、資源量把握に向けて2013年度以降、3年間で、必要となる広域的な分布調査等を行った。現在、回収・生産技術の調査研究に着手しており、広く技術的な可能性に機会を与えながら、有望な手法が見つかった場合には研究対象を絞り込み、商業化に向けた更なる技術開発を推進する。

石油・天然ガス

我が国周辺海域の探査実績の少ない海域において、2008年に導入した三次元物理探査船「資源」を最大限活用し、2018年度まで概ね毎年6,000平方キロメートルの物理探査を実施した。2019年度以降も、引き続き、三次元物理探査船を使用した国主導での探査(10年間で概ね50,000平方キロメートル)を機動的に実施する。その探査結果を踏まえ、有望海域での試掘を機動的に実施し、得られた地質データ等の成果を民間に引き継ぐことで探鉱活動の促進を図る。この際、より効率的・効果的な探査を実現し市場での競争力を高めるため、三次元物理探査船の更新による世界水準の機器・技術の導入も含めた体制構築を進める。また、有望な構造への試掘機会の増加や、地域に根ざした炭化水素資源の活用のあり方についての検討を行う。

金属鉱物

海底熱水鉱床については、比較的近海かつ浅海に賦存しているため開発に有利と期待されている。2013年度から2017年度までの取組において、沖縄海域で合計6つの鉱床を発見するとともに、2017年度には、海底約1,600mの海底熱水鉱床を海水とともに連続的に洋上に揚げる世界初の採鉱・揚鉱パイロット試験を実施した。引き続き、国際情勢をにらみつつ、「海洋基本計画」に従い、民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう、資源量の把握、生産技術の開発、環境影響評価手法の高度化、経済性の評価及び法制度のあり方の検討を行うこととする。
南鳥島周辺海域に賦存し、EV・電化を背景として需要の増大が見込まれるコバルトやニッケル等の複数の重要なレアメタルを含むコバルトリッチクラストについては、JOGMECが国際海底機構(ISA)と2014年1月に探査業務契約を締結し、南鳥島南東沖の公海域に位置するコバルトリッチクラストの排他的探査権を獲得した。今後、ISAの定める探査規則に沿って有望な探査鉱区の絞り込みを2023年までに行うとともに、海底熱水鉱床の開発で培った基盤技術も活用しつつ、採鉱、揚鉱等の生産技術の検討を行う。
ハワイ沖に探査鉱区を有するマンガン団塊についても、引き続き調査を推進する。南鳥島周辺海域で賦存が確認されているレアアース泥については、2013年から2015年にかけて、資源エネルギー庁において、将来の資源ポテンシャルを検討するため、賦存状況調査や関連する技術分野の調査を行い、2016年に「レアアース堆積物の資源ポテンシャル報告書」を取りまとめているが、今後、将来の開発・生産を念頭に、まずは、各府省連携の推進体制の下で、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的深海資源調査技術」において、賦存量の調査・分析を行うとともに、広く海洋鉱物資源に活用可能な水深2,000m以深の海洋資源調査技術、生産技術等の開発・実証の中で取組を進める。

鉱物資源の安定供給確保

国内外での自動車の電動化や再生可能エネルギー・新エネ機器の普及により、様々な鉱物の需要の増加が見込まれる一方、中国をはじめとする新興国企業による資源国への進出が活発化する中、我が国において必要な鉱物資源の安定供給確保に関する支援策を一層拡充していく必要がある。JOGMECによるリスクマネー供給機能や、開発・企業買収に対する支援のあり方について検討の上、必要な措置を講ずるとともに、コバルト等が偏在するアフリカへの資源外交の強化等に取り組み、総力を挙げて鉱物資源の安定供給の確保の強化に取り組む。
金属鉱物の安定供給確保のためには、供給源の多角化に加え、使用済製品から金属鉱物の回収を着実に進めるとともに、回収技術が確立されていない鉱種についても積極的に技術開発を進めていくことが重要である。また、カントリーリスクの高い地域に偏在する金属鉱物については、代替材料開発や省資源に向けた取組を進めていく。我が国産業に不可欠な金属鉱物について、急激な価格高騰や需給のひっ迫に際しても安定供給が確保されるよう、このような取組と上流開発を併せて、鉱物資源(ベースメタル)の自給率(2016年度は50%)を2030年に80%以上に引き上げることを目指す。また、一時的な供給障害に対応するための金属鉱産物の国家備蓄について、国内における需給動向を見極めつつ、必要とされるレアメタル備蓄を着実に進め、供給途絶等の緊急時に需要家のニーズに応じて機動的に放出等できるよう備蓄体制の整備を進めていく。

徹底した省エネルギー社会の実現

我が国のエネルギー消費効率は1970年代の石油危機以降、官民の努力により4割改善し、世界的にも最高水準にある。#27石油危機を契機として1979年に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」では、産業、業務、運輸の各部門においてエネルギーの使用が多い事業者に対し、毎年度、省エネルギー対策の取組状況やエネルギー消費効率の改善状況を政府に報告することを義務付けるなど、省エネルギーの取組を促す枠組みを構築してきた。また、業務・家庭部門においては、エネルギー消費機器等を対象とするトップランナー制度により、各機器等の製造事業者等に対してエネルギー消費効率の向上を促している。これらの省エネ法に基づく措置と、部門ごとに効果的な支援策を一体的に講ずることで、より合理的なエネルギー需給構造の実現と温室効果ガスの排出抑制を進めていく。
また、2013年に省エネ法が改正され、2014年4月から需要サイドにおける電力需要の平準化に資する取組を省エネルギーの評価において勘案する措置が講じられるようになったところであり、事業者の取組を通じて、電力需要の平準化が進んでいくものと考えられる。さらに、電力消費の一層の効率化が期待される次世代パワーエレクトロニクス機器を始めとした技術革新の進展により、より効率的なエネルギー利用や、各エネルギー源の利用用途の拡大が可能となる。
加えて、電力システム改革等の構造改革によって、供給量だけでなく需要量を管理することを含め、様々な主体がエネルギー需給構造に参入することで、今後、エネルギーの利用に関して多様な選択肢が需要家に対して示される環境が整っていくことになる。
多様な選択肢が提供される市場では、需要家が合理的な判断に基づいて自由に選択する消費活動を通じて、供給構造やエネルギー源の構成に変動を生じさせると考えられる。
こうした新たなエネルギー需給構造の構築を加速していくための取組を強化していくことが必要である。
これまでの努力の結果、エネルギーを使用する個々の事業者の取組は相当程度進展した。また、機器についても、個々に最適な設計を追求することで、エネルギー消費性能の向上が進んだ。今後、更なる省エネルギーに向けては、これまでの取組に加え、AI・IoTや、ビッグデータ等も活用し、複数の事業者あるいは機器が互いに連携等することで実現できる新たな省エネルギーの取組を促進していく必要がある。#28
また、省エネルギーを進めるに当たり、エネルギーの使用実態に関するデータの更なる活用が重要である。IoTやEMSの活用等により、各部門で各種データが低コストかつオープンに取得・利用できる基盤構築を進め、様々な省エネルギーサービスが可能となる環境を整備する。その際、行政の保有する関連データについても可能な限りオープン化を進める。#29

各部門における省エネルギーの強化

業務・家庭部門における省エネルギーの強化

業務・家庭部門において高い省エネルギー効果が期待されるのは、建築物・住宅の省エネルギー化である。特に、熱の出入りが大きい開口部や壁等への高性能の建築材料の導入は有効であるが、エネルギーを消費する機械器具を対象としたトップランナー制度においてはこれまで対象外であった。トップランナー制度は、1998年の省エネ法の改正により導入された制度で、家電や自動車等の品目を指定し、その時点で最もエネルギー消費効率が優れた製品を参考に目標となる基準を定め、製造事業者・輸入業者に対し、販売する製品が目標年度までに当該基準を満たすことを求めるものである。これまで、トップランナー制度の下、例えば、2016年度時点で、エアコンは2001年度比28%、テレビは2001年度比71%、家庭用冷蔵庫は2001年度比252%効率が向上し、業務・家庭部門の省エネルギーの取組が進展している。
こうした省エネルギーの取組を建築物・住宅の分野でも推進すべく、住宅・ビルや他の機器等のエネルギーの消費効率の向上に資する製品を新たにトップランナー制度の対象に追加することとし、2013年、省エネ法を改正した。これにより、建築材料がトップランナー制度の対象に加わり、これまでに断熱材、窓、サッシの基準が示されたところである。
また、エネルギー消費機器についても、新たに、業務用冷蔵庫・冷凍庫、複合機、プリンター、電気温水機器(ヒートポンプ給湯器)及びLED電球を対象に追加した。高効率照明(例:LED照明、有機EL照明)については、2020年までにフローで100%、2030年までにストックで100%の普及を目指す。そのため、照明については、現在は蛍光灯とLEDで別々に目標が設定されているが、共通のエネルギー消費効率の目標を設定する。
家電等のエネルギー消費機器については、要素部品や制御システムの高性能化等により、これまで大幅な省エネルギーが図られてきたが、昨今は更なる効率向上を目指して、AI・IoTや、ビッグデータの活用や機器間の連携等の新たな技術の導入が進められている。トップランナー制度において、従来の技術に加えてこのような取組も促進できるよう、適切な制度設計を検討していく。
さらに、省エネルギー性能の低い既存建築物・住宅の改修・建て替えや、省エネルギー性能等も含めた総合的な環境性能に関する評価・表示制度の充実・普及などの省エネルギー対策を促進する。また、新築の建築物・住宅の高断熱化と省エネルギー機器の導入を促すとともに、より高い省エネルギー性能を有する低炭素認定建築物の普及促進を図る。
政府においては、公共建築物のほか、住宅やオフィスビル、病院などの建築物において、高断熱・高気密化や高効率空調機、全熱交換器、人感センサー付LED照明等の省エネルギー技術の導入により、ネット・ゼロ・エネルギーの実現を目指す取組を、これまでに全国で約2.8万件(2017年度末累積)支援してきたところである。
今後は、将来の建築物の省エネルギー性能の標準とすることを見据え、非住宅建築物については、2020年までに国を含めた新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現することを目指す。また、住宅については、2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す。なお、その際、ZEBやZEHに不可欠な再生可能エネルギーの導入促進に係る施策との協調に留意しつつ、建材トップランナー制度も活用しながら、高性能建材の価格低減に向けた普及促進策を講ずることとする。
さらに、こうした環境整備を進めつつ、規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化することとしている。これを受けて大規模な非住宅建築物については、2015年に制定された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」に基づき、義務化が開始されたところである。
加えて、ビッグデータ分析等を活用して行動変容を促す情報発信(ナッジ)等による国民運動の展開や省エネガイドラインの整備により、低炭素型製品・サービス・ライフスタイルのマーケット拡大を図り、生活の質を向上させつつ省エネルギーを一層推進するライフスタイルの普及を進める。

運輸部門における多様な省エネルギー対策の推進

運輸部門については、自動車に係るエネルギーの消費がその大部分を占めており、その省エネルギー化が重要である。自動車については、トップランナー制度に基づく燃費基準の下、これまで大幅な燃費の向上が図られたが、更なる省エネルギー化に向けて、次期乗用車燃費基準の策定を進めるとともに、次世代自動車の新車販売に占める割合を2030年までに5割から7割とすることを目指すため、自動車の電動化、自動化、サービス化等の大きな環境変化を踏まえた、世界最先端の制度環境・社会インフラの整備や次世代電池をはじめとした基盤技術開発の抜本的強化等に向けた戦略を定め、官民一体でこれを進めるなど自動車単体の対策を進める。また、省エネルギーに資する環状道路等幹線道路ネットワークの整備や高度道路交通システム(ITS)の推進などの交通流対策等を含めた総合的取組を進めていく。#30
また、自動車の次にエネルギー消費量の多い海上輸送を含めた運輸部門の先進的な省エネルギー化や物流効率化のための技術開発及び実証事業を行い、内航海運事業者の省エネルギー対策の評価制度を確立するなど、効果的な省エネルギー対策の普及を図る。
さらに、貨物輸送に係るエネルギー消費を効率化するため、従来から省エネ法で取組を求めてきた荷主や貨物輸送事業者に加え、荷受け側にも可能な努力を促す。また、これらの主体間の連携を促進することによって、物流拠点の集約化や共同輸配送等の取組を強化する。さらに、インターネット通信販売市場の拡大に伴う小口輸送や再配達の増加等に対応するため、省エネ法の荷主規制のあり方を見直し、インターネット通信販売等の物流に関わる主体の取組や連携の強化を一層促す。
加えて、車両や船舶等の省エネルギー化のみならず、鉄道駅や港湾、空港、道路などの施設においても、省エネルギー機器の導入や照明のLED化を通じた省エネルギー化を目指す。

産業部門等における省エネルギーの加速

1970年代の石油危機以降、エネルギー消費効率は4割改善し、既に高いレベルの省エネルギーを達成している。例えば、住宅メーカーにおいては、モデルとなる自社工場において、新工法の開発、加工工程における運転効率化等の様々な取組を行うとともに、その成果を他の工場にも展開した結果、2012年度において2005年度比34%の省エネルギーを実現した。
一方で、近年は改善が足踏みの状況となっており、このように既に高いレベルの省エネルギーを達成している産業部門を中心として、省エネルギーを更に進めるためには、省エネルギー効果の高い設備への更新を強化する必要がある。
その際、省エネ法による規制と補助金等の支援策の両面でこれを促していく必要があるが、個社単位の取組が相当程度進展したことを踏まえると、今後は、複数の事業者の連携を促進することが重要となる。
#31しかしながら、省エネ法は特定事業者等から毎年度報告されるエネルギーの使用状況等の評価を個社単位で行うことを原則としているため、複数事業者が連携して省エネルギーの取組を行った場合、全体では省エネルギーとなっているにも関わらず、個社単位で見ると増エネ等となる事業者が存在するケースもある。今後、支援策も講じながら、連携による省エネルギーを促進するに当たり、省エネ法において、事業者間連携による省エネルギーの適切な評価ができるよう制度の整備を進める。また、資本関係のあるグループ会社等でエネルギー管理が一体的に行われている場合には、省エネ法においても個社単位に拘らず、一体での取り扱いができるよう、制度を見直す。なお、これらの制度整備については、運輸部門についても同様に行う。
支援策については、省エネルギー設備投資に対する支援や中小企業等へのリース手法を活用した省エネルギー投資に対する支援など多様な施策を用意することで、企業自ら最善の省エネルギー対策を進めていく環境を整備する。また、省エネルギーのノウハウが必ずしも十分にない中小企業等の省エネルギーの取組を支援するため、省エネルギー余地の診断から対策の立案・実行・レビューまで一貫してサポートできる体制の整備を引き続き進める。
省エネ法では、エネルギー消費効率の年1%改善を努力目標としてきたが、これに加え、業種別にエネルギー消費原単位等の目標を設定する産業トップランナー制度(ベンチマーク制度)の導入を進めてきた。同制度は既に12業種16分野に導入されたが、エネルギー消費で産業・業務部門の7割をカバーすることを目指し、引き続き導入業種の拡大を進める。#32また、特定事業者からの報告に基づいて事業者をクラス分けし、クラスに応じた対応を行う事業者クラス分け評価制度については、改善状況が芳しくない事業者への対応の強化やクラス分けの細分化等、更にメリハリのある対応を検討する。
産業部門をはじめ各部門において、これまでの延長線上にない抜本的な省エネルギーを実現するには、革新的な省エネルギー技術の開発が重要である。#33業種横断的に、大幅な省エネルギーを実現する革新的な技術の開発を促進していく。加えて、スマートなエネルギー使用の取組を促していくため、FEMSなどのエネルギーマネジメントシステムの導入を促す。また、エネルギーマネジメントの手順を定めたISO50001の活用を促進する。

エネルギー供給の効率化を促進するディマンドリスポンスの活用

これまでピーク時間帯には調整電源によって供給量を確保することで対応してきたが、供給者側ではなく需要家側で需要量を抑制することで需給バランスを確保することが可能となる。こうした供給量に応じて需要量を抑制するディマンドリスポンスの第一歩として、時間帯に対応して有意な電気料金の価格差を設けることで、需要家が電力の消費パターンを変化させる方法がある。しかし、既に産業界は積極的に活用し、操業体制を夜間にシフトさせるなどの取組を進めているが、一般の消費者にはまだ十分に浸透しているとは言い難い。#34
そのため、2020年代早期に、スマートメーターを全世帯・全事業所に導入するとともに、電力システム改革による小売事業の自由化によって、より効果のある多様な電気料金設定が行われることで、ピーク時間帯の電力需要を有意に抑制することが可能となる環境を実現する。
さらに、ディマンドリスポンスにおける次の段階として、需要量の抑制を定量的に管理する方法が考えられている。こうした方法は、電力会社と大口需要家の間での需給調整契約という形で従来から存在しているが、こうした取組を欧米のように社会に広く定着させるためには、当該方法の効果や価値等について、電力会社等の関係者の間で認識を共有することが必要である。
このため、複数の需要家のネガワット(節電容量)を束ねて取引するエネルギー利用情報管理運営者(アグリゲーター)を介すなどして、小売事業者や送配電事業者の要請に応じて需要家が需要抑制を行い、その対価として小売事業者や送配電事業者が需要家に報酬を支払う仕組みを確立し、その円滑な普及拡大に取り組んでいく。加えて、需要をシフトすることなどにより需要量を増やすディマンドリスポンスが活用される環境を整備する。具体的には、需要制御量を評価する方法やディマンドリスポンスの取引に必要となる事項などを定めるガイドラインなどを、各種制度や市場の発展に応じて改正していく。
さらに、需要量の抑制によって生じるネガワットの取引を円滑化することで、需要家側での需要量の抑制をより効果的に行うことが可能となることから、電力システム改革を着実に進めることによって、こうしたディマンドリスポンスやバーチャルパワープラントを使った新たな事業形態(エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス)を導入しやすい環境を整備し、需要を管理することで、発電容量を合理的な規模に維持し、安定供給を実現する。
また、AI・IoTといった近年の技術革新は、ディマンドリスポンス等による分散型の新たな電力システムの構築に貢献するにとどまらず、需給予測の高度化や発電所運転の最適化といった可能性も秘める。こうした新技術のエネルギー分野での実装を進めていく。
これらの取組やEVを始めとする他のビジネスでの活用には、需要家の電力使用に関する情報など需要家情報の取扱いが必要となることから、個人情報保護に十分な配慮を行った上で、需要家情報の活用を進めていく。#35
さらに、こうしたディマンドリスポンス等を実現する情報技術の革新の反面、サイバー攻撃の多様化・巧妙化も進み、電力の安定供給においても大きな脅威となりつつある。このため、業界大での情報共有・分析の強化や、官民双方での国際的な連携強化を進め、電力分野のサイバーセキュリティの向上を図る。#36

再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組

再生可能エネルギーをめぐる状況は、大きく変貌している。世界的には、発電コストが急速に低減し、他の電源と比べてもコスト競争力のある電源となってきており、導入量が急増している。我が国においても、2012年7月のFIT制度の導入以降、急速に再生可能エネルギーの導入が進んだが、一方でその発電コストは国際水準と比較して依然高い状況にあり、国民負担の増大をもたらしている#37エネルギーミックスにおいては、2030年度の導入水準(22〜24%)を達成する場合のFIT制度における買取費用総額を3.7〜4兆円程度と見込んでいるが、2018年度の買取費用総額は既に3.1兆円程度に達すると想定されており、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて国民負担の抑制が待ったなしの課題となっている#38。また、再生可能エネルギーの導入拡大が進むにつれ、従来の系統運用の下で系統制約が顕在化しており、再生可能エネルギーの出力変動を調整するための調整力の確保も含め、再生可能エネルギーを電力系統へ受け入れるコストも増大している。さらに、地域との共生や発電事業終了後の設備廃棄に関する地元の懸念に加え、小規模電源を中心に将来的な再投資が滞るのではないかといった長期安定的な発電に対する懸念も明らかとなってきている。#39
このため、FIT制度の適切な運用と自立化を促すための制度の在り方の検討、系統制約の克服、調整力の確保、規制のリバランス、低コスト化等の研究開発、廃棄時や再投資のための対応などを着実に進める。引き続き、再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議を政府の司令塔機能として活用するとともに、関係府省庁間の連携を促進する。
他の電源と比較して競争力ある水準までのコスト低減とFIT制度からの自立化を図り、日本のエネルギー供給の一翼を担う長期安定的な主力電源として持続可能なものとなるよう、円滑な大量導入に向けた取組を引き続き積極的に推進していく。

急速なコストダウンが見込まれる太陽光・風力の主力電源化に向けた取組

太陽光・風力については、世界的に低コストで導入が拡大していることを踏まえ、我が国においても、今後、技術革新等により、一層のコスト低減を進めて他の電源と比較して遜色ない競争力のあるコスト水準となること、蓄電池等との組み合わせにより長期安定的な電源として成熟していくことが期待される。こうした課題を踏まえつつ、住宅用や小規模の太陽光は自家消費やエネルギーの地産地消を行う分散型電源として活用し、その他はコスト競争力が特に高く、市場売電を想定した大型電源として活用していくことを目指して取組を進める。

太陽光

将来的に大型電源として活用を進めるため、FIT制度における中長期的な価格目標(事業用太陽光発電の発電コストの水準が、2030年に7円/kWhとなることを目指す等)の実現を目指し、さらなるコスト低減を進めていくことが必要である。発電コストの低減に向けて、革新的な研究開発を推進するとともに、競争を通じてコスト低下を促す入札制度の活用や、中長期的な価格目標に向けてトップランナー方式で調達価格を低下させていく等、FIT制度の適切な運用を図っていく。同時に、地域と共生する再生利用困難な荒廃農地の活用等、ポテンシャルの有効活用に取り組む。
また、自家消費やエネルギーの地産地消を行う分散型電源としての活用については、遊休地や学校、工場の屋根の活用など、地域で小規模の太陽光発電の普及が進んでおり、引き続き、こうした取組を支援していく。特に住宅用太陽光発電については、2019年以降、順次、FIT制度の買取期間を終えるところ、FIT制度からの自立に向けた市場環境を醸成するためにも、買取期間の終了とその後に自家消費や小売電気事業者等に相対契約等で余剰電力を売電するといった選択肢があること等について、官民一体となって広報・周知を徹底する。また、自家消費に資する蓄電池の自立的普及に向けた価格低減を進める。
さらに、長期安定的な電源としていくため、地域との共生を図りつつ、将来大量に発生する太陽光パネルの廃棄問題について、法制度の整備も含めた検討を行い、使用済みパネルの適正な廃棄・処理が確実に実施されるよう対応するとともに、小規模な事業用太陽光発電の適切なメンテナンスを確保し、再投資を促す。

風力

風力発電設備の導入に当たっては、地元との調整や環境アセスメントのほか、立地のための各種規制・制約への対応が必要となり、FIT制度の下でも、これらの対応の必要性が小さい太陽光発電設備の導入と比べて導入に時間がかかっている。また、再生可能エネルギーの導入拡大が進むにつれ、現在の送電網の容量が利用され、接続余地が狭くなっていくという問題も存在する。さらに、海外では発電コストが大きく低減する中で、我が国の発電コストは依然高く、FIT制度における中長期的な価格目標(浮体式洋上風力発電を除く風力発電の発電コストの水準が、2030年までに8~9円/kWhとなることを目指す等)の実現を目指して、機器費・工事費・系統接続費等の大幅なコスト低減を図っていく必要がある。
将来的に大型電源として活用するため、地域との共生を図りつつ、風力発電設備の導入をより短期間で円滑に実現できるよう、環境アセスメントの迅速化や、規模要件の見直しや参考項目の絞り込みといった論点も踏まえた必要な対策の検討、電気事業法上の安全規制の合理化等の必要に応じた取組を引き続き進める。
また、大幅なコスト低減に向けて、低コスト化に向けた技術開発やFIT制度を活用した競争や効率化の促進等に取り組む。
陸上風力については、北海道や東北をはじめとする風力発電の適地を最大限効率的に活用するため、農林地と調和・共生のとれた活用を目指し、必要に応じて更なる規制・制度の合理化に向けた取組を行う。
洋上風力については、世界的にはコストの低減と導入拡大が急速に進んでいる。陸上風力の導入可能な適地が限定的な我が国において、洋上風力発電の導入拡大は不可欠である。欧州では、海域利用のルール整備とともに入札制度を導入することにより、この数年間で急速なコスト低減が進んでいる。欧州の洋上風力発電に関する取組も参考にしつつ、地域との共生を図る海域利用のルール整備や系統制約、基地港湾への対応、関連手続きの迅速化と価格入札も組み合わせた洋上風力発電の導入促進策を講じていく。また、着床式洋上風力の低コスト化に向けた実証や開発支援を行うとともに、浮体式洋上風力についても、技術の開発や実証を通じた安全性・信頼性・経済性の評価を行う。

地域との共生を図りつつ緩やかに自立化に向かう地熱・水力・バイオマスの主力電源化に向けた取組

地域に賦存する地下の蒸気・熱水を活用した地熱発電、小河川や農業用水などを活用した中小水力、地域に賦存する木質を始めとしたバイオマス、太陽熱・地中熱等の再生可能エネルギー熱等は、コスト低減に資する取組を進めることで、コスト面でもバランスのとれた分散型エネルギーとして重要な役割を果たす可能性がある。また、地域に密着したエネルギー源であることから、自治体や地域企業や住民を始め、各地域が主体となって導入が進んでいくことが期待される。
加えて、再生可能エネルギーを用いた分散型エネルギーシステムの構築は、地域に新しい産業を起こし、地域活性化につながるものであるとともに、緊急時に大規模電源などからの供給に困難が生じた場合でも、地域において一定のエネルギー供給を確保することに貢献するものである。
このため、こうした電源については、農林業などと合わせて多面的に推進することで地域との共生を図りつつ、コスト低減に向けた取組を進めることで、緩やかに自立化を実現しながら、長期安定的な電源の一翼を担う存在となっていくことが期待される。
これらについては、小規模な再生可能エネルギー源を組み合わせた分散型エネルギーシステムの構築を加速していくよう、個人や小規模事業者も参加しやすくするための支援を行っていく。また、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)」等の積極的な活用を図り、地域の活性化に資する再生可能エネルギーの導入を推し進める。
さらに、分散型エネルギーシステム内で余剰となった蓄電池の電力も含めた電力を系統に供給することを弾力的に認めるため、逆潮流に関わる運用を柔軟化し、このために必要な系統安定化のための技術革新を進める。

地熱

地熱発電の開発には、時間とコストがかかり、地熱資源の有望地域が一部地域に偏在していることに伴う系統制約も顕在化していることや、風力発電と同様に、地元との調整や環境アセスメントのほか、立地のための各種規制・制約への対応等の課題がある。地熱発電のベースロード電源としての価値を活かしつつ、中長期的には競争力ある自立化した電源として市場売電を中心に活用を進めていくためには、こうした課題を克服していく必要がある。
このため、地熱発電設備の導入をより短期間・低コストで、かつ円滑に実現できるよう、地域の理解促進、投資リスクの軽減、掘削成功率や掘削効率の向上に資する技術開発、環境アセスメントの迅速化の取組を進め、さらには、電気事業法上の安全規制を含む規制・制度の更なる合理化に向けた取組等を必要に応じて行う。
さらに、地熱発電は、発電後の熱水利用など、エネルギーの多段階利用も期待される。例えば、地熱発電所が安定的に電気を供給するとともに、蒸気で作った温水が近隣のホテルや農業用ビニールハウスなどで活用され、地域のエネルギー供給の安定化を支える役割を担っている。こうした利点を踏まえつつ、中長期的な視点を踏まえ、地域と共生した持続可能な開発を引き続き進めるべく、立地のための調整を円滑化するとともに、地熱資源を適切に管理するための制度整備といった取組について検討する。
また、我が国企業の地熱発電設備の世界シェアは、約7割を獲得しているところ、脱炭素化技術の海外展開の観点から、地熱発電の海外展開の促進に向けた支援策のあり方について検討する。

水力

水力発電は安定した出力を維持することが可能なクリーンな電源として重要であるが、開発リスクが高く、新規地点の開拓が難しいことに加え、系統制約などの課題が存在する。地域の治水目的などと合わせて地域との共生を図りつつ、緩やかにコスト低減を図り、自立化を実現していくために、こうした課題を克服していく必要がある。
このため、流量等の立地調査や地元理解の促進等について支援を実施し、開発リスクの低減を図っていく。未開発地点の開発に加え、IT技術も活用したダムの運用高度化等によって既存ダムの発電量を増加させる取組を推進する。また、設備更新時期を迎えた水力発電設備への最新設備導入による効率化や治水機能との調和を図りながら既存ダムを有効活用すること等により、コスト低減を図りつつ、積極的な導入の拡大を目指す。
さらに、既に許可を受けた農業用水等を利用した発電について、2013年の河川法改正による水利権手続の簡素化・円滑化により、引き続き、地域との共生を図りつつ、積極的な導入の拡大を目指す。

木質バイオマス等

バイオマス発電は、燃料費が大半を占める発電コストの低減や燃料の安定調達と持続可能性の確保などといった課題が存在する。こうした課題を克服し、地域での農林業等と合わせた多面的な推進を目指していくことが期待される。このため、大きな可能性を有する未利用材の安定的・効率的な供給による木質バイオマス発電及び熱利用等について、循環型経済の実現にも資する森林資源の有効活用・林業の活性化のための森林・林業施策や農山漁村再生可能エネルギー法等を通じて積極的に推進し、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入を推し進めていく。さらに、家畜排せつ物、下水汚泥、食品廃棄物などのバイオマスの利用や、耕作放棄地等を活用した燃料作物バイオマスの導入を進める。大規模なバイオマス発電を中心に、競争を通じてコスト低減が見込まれるものについては、安定的かつ持続可能な燃料調達を前提に、FIT制度に基づく入札制を通じて、コスト効率的な導入を促す。

再生可能エネルギー熱

再生可能エネルギー電気と並んで重要な地域性の高いエネルギーである再生可能エネルギー熱を中心として、下水汚泥・廃材によるバイオマス熱などの利用や、運輸部門における燃料となっている石油製品を一部代替することが可能なバイオ燃料の利用、廃棄物処理における熱回収を、経済性や地域の特性に応じて進めていくことも重要である。
太陽熱、地中熱、雪氷熱、温泉熱、海水熱、河川熱、下水熱等の再生可能エネルギー熱について、熱供給設備の導入支援を図るとともに、複数の需要家群で熱を面的に融通する取組への支援を行うことで、再生可能エネルギー熱の導入拡大を目指す。

FIT制度の在り方

2012年7月のFIT制度開始以降、2017年3月末までに、大規模水力を除く発電を開始した再生可能エネルギー発電設備は制度開始前と比較して設備導入量が2.7倍に増加するなど着実に導入が進んでいる。FIT制度は、再生可能エネルギーに対する投資の回収に予見可能性を与えることで投資の加速度的促進を図るものであることから、引き続き、安定的かつ適切な運用により制度リスクを低減し、事業者が本来あるべき競争に集中しやすい制度運用を目指すことが不可欠である。また、小規模な取組も含め、地域活性化を視野に入れて制度の検討を行うことも重要である。
他方、国民負担の観点から、法律の規定に従い、入札制の活用、国際的な価格動向も踏まえた中長期的な価格目標の設定及び当該目標の検討とコスト低減実績を踏まえた調達価格の設定を行うことに加え、認定基準やその確認方法の見直し、運転開始期限の設定等による未稼働案件の防止など、常に適切に配慮を行うことが欠かせない。さらに、FIT制度等の再生可能エネルギー源の利用の促進に関する制度について、コスト負担増や系統制約の克服、卸電力取引市場や電力システム改革に伴い整備される市場との連動等の課題を含め諸外国の状況等も参考に、再生可能エネルギー源の最大の利用の促進と国民負担の抑制を、最適な形で両立させるような施策の組合せを構築することを軸として、法律に基づき、エネルギー基本計画改定に伴い総合的に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じるとともに、2020年度末までの間に抜本的な見直しを行う。

系統制約の克服、調整力の確保

我が国の系統は、これまで主として大規模電源と需要地を結ぶ形で形成されてきており、再生可能エネルギー電源の立地ポテンシャルとは必ずしも一致しておらず、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、系統制約が顕在化しつつある。このため、今後、再生可能エネルギーの主力電源化を進める上で、この系統制約を解消していくことが重要となる。
再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制を両立するためには、まずは既存系統の最大限に活用することが有効であることから、欧州の事例も参考にしながら、「日本版コネクト&マネージ」の具体化を早期に実現する。
その上で、2030年以降も見据えれば、なお一定の系統増強が必要になると見込まれる。人口減少等に伴う需要減少や高経年化対策等の構造的課題に加え、再生可能エネルギーの大量導入や分散型の拡大を始めとした環境変化を踏まえた次世代型の送配電ネットワークに転換するため、ネットワークコスト改革を通じて、系統増強等に係るコストを可能な限り引き下げるとともに、必要な投資が行われるための予見性確保等の環境整備を進めていく。
また、自然変動電源(太陽光・風力)の導入量の増加に伴い、必要となる調整力が増大すると見込まれる。この調整力を確実に確保するため、当面は火力発電の柔軟な活用や再生可能エネルギー自身の調整機能の活用、連系線を活用したエリア間の融通の活性化等によって対応する。また、バーチャルパワープラント(VPP)やEVからの逆潮流を制御するVehicle-to-Grid(V2G)、蓄電池、そして長期的には水素といった次世代の調整力を活用し、調整力の脱炭素化を進めていく。

既存系統の最大限の活用

我が国のこれまでの制度では、新規に電源を系統に接続する際、系統の空き容量の範囲内で先着順に受入れを行い、空き容量がなくなった場合には系統を増強した上で追加的な受入れを行うこととなっている。一方、欧州においては、既存系統の容量を最大限活用し、一定の条件付での接続を認める制度を導入している国もある。系統の増強には多額の費用と時間が伴うものであることから、まずは、既存系統を最大限活用していくことが重要である。このため、系統の空き容量を柔軟に活用する「日本版コネクト&マネージ」を具体化し、早期に実現する。具体的には、過去の実績をもとに、将来の電気の流れをより精緻に想定し、空き容量を算出する方法である想定潮流の合理化に加え、事故時の瞬時停止装置を用いた緊急時用の送電枠の活用や、系統混雑時における制御など「一定の制約条件の下で系統への接続」といった方策、さらには系統情報等に係る情報開示・公開の在り方等について、議論を加速化し、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

ネットワークコスト改革等による系統増強への対応

再生可能エネルギーの大量導入を始めとした環境変化を踏まえた次世代型の送配電ネットワークに転換するためには、国民負担を抑制しつつ、系統増強等の必要な投資が行われるための予見性確保等の環境整備が必要となる。ネットワークコスト改革にあたっては、再生可能エネルギーに係る発電コストを大幅に低減させるとともに、既存ネットワークコストの徹底削減を図ることで、次世代ネットワーク投資の原資を確保し、コストを全体として低減させることを基本方針とする。
国民負担抑制の観点から、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い増大するネットワークコストを最大限抑制するため、既存ネットワーク等のコストを徹底して削減することが必要である。具体的には、仕様等の標準化や調達に関する国への情報開示の促進、コスト削減に向けた一般送配電事業者による自主的ロードマップの提出と取組状況の確認等によって、一般送配電事業者の調達改革を通じた徹底的なコスト削減を促進する。この際、これらの取組みも前提としつつ、不断の効率化を促す託送料金制度についても検討を行う。また、次世代投資を促進するための費用負担の在り方について、投資にインセンティブが働くような託送料金制度や財政的な支援などの検討も含め、未来に向けた投資を促進する制度等環境整備も同時に進めていく。さらに、発電設備設置者もネットワークコストを意識した事業展開を行うためのインセンティブ・選択肢を確保する。具体的には、既に導入済みの系統増強における一部特定負担方式に加え、発電側基本料金等を導入するとともに、一般負担上限の見直しを行う等、系統を効率的に活用するための仕組みを導入する。

調整力の確保とその脱炭素化に向けた取組

自然変動電源(太陽光・風力)の導入が拡大する中、出力変動を調整し、需給バランスを一致させる上で、調整力を効率的かつ効果的に確保することが重要となる。このため、当面は火力発電や揚水の柔軟な活用等による調整力の確保が不可欠であるところ、調整力を効率的に調達するための需給調整市場等を整備するとともに、負担の在り方についても検討していく。加えて、風力発電等の再生可能エネルギー自身の調整機能を更に活用するため、新規に連系する風力発電等が具備すべき調整機能を特定し、具体的水準を定める。さらに、連系線を活用した広域運用の活性化を図るための方策についても検討を進める。これらの取組等を通じて、当面の調整力を確実に確保していく。また、定置用蓄電池やコージェネレーション、EVなどの需要家側に設置される分散型エネルギーリソースを活用するVPPやEVに蓄電された電気を逆潮流させ制御するV2G技術、系統安定化用途の蓄電池、更に長期的には電力を水素として貯蔵・利用するPower-to-Gas(P2G)技術等といった次世代の調整力を活用し、調整力の脱炭素化を進めていくことが重要である。VPPとV2Gについては、2020年を目途に整備予定の需給調整市場等でのビジネス展開を目指し、必要な技術要件の整理や技術実証等を並行して進める。蓄電池については、導入を促進するべく、低コスト化に向けた取組や技術開発等を進める。また、P2G技術については、水素製造原価となる再生可能エネルギーの調達コストの低減が前提となるが、水素ビジネスの発展とともに実装に向けた取組を進める。

福島の再生可能エネルギー産業の拠点化の推進

福島においては、世界初の本格的な事業化を目指した大型浮体式洋上風力の実証研究が進められているところである。これに加え、国立研究開発法人産業技術総合研究所に「福島再生可能エネルギー研究所」を2014年4月に開所し、地熱発電の適正利用・評価の技術や再生可能エネルギーの研究活動等を行っている。また、「福島新エネ社会構想」に基づき、再生可能エネルギーの更なる導入拡大に向けた送電線の増強等に取り組む。
こうした取組を通じて、福島の再生可能エネルギー産業拠点化を目指す。#40

原子力政策の再構築

原子力政策の出発点-東京電力福島第一原子力発電所事故の真摯な反省

東京電力福島第一原子力発電所事故について、政府及び原子力事業者が、いわゆる「安全神話」に陥り、悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省するとともに、女川、東海第二など重大な事故に至らなかった原子力発電所を含めた様々な経験を教訓として、このような事故を二度と起こさないよう努力を続けていかなければならない。
政府としては、東京電力を始め多くの関係者と協力し、福島の復興・再生に全力を挙げて取り組み、これまでに帰還困難区域を除くほぼ全ての地域での避難指示の解除や、燃料デブリの取り出し方針の決定などを行ってきた。しかし、一方では、発生から約7年が経過する現在も、約2.4万人の人々が避難指示の対象となっており、事故収束に向けた取組も道半ばの状況である。#41
また、依然として、国民の間には原子力発電に対する不安感や、原子力政策を推進してきた政府・事業者に対する不信感・反発が存在し、原子力に対する社会的な信頼は十分に獲得されていない。
政府は、こうした現状を正面から真摯に受け止め、原子力の社会的信頼の獲得に向けて、最大限の努力と取組を継続して行わなければならない。

福島の復興・再生に向けた取組

福島の復興・再生に向けた取組は、エネルギー政策の再構築の出発点である。政府の最優先課題として、廃炉・汚染水対策、原子力損害賠償、新たな産業・雇用の創出、事業・なりわいの再建支援、風評被害対策、除染・中間貯蔵施設事業など、福島の復興・再生に全力で取り組んでいかなければならない。
かかる観点から、福島の復興・再生を一層加速していくため、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(2016年12月閣議決定。以下「指針」という。)を策定し、必要な対策の追加・拡充を行うとともに、改めて国と東京電力の役割分担を明確化した。
廃炉・汚染水対策については、東京電力福島第一原子力発電所事故のような深刻な原子力事故における対策は、世界にも前例のない困難な事業であることから、事業者任せにするのではなく、国が前面に立ち、国内外の叡智を結集することにより、廃炉の確実な実施に向けて一つ一つの対策を安全かつ着実に履行する不退転の決意を持って取り組む必要がある。
このため、指針で示された方針を踏まえ、2017年には、長期にわたり巨額の資金需要が見込まれる事故炉の廃炉を確実に実施していくため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法が改正され、事故事業者に対し、廃炉等に必要な資金を原子力損害賠償・廃炉等支援機構に積み立てる義務を課す等の制度を整備した。また、同年、「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」について4度目の改訂を行った。本改訂においては、特に、廃炉作業の進展に伴う炉内状況の把握を踏まえ、「気中・横アクセス」を軸に小規模な取り出しを開始するという、「燃料デブリ取り出し方針」を盛り込むとともに、地域・社会とのコミュニケーションを一層強化していくこととした。汚染水対策についても、凍土壁やサブドレンによる地下水汲み上げなど、予防的かつ重層的な対策により、地下水位が低位に安定し、汚染水発生量が大幅に低減してきている。中長期ロードマップに基づき、引き続き、東京電力福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水対策を安全かつ着実に実施していく。
さらに、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が、楢葉町に楢葉遠隔技術開発センター、富岡町に廃炉国際共同研究センター国際共同研究棟、大熊町に大熊分析・研究センターの設置を行うなど、廃炉に関する技術基盤を確立するための拠点整備も着実に進めている。これらは福島イノベーション・コースト構想の一翼を担う廃炉関連施設に位置付けられている。
被災者・被災企業への賠償については、電力自由化が進展する環境下における受益者間の公平性や競争中立性の確保を図りつつ、国民全体で福島を支える観点から、東京電力福島第一原子力発電所の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な制度整備を行った。
また、2016年8月、福島イノベーション・コースト構想の新エネ分野を加速化し、福島全県を未来の新エネ社会を先取りしたモデルを創出する拠点として整備するため、福島新エネ社会構想を策定した。福島沖での浮体式洋上風力発電技術の実証研究や国立研究開発法人産業技術総合研究所の「福島再生可能エネルギー研究所」における基盤技術研究などを進めてきたが、構想の実現を加速化するため、阿武隈・双葉エリアの風力発電等のための送電線増強、浪江町における世界最大級となる1万kWの水電解装置を用いた大規模水素製造実証、各市町村におけるスマートコミュニティ構築などの新たな取組を展開し、福島がエネルギー産業・技術の拠点として発展していくことを推進している。
これらを通じて得られる技術や知見については、国際原子力機関(IAEA)や経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の多国間協力の枠組み、米・英・仏及び露との間での二国間協力の枠組み等を通じて世界と共有し、各国の原子力施設における安全性の向上や防災機能の強化に貢献していく。
また、国は、中長期ロードマップの下、事業者による対策の進捗管理を行うとともに、技術的な難易度が高く、国が前面に立つ必要がある研究開発については、引き続き必要な支援を実施する。さらに、労働環境の改善についても適切に取り組んでいく。#42
東京電力においても、2017年5月に国が認定した「新々・総合特別事業計画」に基づき、非連続の経営改革をやり遂げ、企業価値の向上を実現するための取組を進めており、こうした取組を通じて、福島への責任を果たしていく必要がある。
福島の復興・再生のために必要な全ての課題に対して、国民の理解と協力を得ながら、地元とともに、国も東京電力も、なすべきことは一日でも早く、という姿勢で取り組んでいく。

原子力利用における不断の安全性向上と安定的な事業環境の確立

低廉かつ安定的な電力供給や地球温暖化といった長期的な課題に対応していくことが求められる中で、国民からの社会的な信頼を獲得し、安全確保を大前提に、原子力の利用を安定的に進めていくためにも、再稼働や使用済燃料対策、核燃料サイクル、最終処分、廃炉等の原子力事業を取り巻く様々な課題に対して、総合的かつ責任ある取組を進めていくことが必要である。#43
いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。#44その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。
原子力事業者を含む産業界は、自主的に不断に安全を追求する事業体制を確立し、原子力施設に対する安全性を最優先させるという安全文化の醸成に取り組む必要がある。国はそれを可能とする安定的な事業環境の整備等必要な役割を果たしていく。
原子力事業者は、二度と原子力事故は起こさないとの強い意思を持ち、原子力のリスクを適切にマネジメントするための体制を整備するとともに、確率論的リスク評価(PRA)等の客観的・定量的なリスク評価手法を高度化し、リスク情報を活用した意思決定(RIDM)に向けた基盤整備と現場での実践に取り組む。#45また、安全管理体制について相互に指摘しあうピア・レビュー活動の実績を積み重ねることで、事業者間における相互の切磋琢磨を促し、継続的な安全性向上につなげていくことなどが求められる。併せて、こうした安全性向上へ向けた取組を強化するに際しては、原子力規制委員会との積極的な意見交換等を行い、原子力に係る安全規制やその中長期的なあり方と整合的になるよう取り組む必要がある。
さらに、個々の事業者の取組を支援するために、新たな組織の設立などメーカー等も含めた産業大での連携を強化し、知見を集約するとともに、産業界として取り組むべき課題の特定、活動計画の策定、実施及び評価に取り組み、安全性向上のPDCAを実践していく。それらも踏まえつつ、原子力規制委員会や社会との双方向のコミュニケーションを強化する。同時に、安全性向上に係る取組の「見える化」など、政策当局等によるサポートも求められる。
また、原子力事業者は、高いレベルの原子力技術・人材を維持し、今後増加する廃炉を円滑に進めつつ、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を契機とした規制強化に対し迅速かつ最善の安全対策を講じ、地球温暖化対策やベースロード電源による安定的な供給に貢献することが求められている。このため、国は、電力システム改革によって競争が進展した環境下においても、原子力事業者がこうした課題に対応できるよう、海外の事例も参考にしつつ、事業環境の在り方について引き続き検討を進める。#46
これまでも、国は、財務的な理由によって原子力事業者が廃炉の判断を躊躇することを回避し、円滑な廃炉を進めるための会計制度を整備するとともに、使用済燃料の再処理等が将来にわたって滞りなく行われるよう再処理等拠出金法を制定すること等により対応してきているが、電力システム改革等の進展の状況を踏まえながら、引き続き、バックエンドも含めた安定的な事業環境の確立に向けて、必要な対応に取り組む。
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や、今後増えていく古い原子力発電所の廃炉を安全かつ円滑に進めていくためにも、高いレベルの原子力技術・人材を維持・発展することが必要である。また、東京電力福島第一原子力発電所事故後も、国際的な原子力利用は拡大を続ける見込みであり、特にエネルギー需要が急増する中国やインド、新興国において、その導入拡大の規模は著しい。#47我が国は、事故の経験も含め、原子力利用先進国として、安全や核不拡散及び核セキュリティ分野、地球温暖化対策の観点からの貢献が期待されており、また、周辺国の原子力安全を向上すること自体が我が国の安全を確保することとなるため、多様な社会的要請を踏まえた技術開発等を通じて高いレベルの原子力人材・技術・産業基盤の維持・強化を図るとともに、再稼働や廃炉等を通じた現場力の維持・強化が必要である。
廃炉等に伴って生じる放射性廃棄物の処理・処分については、低レベル放射性廃棄物も含め、発生者責任の原則の下、原子力事業者等が処分場確保に向けた取組を着実に進めることを基本としつつ、処分の円滑な実現に向け、国として、規制環境を整えるとともに、必要な研究開発を推進するなど、安全確保のための取組を促進する。また、廃炉が円滑かつ安全に行われるよう、廃炉の工程において必要な技術開発や人材の確保などについても、引き続き推進していく。
原子力損害賠償制度については、国際的な原子力損害賠償制度の構築に参加することの重要性や廃炉・汚染水対策において海外の叡智を結集する環境整備のため、原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)を2015年1月に締結したところである。また、賠償制度の見直しについては、東京電力福島第一原子力発電所事故に係る賠償の実情や電力システム改革等を踏まえ、適切な賠償を迅速に実施することを前提に、原子力事業者及び国の役割分担も考慮した上で、被害者への賠償に係る国民負担の最小化、原子力事業者の予見可能性の確保といった観点も踏まえつつ、引き続き、総合的に検討を進め、必要な措置を講ずる。
災害対策基本法及び原子力災害特別措置法の規定により、防災基本計画及び原子力災害対策指針等に基づき策定される地域防災計画・避難計画について、各原子力発電所の原子力災害対策重点区域ごとに、関係府省庁、関係地方公共団体等を構成員等とする「地域原子力防災協議会」を設置し、国と関係地方公共団体等が一体となって、その計画の具体化・充実化を進める。これらの地域防災計画・避難計画については、具体的かつ合理的であることを同協議会において確認し、さらに、内閣総理大臣を議長とする「原子力防災会議」で了承していく。一旦策定した地域防災計画・避難計画についても、自治体等の関係者と連携し、訓練等を通じた継続的な改善を行い、その充実を図っていく。

対策を将来へ先送りせず、着実に進める取組

世界の使用済燃料の状況については、OECD/NEA加盟国の使用済燃料総量だけでも2015年時点で約227,000トンとなっており、使用済燃料問題は世界共通の課題である。原子力利用に伴い確実に発生するものであり、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を確実に進めることが不可欠である。#48このため、使用済燃料対策を抜本的に強化し、総合的に推進する。
高レベル放射性廃棄物については、国が前面に立って最終処分に向けた取組を進める。2017年7月には、最終処分に係る「科学的特性マップ」を公表した。これを契機に、国民理解・地域理解を深めていくための取組を一層強化する。
最終処分に至るまでの間、使用済燃料を安全に管理することは核燃料サイクルの重要なプロセスであり、使用済燃料の貯蔵能力の拡大へ向けて政府の取組を強化する。あわせて、将来の幅広い選択肢を確保するため、放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの技術開発を進める。
核燃料サイクル政策については、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、再処理やプルサーマル等を推進するとともに、中長期的な対応の柔軟性を持たせる。

使用済燃料問題の解決に向けた取組の抜本強化と総合的な推進

1) 高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化
我が国においては、現在、約18,000トンの使用済燃料を保管中である。これは、既に再処理された分も合わせるとガラス固化体で約25,000本相当の高レベル放射性廃棄物となる。しかしながら、放射性廃棄物の最終処分制度を創設して以降、15年以上を経た現在も処分地選定調査に着手できていない。
廃棄物を発生させた現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう、高レベル放射性廃棄物の問題の解決に向け、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」を改定(2015年5月閣議決定)し、国が前面に立って取り組むこととした。
この基本方針に基づき、2017年7月、最終処分関係閣僚会議を経て、最終処分に係る「科学的特性マップ」を公表した。この公表を契機として、関係府省連携の下、国民の関心を踏まえた多様な対話活動の推進等の取組を一層強化し、複数の地域による処分地選定調査の受入れを目指す。
高レベル放射性廃棄物については、i)将来世代の負担を最大限軽減するため、長期にわたる制度的管理(人的管理)に依らない最終処分を可能な限り目指す、ii)その方法としては現時点では地層処分が最も有望である、との国際認識の下、各国において地層処分に向けた取組が進められている。我が国としても、科学的知見の蓄積を踏まえた継続的な検討を経て、地層処分することとされている。他方、その技術的信頼性に関する専門的な評価が国民に十分には共有されていない状況を解消していくことが重要である。したがって、広く国民に対し説明し理解を得ながら、地層処分を前提に取組を進めつつ、可逆性・回収可能性を担保し、今後より良い処分方法が実用化された場合に将来世代が最良の処分方法を選択できるようにする。
このような考え方の下、地層処分の技術的信頼性について最新の科学的知見を定期的かつ継続的に評価・反映するとともに、将来に向けて幅広い選択肢を確保し、柔軟な対応を可能とする観点から、使用済燃料の直接処分など代替処分オプションに関する調査・研究を着実に推進する。あわせて、処分場を閉鎖せずに回収可能性を維持した場合の影響等について調査・研究を進め、処分場閉鎖までの間の高レベル放射性廃棄物の管理の在り方を具体化する。
処分事業の実現に必要な知見を確保する観点から、事業実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)を含めた研究開発体制の強化を行う。このため、研究成果・人材の継承・発展に取り組むほか、共通の課題を抱える各国と、対話手法の共有を図るとともに、国内外の研究基盤の相互活用を推進するなど国際協力を進める。
また、廃棄物の発生者としての基本的な責任を有する事業者は、こうした国やNUMOの取組を踏まえつつ、立地への理解活動を主体的に行うとともに、最終処分場の必要性について、広く国民に対し説明していくことが求められる。
2) 使用済燃料の貯蔵能力の拡大
廃棄物を発生させた現世代として、高レベル放射性廃棄物の最終処分へ向けた取組を強化し、国が前面に立ってその解決に取り組むが、そのプロセスには長期間を必要とする。その間も、原子力発電に伴って発生する使用済燃料を安全に管理する必要がある。このため、使用済燃料の貯蔵能力を強化することが必要であり、安全を確保しつつ、それを管理する選択肢を広げることが喫緊の課題である。こうした取組は、対応の柔軟性を高め、中長期的なエネルギー安全保障に資することになる。
このような考え方の下、使用済燃料の貯蔵能力の拡大を進める。具体的には、発電所の敷地内外を問わず、新たな地点の可能性を幅広く検討しながら、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を促進する。
政府は、2015年10月の最終処分関係閣僚会議において、「使用済燃料対策に関するアクションプラン」を策定した。同プランに基づき、原子力事業者は使用済燃料対策推進計画を策定し、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設も含めて使用済燃料の貯蔵能力の拡大に向けた取組を進めている。引き続き、取組の加速へ向けて、国が積極的に関与し、関係自治体の意向も踏まえながら、個々の事業者の努力はもとより、事業者間の一層の連携強化を図りつつ、国全体として使用済燃料の安全で安定的な貯蔵が行えるよう、官民を挙げて取り組む。
3) 放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発
使用済燃料については、既に発生したものを含め、長期にわたって安全に管理しつつ、適切に処理・処分を進める必要があること、長期的なリスク低減のため、その減容化・有害度低減が重要であること等を十分に考慮して対応を進める必要がある。こうした課題に的確に対応し、その安全性、信頼性、効率性等を高める技術を開発することは、将来、使用済燃料の対策の柱の一つとなり得る可能性があり、その推進は、幅広い選択肢を確保する観点から、重要な意義を有する。
このため、放射性廃棄物を適切に処理・処分し、その減容化・有害度低減のための技術開発を推進する。具体的には、高速炉や、加速器を用いた核種変換など、放射性廃棄物中に長期に残留する放射線量を少なくし、放射性廃棄物の処理・処分の安全性を高める技術等の開発を国際的な人的ネットワークを活用しつつ推進する。また、最終処分に係る検討・進捗状況を見極めつつ、最終処分と減容化等技術開発や、関連する国際研究協力・研究人材の育成などの一体的な実施の可能性について、引き続き検討を進める。

核燃料サイクル政策の推進

1) 再処理やプルサーマル等の推進
我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としている。
核燃料サイクルについては、六ヶ所再処理工場の竣工遅延などが続いてきた。また、もんじゅについては、廃止措置への移行を決定した。このような現状を真摯に受け止め、事業を安全に進める上で直面する課題を一つ一つ解決することが重要である。その上で、使用済燃料の処理・処分に関する課題を解決し、将来世代のリスクや負担を軽減するためにも、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や、資源の有効利用等に資する核燃料サイクルについて、これまでの経緯等も十分に考慮し、引き続き関係自治体や国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、再処理やプルサーマル等を推進する。
具体的には、安全確保を大前提に、プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を進める。また、平和的利用を大前提に、核不拡散へ貢献し、国際的な理解を得ながら取組を着実に進めるため、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持し、プルトニウム保有量の削減に取り組む。これを実効性あるものとするため、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮しつつ、プルサーマルの一層の推進や、2016年に新たに導入した再処理等拠出金法の枠組みに基づく国の関与等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行う。併せて、使用済MOX燃料の処理・処分の方策について、使用済MOX燃料の発生状況とその保管状況、再処理技術の動向、関係自治体の意向などを踏まえながら、引き続き研究開発に取り組みつつ、検討を進める。また、「高速炉開発の方針」(2016年12月原子力関係閣僚会議決定)に基づき策定されるロードマップの下、米国や仏国等と国際協力を進めつつ、高速炉等の研究開発に取り組む。#49
もんじゅについては、「もんじゅの廃止措置に関する基本方針」(2017年6月「もんじゅ」廃止措置推進チーム決定)に基づき、安全の確保を最優先に、着実かつ計画的な廃止措置に責任を持って取り組む。その際、立地地域の住民や国民の理解を得るための取組を引き続き進めることとし、廃止措置と並行して、国は地元の協力を得ながら、福井県敦賀エリアを原子力・エネルギーの中核的研究開発拠点として整備していく。もんじゅにおいてこれまで培われてきた人材や様々な知見・技術に加え、廃止措置中に得られる知見・技術については、将来の高速炉研究開発において最大限有効に活用する。
2) 中長期的な対応の柔軟性
核燃料サイクルに関する諸課題は、短期的に解決するものではなく、中長期的な対応を必要とする。また、技術の動向、エネルギー需給、国際情勢等の様々な不確実性に対応する必要があることから、対応の柔軟性を持たせることが重要である。特に、今後の原子力発電所の稼働量とその見通し、これを踏まえた核燃料の需要量や使用済燃料の発生量等と密接に関係していることから、こうした要素を総合的に勘案し、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減、資源の有効利用の観点やコスト、関係自治体の意向等も考慮しつつ、状況の進展に応じて戦略的柔軟性を持たせながら対応を進める。

国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築

東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた広聴・広報

東京電力福島第一原子力発電所事故から7年超が経過した今もなお、国民の間にある原子力に対する不信・不安は払拭できておらず、エネルギーに関わる行政・事業者に対する信頼は依然として低い。また、行政に対して、原子力に対する正確で客観的な情報提供を求める声もある。
この状況を真摯に受け止め、その反省に立って信頼関係を構築するためにも、原子力に関する丁寧な広聴・広報を進める必要がある。このため、原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、地球温暖化対策への貢献、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を、双方向の対話形式や、ウェブなどの広報手法も積極的に活用しながら、国民に分かりやすい形で推進する。#50
また、原子力立地地域のみならず、これまで電力供給の恩恵を受けてきた消費地も含め、多様なステークホルダーとの丁寧な対話や情報共有のための取組強化等により、きめ細やかな広聴・広報を行う。さらに、世代を超えて丁寧な理解増進を図るため、原子力に関する教育の充実を図る。

立地自治体等との信頼関係の構築

我が国の原子力利用には、原子力関係施設の立地自治体や住民等関係者の理解と協力が必要であり、こうした関係者のエネルギー安定供給への貢献を再認識しなくてはならない。一方、立地自治体等の関係者は、事故に伴って様々な不安を抱えている。
このため、地域の実情に応じ、科学的に検証した情報を発信するとともに、原子力が持つリスクやその影響、リスクに対してどう向き合い対策を講じていくのか等について、丁寧な対話を行うことが重要である。仏国では、1981年に「地域情報委員会(CLI)」を導入し、原子力施設立地地域の情報共有の場を設置している。また、英国には「サイト・ステークホルダー・グループ(SSG)」が、スウェーデンには地域委員会があり、それぞれ原子力施設周辺地域のコミュニケーションを促進している。我が国においても、こうした諸外国の例も参考にしながら、国がより積極的に関与し、住民を始めとする多様なステークホルダーとの丁寧な対話や情報共有のための取組強化等により、地域における情報共有の強化へ向けて必要な措置を講ずる。
他方、原子力発電所の稼働停止や建設停止、その長期化、廃炉等により原子力立地地域では経済的な影響も生じている。国は、立地自治体等との丁寧な対話を通じて信頼関係を構築するとともに、電源立地対策の趣旨に基づき、原子力発電所の稼働状況や環境変化等も踏まえ、新たな産業・雇用創出も含め、地域の実態に即した立地地域支援を進める。
その際、我が国の電力供給を支えてきた原子力立地地域においては、地域経済の持続的な発展につながる地域資源の開発・観光客の誘致といった地域振興策や、長期停止・再稼働・運転延長・廃炉などによる地域経済への影響の緩和、避難道路の整備、防災活動資機材の整備といった防災体制の充実など、消費地とは異なる様々な課題を抱えている。こうした課題に、政府として真摯に向き合い、立地地域に対する産業振興や住民福祉の向上、防災対策のための予算措置、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の活用などにより取組を進め、課題解決を図ることとする。原子力事業者においても、エネルギー安定供給が、立地自治体等の関係者の理解と協力の上に成り立っていることを改めて認識し、立地地域の実情に応じた産業活性化や地域共生の取組を進めるとともに、様々な地域の課題解決に資する対応を誠実に行うことが求められる。また、再稼働による低廉な電気料金水準の実現など国民の生活環境の向上が期待される中において、原子力事業者と立地地域との信頼関係の構築が引き続き求められる。

世界の原子力平和的利用と核不拡散・核セキュリティへの貢献

東京電力福島第一原子力発電所事故は、周辺国を含む国際社会に大きな不安をもたらしていることから、IAEA等の場を活用し、国際社会との対話を強化し、迅速かつ正確な情報発信を行う。世界においては、原子力発電を将来的に廃止することを決めた国や地域もある一方、原子力の利用を掲げている国が多く存在することも事実である。特に、我が国を取り巻く中国、東南アジア、インドをはじめとする新興国における原子力発電の導入は今後も拡大していく見込みであり、こうした中で、我が国の高いレベルの技術・人材の維持・発展という観点に鑑みつつ、東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験から得られた教訓を国際社会と共有することで、世界の原子力安全の向上や原子力の平和的利用、核不拡散及び核セキュリティ分野において積極的な貢献を行うとともに、地球温暖化対策に貢献していくことは我が国の責務であり、世界からの期待でもある。#51我が国としてはIAEA基準等の原子力安全の国際標準の策定に積極的に貢献することが重要である。加えて、原発輸出を含む原子力技術を提供するに際し、公的金融を付与する場合には、原子力安全条約及びIAEA基準を参照した安全確保等に関する配慮の確認を行いつつ、事故の経験と教訓に基づき、安全性を高めた原子力技術と安全文化を共有していくことで、世界の原子力安全の向上に貢献する。
また、非核兵器国としての経験を活かして、IAEAの保障措置の強化や厳格な輸出管理を通じた核不拡散及び核セキュリティ・サミット等の成果やIAEAを中心とする継続的な努力を通じた国際的な核セキュリティの強化に積極的に貢献する。特に、核不拡散分野においては、核燃料の核拡散抵抗性の向上や、保障措置技術や核鑑識・検知の強化等の分野における研究開発において国際協力を進め、核不拡散の取組を強化していくことが重要である。我が国としては、米仏等の関係国との協力の下、こうした取組を進めていく。さらに、政府は、IAEA等国際機関と連携しつつ、原子力新規導入国に対する人材育成・制度整備支援等を一元的に実施していく。

化石燃料の効率的・安定的な利用

高効率石炭・LNG火力発電の有効活用の促進

石炭火力発電は、安定供給性と経済性に優れているが、温室効果ガスの排出量が多いという課題がある。環境負荷の低減という課題と両立した形で利用していくため、温室効果ガスの排出を抑制する利用可能な最新鋭の技術を活用するとともに、エネルギーミックス及びCO2削減目標と整合する排出係数を目標としている電力業界の自主的な枠組みの目標達成に向けた取組を促す。このような電力業界による自主的な枠組みに加えて、エネルギーミックスや我が国のCO2削減目標を実現するため、省エネ法や「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(高度化法)」において規制的措置を導入している。具体的には、販売電力の低炭素化を図るため、高度化法において、2030年度に販売電力の44%を非化石電源とすることが規定されている。また、省エネ法に基づいて発電効率の向上を求めており、水素等の混焼の評価も含め、石炭火力発電の新設は最新鋭のUSC相当の発電効率、LNG火力発電についても最新鋭の発電効率を求めるとともに、2030年度の発電事業者ごとの火力発電の全体平均発電効率を44.3%以上とすることを求めている。エネルギーミックス及びCO2削減目標と整合する2030年度の電力排出係数の目標を確実に達成していくために、これらの取組が継続的に実効を上げているか、毎年度その進捗状況を評価するとともに、目標の達成ができないと判断される場合には、施策の見直し等について検討する。今後、これらの規制的措置の実効性をより高めるため、非効率な石炭火力(超臨界以下)に対する、新設を制限することを含めたフェードアウトを促す仕組みや、2030年度に向けて着実な進捗を促すための中間評価の基準の設定等の具体的な措置を講じていく。また、環境アセスメントに要する期間を、リプレースの場合は従来3年程度かかるところを最短1年強に短縮する。
加えて、温室効果ガスの大気中への排出を更に抑えるため、IGCC・IGFC等の次世代高効率石炭火力発電技術等の開発・実用化を推進するとともに、「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」(2013年4月25日経済産業省・環境省)等を踏まえ、2020年頃のCO2回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の実用化を目指した研究開発、国際機関との連携、CCSの商用化の目途等も考慮しつつできるだけ早期のCCSReady導入に向けた検討や、国内における回収・輸送・圧入・貯留の一連のCCSのプロセスの実証と貯留適地調査等を着実に進めるなど、環境負荷の一層の低減に配慮した石炭火力発電の導入を進める。#52
こうした取組を通じて、石炭火力発電の高効率化・次世代化を推進するとともに、非効率な石炭火力発電(超臨界以下)のフェードアウトに向けて取り組んでいく。
また、パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素なども含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、その選択に応じた支援を行う。その際、我が国としては、再生可能エネルギー・水素の促進に積極的に取り組む。こうした提案・支援を含めた低炭素型インフラ輸出を積極的に進める中で、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、当該国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭であるUSC以上の発電設備について導入を支援する。また、CCSの実用化の状況を踏まえつつ、段階的にCCS付の石炭火力輸出を増加させていく。#53
あわせて、高効率LNG火力発電の技術開発、効率的な利用や輸出を促進する。

石油産業・LPガス産業の事業基盤の再構築

石油産業(精製・元売)の事業再編・構造改革

「2018~2022年度石油製品需要見通し」では、我が国の国内の石油需要は毎年度平均1.7%程度減少を続ける見通しである一方、アジア太平洋地域では、石油需要・石油化学需要は増大を続ける見通しで、東アジア地域においては、石油化学との統合が進んだ大規模な石油コンビナートの建設が相次いでいる。さらに、北米のシェール革命が世界の石油・石油化学製品の貿易構造に大きな変化を与え、アジアの石油コンビナートの生産性競争を激化させると見込まれる。
戦後の高度成長期に運転を開始した我が国の製油所は、東アジアで新たに建設が進んでいる大規模な石油コンビナートと比べ、規模の経済、エネルギー効率、石油化学製品生産への弾力的な切替などの生産の柔軟性等の面で見劣りするとの指摘がある。
また、2020年1月から予定されている船舶の燃料油中の硫黄分濃度規制の強化や、長期的には、パリ協定の履行やEVなどの次世代自動車の導入拡大など、国内外の石油需要見通しは不透明である。
こうした状況の中においても、代替困難な軽油・ジェット燃料などの輸送用燃料や寒冷地の灯油などの燃料の国内需要は将来的にも存在し続けることが見込まれ、引き続き、石油製品の安定供給を確保し続ける必要がある。
国内の石油産業の経営統合や製油所の再編が進み、次の成長のために必要な事業基盤が整いつつあるが、国内需要の減少は依然として継続する。国内への石油製品の安定供給を確保するためには、今後海外製油所との競争激化が見込まれる中、国内の石油精製設備の立地を維持していけるよう生産性を高めるとともに、縮小する国内需要を踏まえ、他事業分野や海外事業への進出拡大などに取り組むことが重要である。

1) グローバル環境下における競争力強化
今後、我が国の石油関連産業が国際展開を図る中で競争力を備えるためには、石油コンビナートに立地する製油所・石油化学工場等について、「資本の壁」や「地理的な壁」を超えた統合運営・事業再編を通じ、燃料と石油化学製品等の柔軟な生産体制の構築等による高付加価値化や設備の共有化・廃棄等による設備最適化や製造原価の抑制を進めるとともに、AI・IoT等のデジタル技術の導入拡大などに取り組み、総合的かつ抜本的な生産性向上を進める必要がある。その上で、石油製品を効率的に輸出できるよう、業種間・企業間の連携も含む輸出能力の強化を図ることが重要である。
また、中長期的に原油調達の多様化が進んでいくことを踏まえ、超重質油や超軽質油といった非在来型原油の処理も可能にする技術開発や設備投資を促進する。
2) 他事業分野・海外進出の強化による収益力の向上
欧米の石油企業は、利益に占める上流部門(資源開発)の割合が大きく、中下流部門(精製元売・小売販売)の割合は小さい。一方、我が国の多くの石油企業は、第二次世界大戦後に欧米石油企業(メジャーズ)から原油供給を受け、その傘下にある時期が長かったこともあり、中下流部門が利益の中心で、収益力に課題が残る。
また、長期的に世界の石油需要が減少する可能性に備え、欧米の石油企業はガスや次世代エネルギー、化学産業等へ、中東産油国の国営企業は石油の中下流分野や次世代エネルギーへ事業拡大を進めつつある。我が国の石油産業が収益力を強化するためには、縮小する国内ガソリン市場における競争だけに注力するのではなく、石油産業と関連性が強く、世界市場で堅調に伸張すると見込まれる石油化学分野での事業拡大や連携、資源開発事業(石油、ガス、金属鉱物)の強化や、LNGや石炭、再生可能エネルギー等による発電事業、ガス事業、水素事業等への参入強化等、他のエネルギー事業ポートフォリオの充実を図るとともに、海外における石油コンビナート・販売事業の運営等への進出を進め、国内ガソリン市場等の変動を吸収して収益を確保しうる強靱な「総合エネルギー産業」へと脱皮することが不可欠である。
特に、海外事業の拡大については、単独での進出はリスクが高いことから、「自前主義」にこだわることなく、産油国との包括的かつ互恵的な二国間関係の中での連携や、他の産業分野との協力などを通じて、海外展開を進めることが必要であると考えられる。石油の中下流分野での海外事業展開は、国内石油産業の収益力向上だけでなく、エネルギーの安定供給の観点からも、供給途絶や災害時の柔軟で強靱な供給能力獲得につながる可能性がある。
また、国内石油産業の収益力向上にあたっては、国内需要が縮小していく中で不要又は余剰となる土地や設備などの資産について、新たな付加価値を生み出すための活用方法などについて検討を進めることも必要である。

LPガス産業の収益力向上

LPガスの国内需要は、1996年度をピークに漸減傾向にあるが、日本企業が扱う海上輸送量は世界全体の約25%を占め世界最大である。さらに取扱量を増やし購買力の強化を図るため、産出国と消費国の関係者が一堂に会する世界最大規模のセミナーを毎年開催し、日本企業のプレゼンスを高めるとともに、カナダや豪州など調達先国を多角化することにより、我が国のエネルギーセキュリティの向上に取り組むことが必要である。
また、成長著しいアジア地域の需要に対応するため、我が国のLPガス事業者や、LPガス機器製造業の国際展開を推進するために専門家派遣や招聘研修等の国際協力を実施する。

石油・LPガスの最終供給体制の確保

消費者に対して石油製品の供給を行う下流部門では、石油製品の需要の減少が収益を圧迫する最大の要因の一つとなっている。自動車を始めとした燃料効率の大幅な改善の動きは、ガソリンを始めとする石油製品の需要減少に拍車をかける構造となっており、この結果、石油販売事業者などの経営環境は概して厳しい。
このような状況の中、近隣にサービスステーション(SS)がなくなり、自家用車や農業機械への給油や移動手段を持たない高齢者への灯油配送などに支障を来す、いわゆる「SS過疎地問題」が全国的な課題となっている。地域に必要な燃料アクセスを確保するためには、地元自治体のリーダーシップの下、事業者や地域住民などの関係者が連携し、地域の実情に応じた石油製品流通網の維持策を検討する必要がある。また、地理的に不利な条件にある離島における石油製品の供給体制についても地域の課題として取り組む。
一方、石油製品の最終供給を担う事業者には、危機発生時においても一定の供給機能を果たせるようにするための高い安全性・耐久性を持った設備を確保するための持続的な投資を求められることとなる。
このため、平時・緊急時を問わずに安定供給のための中核機能を将来にわたって担っていく意識と高い意欲のあるSSに対する設備投資支援などを行うことが必要である。また、既にSSやLPガス事業者において、灯油の配送やLPガス販売などに加え、自動車関連の各種サービスの提供やEVの充電スタンドの整備、過疎地における日用品店・郵便局の併設などの取組が行われているが、事業者には、消費者との直接的なつながりを有する強みを活かした事業の多様化を進め、「地域コミュニティのインフラ」としての機能を地域の実情を踏まえ、更に強化していくことが求められる。こうした取組を後押しすべく、AI・IoT等の新たな技術を活用し、人手不足を克服すると同時に、安全かつ効率的な事業運営や新たなサービスの創出を可能とするため、安全確保を前提としつつ、関連規制の在り方を検討する。
LPガスについては、低炭素化の観点からも、熱電供給により高い省エネルギーを実現する家庭用の定置用燃料電池(エネファーム)等のLPガスコージェネレーション、ガスヒートポンプ(GHP)等の利用拡大、電気・都市ガス事業、水素燃料供給事業への進出や、アジアへのLPガスの安全機器の輸出などに取り組むことが求められる。また、過疎化の進行に伴い生じる遠隔地への配送や少子高齢化に伴う人手不足に対応するため、共同配送・共同保安の実現による事業効率化、集中監視システムの導入による「認定販売事業者制度」の取得の促進、バルク供給の促進等に向けた方策の検討等を進める。さらに、現在でもタクシーなどの自動車はLPガスを主燃料としており、将来的にはクリーンな船舶用燃料として、運輸部門における燃料の多様化を担うことも期待される。

公正かつ透明な石油製品取引構造の確立

石油製品は品質の差別化が難しいため、競争は価格面に集中する傾向にある。このため、卸価格の格差はSSの競争基盤に大きな影響を及ぼすことになるが、卸価格の価格差や決定方法の不透明性、競争上不利な取引条件が課されているおそれのあるSS事業者の存在等が指摘されていたところである。
こうした中、石油製品の需要減、元売の経営統合等の環境変化の中でも、石油サプライチェーンを維持・強化し、効率的・安定的な石油製品の供給を確保していくべく、公正で透明な取引環境の構築を目的として、2017年3月に「ガソリン適正取引慣行ガイドライン」を策定した。今後も本ガイドラインの浸透を通じ、取引慣行の適正化を図るとともに、その進捗状況等を踏まえて、ガイドラインの不断の見直しを行っていく必要がある。
なお、一般的に取引上優越した立場にある元売が、取引条件を一方的に決定するなどにより、正常な商慣習に照らして不当に、SS事業者に不利益を与えるなど独占禁止法に違反する疑いのある事案に接した場合には、公正取引委員会と連携し、厳正な対処が必要である。

“水素社会”の実現に向けた取組の抜本強化

水素は、再生可能エネルギーを含め多種多様なエネルギー源から製造し、貯蔵・運搬することができるため、特定国に偏在する化石燃料に大きく依存した我が国の一次エネルギー構造を多様化させるポテンシャルを有する。さらに、製造段階でCCS技術や再生可能エネルギー技術を活用することで、トータルでも脱炭素化したエネルギー源とすることが可能である上、水素から高効率に電気・熱を取り出す燃料電池技術と組み合わせることで、電力、運輸のみならず、産業利用や熱利用、様々な領域で究極的な低炭素化が可能となる。こうしたことから、水素は脱炭素化したエネルギーの新たな選択肢として利用されることが期待されている。#54
このような水素を日常の生活や産業活動で利活用する社会、すなわち“水素社会”を世界に先駆けて実現していくためには、水素を再生可能エネルギーと並ぶ新たなエネルギーの選択肢とすべく、環境価値を含め、水素の調達・供給コストを従来エネルギーと遜色のない水準まで低減させていくことが不可欠である。このため、水素基本戦略等に基づき、足元では燃料電池自動車を中心としたモビリティにおける水素需要の拡大を加速するとともに、中長期的な水素コストの低減に向け、水素の「製造、貯蔵・輸送、利用」まで一気通貫した国際的なサプライチェーンの構築、水素を大量消費する水素発電の導入に向けた技術開発を進め、脱炭素化したエネルギーとして、水素を運輸のみならず、電力や産業等様々な分野における利用を図っていく。

燃料電池を活用した省エネルギーの推進

現在、最も普及が進んでいる水素関係技術は、家庭用燃料電池(エネファーム)である。特に、我が国では、燃料電池の技術的優位性を背景に、定置用燃料電池が世界に先駆けて一般家庭に導入され、既に23万台以上が普及しており、価格も市場投入当初の3分の1以下の100万円を切る水準となっている。
今後は、2020年頃の市場自立化を実現した上で、2030年までに530万台の導入を目指す。その実現に向けては、更なる発電効率の向上や熱利用率の向上に向けた技術開発を進めるとともに、熱需要の大きい地域など、優位性のある市場を開拓し、さらに、余剰電力取引を通じて他の需要家にも融通する取組を拡大していく。
また、2017年に市場投入された業務・産業用燃料電池の普及に向けては、早期に市場自立化を目指し、イニシャルコストの低減に資する技術開発を進めるとともに、分散型電源として大規模集中型電源を超える発電効率(60%)を備える機器の開発、実装を進める。

モビリティにおける水素利用の加速

モビリティにおける水素利用の中核となる燃料電池自動車(FCV)と水素ステーションについては、取組の両輪として進めていくことが重要である。具体的には、2025年までに320箇所の水素ステーションを整備し、2020年代後半までに水素ステーションビジネスの自立化を目指すとともに、FCVについては2025年までに20万台程度、2030年までに80万台程度の普及を目指す。この目標の実現に向けては、水素供給コストの低減はもとより、FCVの量産化や低価格化、航続距離の更なる伸長、2025年頃のボリュームゾーン向けの車種の投入等に加え、安定収益の裏付けのあるステーション整備と整備・運営コストの低減を通じた自立的な水素販売ビジネスの展開が必須である。そのため、規制改革、技術開発、官民一体による水素ステーションの戦略的整備を三位一体で推進する。
また、燃料電池技術の横展開及び水素ステーションインフラの有効活用の観点から、既に商用化されたバスやフォークリフトに留まらず、トラック等の商用車や船舶、電車等のモビリティにおける他のアプリケーションへの展開を併せて進めていくことが重要である。そのため、2030年までに燃料電池バス1,200台程度、燃料電池フォークリフト1万台程度等の普及を目指すほか、燃料電池トラック等の導入に向けた技術開発を進める。また、インフラ面においても、民間事業者・関係府省庁・関係自治体等が密接に連携し、水素ステーション整備や機器開発に係る規格の整理、互換性の確保等を進める。

低コストの水素利用実現に向けた国際的な水素サプライチェーンの構築と水素発電の導入

水素供給コストの低減に向けては、海外の安価な未利用エネルギーとCCSを組み合わせる、または安価な再生可能エネルギーから水素を大量調達するアプローチが基本になる。この実現に向けては、上流側の取組として、安価な海外資源を確保すべく、民間ベースの取組に加えて政府間レベルでの関係構築を図るとともに、効率的な水素の輸送・貯蔵を可能とする液化水素、メチルシクロヘキサン、アンモニアやメタンといったエネルギーキャリア技術の開発が必要となる。そのため、褐炭等の海外の安価な燃料を活用するための水素の製造・輸送に係る基盤技術の開発を進め、2030年頃に商用規模の国際的な水素サプライチェーンの構築をし、年間30万t程度の水素を調達するとともに、30円/Nm3程度の水素供給コストの実現を目指す。
さらに、こうしたサプライチェーンの構築と並行して、安定的かつ大量に水素を消費する水素発電の開発を進めることが重要である。水素は天然ガス火力発電での混焼が可能であることから、導入初期は既設の天然ガス火力における混焼実証に向けた取組を中心に、小規模な自家発電設備等における水素混焼も含め、導入拡大を図るとともに、水素の燃焼特性に応じた燃焼器の開発を進める。国際的な水素サプライチェーンとともに2030年頃の商用化を実現し、その段階で17円/kWhのコストを目指す。

再生可能エネルギー由来水素の利用拡大に向けた技術開発の推進と地域資源を活用した地方創生

今後の再生可能エネルギー利用を拡大するためには、調整電源の確保のみならず、余剰電力を貯蔵する技術が一つの鍵となる。大規模かつ長期間のエネルギー貯蔵を可能とする水素がその役割を果たすポテンシャルは大きく、特に蓄電池では対応の難しい季節を超えるような長周期の変動に対しては、再生可能エネルギーによる電気を水素として貯蔵するP2G技術が有効となる。国内の再生可能エネルギー由来の水素の本格活用に向けては、設備等のコストを低減させていくことが重要となるため、国内市場のみならず、再生可能エネルギーの導入量やコストで先行する欧州等海外市場への展開も含め商用化を進める。加えて、P2G技術の中核である水電解システムについては、世界最高水準のコスト競争力を実現すべく、2020年までに5万円/kWを見通すことのできる技術の早期確立を目指す。
さらに、2020年以降は、現在進められている福島での実証プロジェクト等の成果も踏まえ、再生可能エネルギーの供給過剰分を貯蔵する観点から、P2Gシステムの事業化・社会実装に向けた取組を進め、2030年頃の商用化を目指す。
また、様々な資源から作ることができるという水素の特性を活かし、いくつかの自治体では、地域の未利用資源(副生水素、再生可能エネルギー、下水汚泥等)を水素に換え、FCVやFCフォークリフト等で活用する、地産地消型の水素サプライチェーンの構築の取組が進んでいる。こうした取組は、低炭素化や地域のエネルギー自給率の向上といったエネルギー・環境政策上の意義に加え、地域の雇用や産業の創出といった地方創生にもつながる。このため、地域における水素を活用した分散型エネルギーシステムの将来的な需給や市場規模を想定し、中核である水電解システムの低コスト化、水電解システムの規模の最適化、部品や技術の共通化等に取り組むとともに、低炭素な水素利活用に係る先進的な取組を進める自治体を後押しし、地域発での水素社会の実現を進める。

2020年東京五輪での“水素社会”のショーケース化

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、我が国の先進的な取組を多くの国民や訪日する外国人に発信する絶好の機会である。東京都では、既に燃料電池バス(FCバス)の運行が始まり、選手村や羽田空港での水素利活用に向けた計画が進んでいる。また、福島県においては再生可能エネルギーから水素を製造し、これを県内のみならず、2020年に東京でも利用する実証プロジェクトが本格的に動き出している。我が国が世界をリードする水素・燃料電池技術を、大会を契機に世界にアピールするとともに、これを梃子として、水素・燃料電池技術に係るイノベーションの更なる加速化につなげていく。

グローバルな水素利活用の実現に向けた国際連携強化

脱炭素化に向けた動きが活発化する中、多くの国・地域において水素のポテンシャルが注目を集めており、既に水素の利活用はグローバルに始まっている。日本は、他国に先んじてエネファームやFCVなどに代表される水素利用技術の実用化を実現してきたが、引き続き率先してイニシアティブを取り、フロントランナーとして水素利活用の促進に向けた世界的な動きをリードしていく。具体的には、IPHE(国際水素パートナーシップ)等の既存の枠組みも活用しながら、他国との共同研究の実施や規制・ルールのハーモナイゼーション、国際標準化等の取組を進めていく。また、IEAやIRENA(国際再生可能エネルギー機関)との連携を通じて、国際レポート等を通じた積極的な情報発信に取り組む。2019年のG20サミットの機会を捉え、日本が水素・燃料電池技術で世界をリードする姿勢をしっかりと打ち出すべく、官民が一体となって取組を進める。

エネルギーシステム改革の推進

我が国の電力、ガス、熱各エネルギー分野の供給構造は、市場ごとの縦割型産業構造という特徴を持っていたが、技術革新による各エネルギー源の利用の高効率化や用途の多様化を受け、非効率的な資源配分の仕組みとなっているとの問題意識の下で、三段階での電力、ガス、熱のエネルギーシステム改革を推進している。
そのねらいは、安定供給の確保、料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大であり、また、産業競争力を強化し、さらには海外市場の開拓・獲得することにあった。
電気・熱の自由化から2年、ガスの自由化から1年が経過し、新規参入が増加し、また、新たなサービスメニューが登場し、需要家の選択肢も拡大してきた。こうした中で、競争の促進に加えて、安全性の確保や安定供給、再生可能エネルギーの推進を含む環境適合、さらに自由化の下での需要家間の公平性確保といった公益的課題にも対応・両立するため、パリ協定を踏まえた脱炭素化への取組の必要性も念頭に、市場環境整備等に取り組む必要がある。

電力システム改革の推進

電力システム改革としては、広域系統運用の拡大、小売・発電の全面自由化及び法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を柱とする、三段階での電気事業法改正を実施した(2015年4月に電力広域的運営機関の設立、2015年9月に電力取引監視等委員会を設立し2016年4月に電力・ガス取引監視等委員会に改称、2016年4月に小売全面自由化の実施及び発電・送配電・小売のライセンス制の導入、2020年4月に発送電分離を実施予定)。
実際に、2016年4月に電気の小売全面自由化を開始して以降、既存の電力会社同士の競争や新規参入の拡大、多様な料金メニューや料金の低廉化が進展するなど、一定の成果が出ている(自由化後1年半(2017年10月)で、新電力の販売電力量シェアは約5%から約12%に増加、新規参入者数は300者弱から450者強に増加など)。
ガス、通信、石油といった分野から、業種の垣根を越えた電力分野への参入も進んでいる。また、電力会社同士の連携や、電力とガスといった業種やエリアの垣根を越えた連携も生まれており、エネルギーシステム改革は着実にその実現に向けて進展している。
小売及び発電市場の全面自由化を受け、一定程度競争は進展してきたが、更なる競争促進に向けた市場・環境整備が必要となる。こうした状況の下、更なる小売事業者間の競争活性化を図る観点から、旧一般電気事業者等が保有するベースロード電源に新規参入者がアクセスすることを可能とするベースロード市場の創設や、地域間連系線の利用に当たって入札価格の安い順に送電することを可能とする間接オークションの導入等を進める。#55
また、小売及び発電市場が全面自由化された結果、短期的なコスト競争力が追求される傾向が強まるとともに、諸外国と同様、再生可能エネルギーの大量導入に伴う市場価格の下落等の影響により、発電所の維持・建設投資全体が過少となり、供給力・調整力が不足する懸念がある。加えて、広域的な需給調整の実現による効率化といった課題も存在する。
こうした状況を踏まえ、今後、中長期的に適切な供給力・調整力を確保する容量市場や、電源の環境価値の取引を可能とする非化石価値取引市場といった電源・インフラ投資が維持・促進される仕組みの創設や、調整力を広域的に調達・運用することで需給調整の効率化を図る需給調整市場の創設に取り組む。#56
さらに、地域を越えた電力取引の拡大や出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大等にも対応する送配電ネットワークへの変革を図るため、既存の送配電ネットワークも最大限活用しつつ、コストの徹底削減、将来必要となる投資確保を可能とする託送制度等の在り方を検討していくことが必要である。
また、こうした市場設計の検討と併せて、2016年には「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」において、自由化に伴う財務会計面での課題への対応を検討した。その結果、原子力事故に係る賠償への備えに関する負担や廃炉に関する会計制度について、前者は需要家間の公平性や福島復興に資するという観点、後者は自由化の下でも適切な廃炉判断、円滑な廃炉実施がなされる環境を引き続き確保する観点から、託送料金の仕組みを利用することとし、福島第一原子力発電所の廃炉の資金管理・確保等と合わせて、必要な制度措置を講じた。#57
これらの取組に加えて、2030年以降も見据えた脱炭素化やデジタル化に係るイノベーションの進展等も踏まえ、公益的課題への対応、競争との両立等を図っていくための検討、取組を進めて行く必要がある。具体的には、将来の脱炭素化に向けては、従来以上に積極的な電源や送配電ネットワーク等へのインフラ投資が必要となるが、不確実性が高まる中で投資判断の予見性を向上させ、過小投資を回避するため、これらの投資が促進される仕組みの整備が求められる。また、AI・IoT等の新たなデジタル技術等によりシステム全体の高度化を進めるとともに、地域資源も活用した分散型ネットワークシステムに新技術を実装し、新たなシステムを構築する。この際、こうした新たなシステムの開発を担うプレーヤーを多様化することが求められる。さらに、火力・燃料の低炭素化、脱炭素化を進めていくため、省エネ法や高度化法といった規制的措置を導入しているが、これらの枠組みの実効性をより高めるため、非効率な石炭火力(超臨界以下)に対する、新設を制限することを含めたフェードアウトを促す仕組みや、2030年度に向けて着実な進捗を促すための中間評価の基準の設定等の具体的な措置を講じていくとともに、更なる脱炭素化に向けた先進的な取組(次世代クリーン火力技術開発、P2G等)を進める。加えて、グローバル市場を見据えた国際競争力のある事業体制整備と国際連携を図るため、事業者により進みつつあるグローバル展開を更に後押しする国内事業体制整備や制度改革の検討が求められる。そうした中で、総合エネルギー企業の競争力強化と国際展開や、資源国や新興国との国際連携を推進していく。また、不確実性が高まる中であらゆる選択肢を追求できる人材・技術・産業基盤の維持・強化とともに、競争原理の導入やオープンイノベーション、戦略的資源投入などによる技術開発戦略を政府としても再構築していくことが脱炭素化に向けて必要となる。#58
なお、電力システム改革と電源構成の関係については、電源の安全・安定的な利用の確保や世界最高水準の電力品質の維持といった観点を踏まえつつ、例えば再生可能エネルギーの導入拡大のための取組のように、望ましい電源構成を実現するための施策を講じる場合には、電力システム改革に関する詳細制度設計において、そうした施策と整合的になるよう配慮を行う。

ガスシステム改革の推進

ガスシステム改革については、電力システム改革と相まって、ガスが低廉・安全かつ安定的に供給され、消費者に新たなサービスなど多様な選択肢が示されるガスシステムの構築に向け、小売の全面自由化、LNG基地の在り方も含めた天然ガスの導管による供給インフラのアクセス向上と整備促進や簡易ガス事業制度の在り方などの改革を実施するため、ガス事業法を改正し、2017年4月1日からガスの小売全面自由化などを実施した。その結果、新規参入が拡大し、新たなサービスや料金メニューが出現するなど一定の成果が出ている(新規参入者のガス販売量シェアは約8%から約11%に増加(2017年4月~12月)、小売事業者の登録数は54社となり、このうち、新たに一般家庭へ供給を予定しているのは18社(2018年4月)、また、他社スイッチング件数は約6万件から約84万件に増加(2017年3月~2018年3月)など)。今後は、より競争的な市場環境を整備していくとともに、2022年4月1日に予定される大手ガス事業者の導管部門の法的分離を着実に実施する。
また、小売全面自由化後、ガス、石油、電力の異業種間での連携、地域を超えた新規参入の動きが出てきており、さらには、新規参入者に対し、ガスの卸や保安業務などのガス事業への新規参入に必要なサービスを提供する事業者の動きなども出てきていることから、ガスシステム改革は着実にその実現に向けて進展している。
ガスシステム改革の推進に当たっては、利用形態の多角化を促進することが重要な鍵となり、加えて、クリーンな天然ガス利用を促進することが、脱炭素化を実現するまでの主力エネルギー源として重要な方向性であり、総合的・戦略的な対応が今まで以上に求められる。
例えば、高効率なLNG火力発電所、環境調和性に優れたボイラー、エネルギー効率に優れた工業炉や熱電併給により高い省エネルギーを実現する天然ガスコージェネレーション、系統電力需給ピークを緩和するガス空調や船舶等輸送分野での燃料利用の拡大、さらに、燃料電池への水素供給のための原料としての役割も期待される。
特に、現在、船舶分野におけるLNGの主燃料化に向けた動きが着実に前進している。こうした新たな需要への政策的対応や、2016年策定の「今後の天然ガスパイプライン整備に関する指針」を踏まえた天然ガスパイプラインの整備等のガス利用を支えるインフラの整備を進めていくことも重要である。
また、ガス小売全面自由化の進捗状況も踏まえ、ガスがより低廉に供給されるよう、LNG基地の第三者利用の推進などガス取引の活性化に向けた施策や原料調達の低廉化のための取組についても検討していく。
さらに、パリ協定も踏まえた将来的なガスの脱炭素化に向けた水素関連等の技術開発を進めて行くことも重要である。

効率的な熱供給の推進

熱の有効利用に対する関心が高まる中、熱導管を面的に敷設して行う地域型の熱供給、都市再開発事業などに伴いビル単位での事業や生活機能の確保も意識した地点型の熱電一体供給など、冷温熱を供給するサービスの形態も多様化してきている。
こうした状況を踏まえ、熱電一体供給も含めたエネルギー供給の効率的実施の推進を目的として、電力・ガスのシステム改革と併せて、熱供給システム改革実施のため熱供給事業法を改正し、2016年4月1日から料金規制の原則撤廃等を実施した。
こうした中、エネルギーの低炭素化に向けては、熱をより有効に活用することや熱自体の供給源を低炭素化することに対する関心が高まっている。主に高温域を占める産業用に関しては、製造プロセス技術開発、省エネルギー設備の導入促進、コージェネレーションの利用や廃熱のカスケード利用促進を行うことが重要である。また、主に低温域を占める民生用に関しては、まずは省エネルギー住宅・ビルの普及により熱需要自体の削減を図るとともに、エネファームやヒートポンプなどの省エネルギー機器の普及を促進することが重要である。これらに加えて、引き続き省エネ法による規制を通じて熱の効率的な利用を促進する。
また、熱供給事業に関するシステム改革により熱電一体型の熱供給を行うための環境整備が進んだことを踏まえ、コージェネレーションや廃熱などのエネルギーを一定の地域で面的に利用する、地産地消型でのエネルギーの面的利用を推進する。さらに、バイオマスや太陽熱、未利用熱などの再生可能エネルギー熱の有効活用を図る。

国内エネルギー供給網の強靱化

国外から国内に資源を受け入れた後、石油製品への精製や電気への転換などを行い、需要家に供給するため、国内供給網についても、コストを抑制するための効率性を維持しつつ、大規模自然災害等への危機対応力が十分に確保されたものとするための総合的な政策を展開していく。
特に、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」及び「国土強靱化基本計画」に基づき、国内エネルギー供給網の強靱化を推進する。

石油備蓄等による海外からの供給危機への対応の強化

これまでは量的な充実を第一に進めてきた石油備蓄政策について、国内の石油需要動向やリスク等を勘案して、備蓄総量や国家備蓄における原油・製品の比率の見直しを進めてきた。引き続き、危機発生時における機動力を向上することに重点を置きつつ、国家備蓄原油の油種を我が国の製油所設備により適合したものに入れ替えることや、ホルムズ海峡の封鎖等の具体的緊急時を想定した対応訓練の強化、産油国やアジア消費国との協力強化等を進めていく。
「産油国共同備蓄事業」として、サウジアラビアやUAEの国営石油会社に対し、商用原油の東アジア向け中継・在庫拠点として我が国国内の石油タンクを貸し出し、供給危機時には我が国に優先して供給を受ける枠組みを開始しているが、これを国家備蓄や民間備蓄に準じる「第三の備蓄」として位置付けており、我が国と産油国双方の利益となる関係強化策として引き続き強力に推進する。
さらに、中国やASEAN諸国などIEA加盟国以外の石油需要量が増加する中、アジア地域のエネルギー安全保障を確保する観点から、中国やASEAN諸国等との備蓄協力を引き続き推進する。
加えて、国内の石油需要が減少していくことを見据え、国家備蓄石油及び国家備蓄基地施設の有効活用の方策について検討する。
LPガス備蓄については、2013年3月に2つの国家備蓄基地が完成し、5基地体制となった。同年8月末には、これら2基地に備蓄するため、米国からシェールガス随伴のLPガスを積んだ第一船が入港した。以来、国家備蓄LPガスの購入・蔵置を着実に進めてきた。今後も、我が国を取り巻くエネルギー安全保障の観点及び行政効率化の観点を踏まえ、将来の国内需要についても勘案し、現在の国家備蓄・民間備蓄あわせた90日分を堅持するとともに、その効率的な維持の在り方にもついて不断の見直しを行っていく。

「国内危機」(地震・雪害などの災害リスク等)への対応強化

供給サイドの強靱化

石油については、LPガスとともに、東日本大震災時にエネルギー供給の「最後の砦」としての役割を再認識されたことに鑑み、地震や豪雨・豪雪などの大規模災害など危機時において供給制約となる可能性のあるハード・ソフト両面の課題への対策を進める。
第一に、大規模災害時にあっても必要な石油供給量を確保しうるよう、石油産業(精製・元売)の各系列供給網全体で、石油供給にかかる業務継続・復旧目標を定め、製油所・油槽所から物流プロセス、SSに至る系列BCP・BCM(業務継続体制)を確立し、その格付けを定期的に行うことで対応能力の向上を進めていく。また、系列を超えた危機時の供給協力を円滑化すべく、石油備蓄法に基づく「災害時石油供給連携計画」の不断の見直しを行う。その際、被災後の供給量には限界が生じることを前提に、被災地からの緊急供給要請に対する供給優先順位付けの内容を含む訓練のPDCAを進める。
第二に、国土交通省による港湾整備事業等とも連携しつつ、石油コンビナート地区等の強靱化(製油所・油槽所における耐震・耐液状化、製油所間での供給バックアップ機能等の強化)を進めるとともに、中核SS(災害時に災害対応車両への優先給油の役割を担うSS)や小口燃料配送拠点(災害時に医療機関等の重要インフラへ燃料配送を行う拠点)の機能強化、住民拠点SS(災害時に被災地住民への燃料供給の役割を担うSS)の整備などを通じて最終供給を担うSSの災害対応能力を強化していく。
第三に、経済産業省資源エネルギー庁のみならず、内閣府、総務省消防庁、国土交通省、防衛省、警察庁等の関係省庁間で、危機時の石油供給を円滑化するとともに、石油業界や自治体も含めた訓練を継続的に進めていく。また、平時においては、輸送経路となる道路における耐災害性を強化する。また、関係省庁や都道府県をはじめとする自治体に対し、燃料の供給拠点へのアクセスについて、必要な啓開が行われるための体制の強化を働きかける。有事の際には、災害対策会議や関係自治体の防災担当部署を通じて、必要な燃料供給拠点への速やかな啓開を関係省庁に働きかける。
LPガスについては、従来のLPガス輸入基地への非常用電源車の配備に加え、災害時に地域における燃料供給拠点となる中核充填所の設備強化を進める。また、危機時の供給協力を円滑に行う「災害時石油ガス供給連携計画」の不断の見直しを行い、同計画に基づいた訓練を実施するなど、迅速かつ確実な供給体制を整備する。
電力供給についても、2015年に設置された電力広域的運営推進機関が中心となって東西の周波数変換設備や地域間連系線等の送電インフラの増強を進めるとともに、電力システム改革後においても、送配電網にかかる投資回収を制度的に保証することで、災害発生時の電力供給の基盤となる送配電網の建設・保守が確実に行われる仕組みとする。また、地域における電源の分散化など、電力供給の強靱化を効率的に推進する。さらに、電気設備の耐性評価や復旧迅速化対策を進めることで、災害に強い電力システムの構築に取り組む。
天然ガスについても、供給体制の強靱化を進めるべく、LNG受入基地間での補完体制を強化するため、基地の整備・機能強化、太平洋側と日本海側の輸送路、天然ガスパイプラインの整備などに向けて、検討を進めていくこととするとともに、都市ガス分野における耐震化を引き続き進めていく。
また、研究開発・実用化の取組が進められている、人工衛星等の宇宙情報インフラやエネルギー関連施設・機器の状況を把握するセンサー等を用いたシステムを通じて、災害の予兆や災害発生後の国土・施設の状況を迅速に把握することができる情報システムを積極的に活用していくことで、供給サイドの更なる強靱化を図る。

需要サイドの強靱化

被災直後の交通網等の混乱を想定すれば、「供給サイド」の取組だけでは、発生直後の数日間、通信網等の重要インフラの利用に必要となる石油・LPガス供給を行うことは容易ではない。このため、被災地域における災害対応の実施責任者である地方自治体や関係省庁において、平時及び災害時において燃料供給の円滑な実施のために果たすべき役割を周知する。また、社会の重要インフラと呼びうる政府庁舎や自治体庁舎、通信、放送、金融、拠点病院、学校、避難所、大型商業施設等の施設では、停電した場合でも非常用電源を稼働させて業務を継続し、炊き出し等で国民生活を支えられるよう、石油・LPガスの燃料備蓄を含め個々の状況に応じた準備を行うよう対応を進める。さらに、各事業者・世帯レベルでも、自家用車へのガソリン・軽油のこまめな補給や灯油の備蓄等の備えを促す。また、災害時における非常用電源については、各企業の自家発電設備、燃料備蓄・調達等を関係企業間や地域内で融通する仕組みの構築を促進する。
なお、再生可能エネルギーやコージェネレーション、蓄電池システムなどによる分散型エネルギーシステムは、危機時における需要サイドの対応力を高めるものであり、分散型エネルギーシステムの構築を進めていく。

二次エネルギー構造の改善

現在の二次エネルギー構造は、電気、熱及びガソリン等石油製品が担い、特に多くのエネルギー源から転換することができる利便性の高い電気が中心的な役割を担い、ネットワークを通して最終消費者に供給されている。
一方、電気は供給と消費の同時性の制約に加え、その供給は送配電網に頼っており、ネットワークにつながっていなかったり、途切れた場合には供給ができなくなるという課題も抱えている。
こうした課題に対応するためには、エネルギーを如何に貯蔵して輸送するのかなど、二次エネルギーの供給方法の多様化等を含めて検討していくことが重要となる。
このような観点から、蓄電池などの技術の活用は、従来の二次エネルギー構造の変革を促す可能性を持つものであり、将来の社会を支える二次エネルギー構造の在り方を視野に入れて、着実に取組を進めていく必要がある。

電気・熱を更に効率的に利用するためのコージェネレーションの推進

需要家側において熱と電気を一体として活用することで、高効率なエネルギー利用を実現するコージェネレーションは、ハイブリッド型の二次エネルギーである。省エネルギー性に加え、送電ロスが少なく、再生可能エネルギーとの親和性もあり、電力需給ピークの緩和、電源構成の多様化・分散化、災害に対する強靱性を持つ。このような家庭用を含めたコージェネレーションの導入促進を図るため、導入支援策の推進とともに、燃料電池を含むコージェネレーションにより発電される電気の取引の円滑化等の具体化に向けて対応を進める。

再生可能エネルギーの導入拡大と調整力の脱炭素化に資する蓄電池の活用

蓄電池は、脱炭素化に向けたキーテクノロジーの一つとして、再生可能エネルギーの導入や、エネルギー需給構造の安定性の強化に貢献する、大きな可能性を持つ技術である。
最近の安全性の向上や充放電ロスの低減、エネルギー密度の増加、長寿命化による性能向上によって、従来の用途に加え、車載用、住宅・ビル・事業用等の定置用の用途も広がりつつある。
近年、世界的にその本格的な社会実装に向けた動きが活発化している。我が国においても、再生可能エネルギーの更なる導入拡大が見込まれる中、発電量が天候によって左右される太陽光発電や風力発電の導入にあたっては、系統全体の需要と供給を一致させるため、火力・揚水等の電源を用いて出力変動を調整することが必要となる。再生可能エネルギーの大量導入が進めば、これらの変動対策がより求められ、火力電源・揚水等の既存の調整力では不足するといった課題が顕在化してくる。蓄電池は、こうした再生可能エネルギーの導入拡大に伴う課題に対するソリューションの一つとして活用が期待されている。
既に、家庭等の需要家における再生可能エネルギーの自家消費やピークシフト、BCP、あるいは系統用大型蓄電池やVPPによるアンシラリーサービスの提供、V2Gといった形で、蓄電池のエネルギーシステムへの関わり方は多様になりつつある。再生可能エネルギーの導入拡大や電力システムの脱炭素化、電力の安定供給・BCPといった観点から、今後、我が国において蓄電技術の活用を更に推進するため、技術開発、コストダウン、制度整備等の個別の方策について早急に検討を行い、官民で将来ビジョンを共有しながら、課題解決のための取組を進める。

自動車等の様々な分野において需要家が多様なエネルギー源を選択できる環境整備の促進

自動車の分野においては、ガソリン、軽油等の石油製品間の競争のみならず、バイオ燃料、電力、天然ガス、LPガス、さらに水素をエネルギー源として利用することが可能となり、需要家の選択を通じて多様なエネルギー源が競争する環境が整いつつある。
こうした環境では、需要家がより費用対効果に優れた製品や、温室効果ガスの排出量が少ないエネルギー源を選択できるだけでなく、技術革新を促し、石油製品を動力源とする場合でも、トップランナー制度の下で1995年以降の約20年間で78%改善してきた燃費効率を更に向上させて温室効果ガスの排出量の抑制を加速させていくことにつながる。
エネルギー源の間の競争を促進するためには、どのエネルギー源を使う場合でも、需要家に対して円滑に供給される環境を実現することが不可欠である。
次世代自動車(ハイブリッド自動車、EV、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル車、CNG自動車等)の普及・拡大に当たっては、研究開発に加え、インフラ整備や規制緩和が不可欠であり、官民が協力してEV及びプラグインハイブリッド自動車に必要な充電器といった次世代自動車のエネルギー充填設備の普及に努める。また、電気自動車の場合、電力システム改革による小売全面自由化によって、電気自動車の電気充填に最も適したサービスを行う事業者が輩出されることが期待される。燃料電池自動車については、安定収益の裏付けのあるステーション整備と整備・運営コストの低減を通じた自立的な水素販売ビジネスの展開に向け、規制改革、技術開発、官民一体による水素ステーションの戦略的整備を三位一体で推進する。こうした取組により、次世代自動車については、2030年までに新車販売に占める割合を5割から7割とすることを目指す。
また、2030年においても内燃機関を搭載する自動車が一定の割合を占めると考えられることから、引き続き、バイオ燃料も運輸部門におけるエネルギー源の多様化、低炭素化の有力手段の一つである。特に、近く商用化が期待されている国産の次世代バイオエタノールについては、導入初期段階での競争力確保に配慮する観点から、導入に係る優遇措置を検討し、2019年度内に具体化する。
一方、輸入が中心となっている、食料由来の第一世代バイオエタノールについては、食料競合への配慮や環境影響の一層の低減を図る観点から、国際動向や次世代バイオエタノールの普及状況、他のエネルギー選択との費用対効果の比較を踏まえつつ、導入のあり方について随時検証していく。併せて、当面堅調な需要が見込まれる軽油については、バイオディーゼル燃料の研究開発動向や世界的な導入動向等を踏まえつつ、今後のバイオディーゼル燃料の導入のあり方を検討していく。
このような多様なエネルギー源の利用を進めていく取組は、運輸部門において、自動車に限らず、航空機におけるバイオ燃料や、船舶におけるLNGやLPガスの主燃料としての活用などで進んでいくと見込まれる。業務・家庭部門では、エネファームや大型の燃料電池コジェネにおいて水素が利用され、CO2冷媒ヒートポンプにおいて空気熱が利用されるなどの導入が進んでいるところであり、電力システム改革によって、電源自体も選択できるサービスの提供が進展するなど、今後、一層の多様化が進んでいく。
今後、更に多くの分野で多様なエネルギー源を利用する取組を加速していくため、エネルギー関連技術に関する最新の研究開発動向、世界の取組状況、新たな利用形態を普及していく上での制度面などの障害を整理して、研究開発などの戦略的な取組を進めていく。

エネルギー産業政策の展開

電力システム改革等の制度改革を起爆剤とするエネルギー産業構造の大転換

電気は最も利用用途が広い二次エネルギーであり、国民生活、経済活動のあらゆる局面を支えるものであることから、電力システム改革は他のエネルギー市場の在り方にも大きな影響を与えることとなる。
発電事業については、ガス事業者、石油事業者、さらに自家発電を持つ企業や再生可能エネルギー供給事業者が参入し、エネルギー源ごとに供給者が棲み分けていた環境が大きく崩れることになる。また、小売事業においても、需要家の多様なニーズを取り込む技術的ノウハウを持つ情報通信事業者など異分野からの参入が予想されるところであり、様々な産業分野を巻き込んで電力市場の構造転換が大きく進んでいくことが期待される。
電力市場の自由化を進めた先進国では、電気・ガスの複合サービスの提供が一般化しており、州ごとに電力市場の規制形態が異なる米国では、自由化されている州において需要家の需要量を抑制する手法を含めた電力需給管理システムの利用を拡大することで、効率的な投資を実現し、電気料金の抑制に取り組んでいる。
電力システム改革は、エネルギー供給事業者の相互参入、新たな技術やサービスのノウハウを持つ様々な新規参入者の参入を促すことで、産業構造を抜本的に変革するとともに、ガスシステム改革等も同時に進め、他のエネルギー産業にも影響が波及していくことで、エネルギー市場を活性化し、経済成長の起爆剤となっていくことが期待される。
また、我が国においても、エネルギーの需給を反映した信頼性や透明性のある価格指標が確立されるよう、投機マネーの過剰な流入を適切に防止するなどの課題に留意しつつ、1990年代後半の石油自由化に伴って整備された石油市場に加え、電力、さらにはLNGといった燃料についても検討し、エネルギーの先物市場を整備していくことが期待されている。

総合的なエネルギー供給サービスを行う企業等の創出

既存エネルギー供給事業者の相互市場参入による総合エネルギー企業化

制度改革を進め、分野ごとに縦割型の構造を持つエネルギー市場を、統合された市場構造へと転換することで、エネルギー関係企業が相互に市場参入を行える環境を整備し、それぞれの強みを基礎にして効率性や付加価値の高いサービスの供給を競争しながら新たな需要を獲得していく成長戦略を描き出すことが可能となる。
このような将来を見通せる新たな競争環境は、既存のエネルギー企業を、様々なエネルギー供給サービスを行う総合エネルギー企業へと発展していくことを促し、事業の多角化による収益源の拡大や、事業分野ごとに重複して保有されていた設備・事業部等の集約化等を可能とする。これにより、総合エネルギー企業は、経営基盤の強化を進め、活発な競争を勝ち抜くための新たな投資を積極的に推進していく主体となるとともに、異分野から参入してきた新規事業者との競争や連携を通じて、産業全体の効率性の向上や新たな市場の開拓を進め、我が国の経済成長を牽引していくことが期待される。
また、エネルギーに関わる様々な事業を行う運営能力や経営基盤を強化した総合エネルギー企業は、エネルギー需要が拡大する国際市場を開拓していく役割を担っていくことも求められる。2000年前後から自由化が本格化した欧州では、国内市場での競争が激化する一方、新たに開かれた国外市場でシェアを拡大する機会が増大している。こうした事業環境変化を受け、欧州のエネルギー企業各社は、積極的な国外展開や異分野への進出等を通じて、総合エネルギー企業化を図っている。今後、我が国でも、システム改革の進展に伴い、総合エネルギー企業が登場することが期待される。
こうした中、エネルギー関連企業による電力・ガス市場への相互参入だけではなく、燃料調達やトレーディング、海外IPP事業やデジタル技術を活用した新事業を含む多様な分野で内外の企業間連携が進みつつある。こうした新たな連携や総合エネルギー企業化に向けた取組を通じた競争力強化や国際展開が更に進んでいくための環境整備を、引き続き徹底して進めていく。

地域の特性に応じて総合的なエネルギー需給管理を行う分散型・地産地消型エネルギーシステム

太陽光発電や燃料電池を含めたコージェネレーション、EV・定置用蓄電池等の分散型エネルギーリソースの普及とエネルギーマネジメント技術の高度化に伴い、分散型エネルギーシステムの拡大が進んでいる。
地域のエネルギーを地域で有効活用する地産地消型エネルギーシステムは、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの普及拡大、エネルギーシステムの強靭化に貢献する取組として重要であり、また、コンパクトシティや交通システムの構築等、まちづくりと一体的にその導入が進められることで、地域の活性化にも貢献し、「地域循環共生圏」(第5次環境基本計画。2018年4月17日閣議決定)の形成にも寄与する。
地産地消型エネルギーシステムの中核は、“熱”を中心とする地域のエネルギー資源の有効活用と、それを実現するためのエネルギーマネジメントにある。熱エネルギーは遠隔地への供給が困難であるため、地消することが必要である。また、エネルギーを地消する際には、熱を複数の需要家群で融通し、無駄なく活用する、いわゆるエネルギーの面的利用の取組や、エネルギーの供給条件等に応じて柔軟に需要側のエネルギー消費量や消費パターンをコントロールする、いわゆるディマンドコントロールの取組など、高度なエネルギーマネジメント技術を活用した取組を推進することが重要である。
こうしたエネルギーシステムの分散化の動きは、ディマンドリスポンス等の活性化につながり、エネルギー供給構造の効率化が図られる。また、非常時にも、エネルギーの安定的な供給を確保することが可能となり、生活インフラを支え、企業等の事業継続性も強化する効果が期待される。
地産地消型エネルギーシステムの普及に向けては、国、自治体が連携し、先例となるべき優れたエネルギーシステムの構築を後押しするとともに、CEMS(一定のコミュニティ単位のエネルギー需給管理システム)、スマートメーターからの情報をHEMS(家庭単位のエネルギー需給管理システム)に伝達する手法(Bルート)等の基盤技術、エコーネット・ライト(Echonet-Lite(HEMSと家庭内機器との間の通信規格))等の標準インターフェイス等、これまでの実証実験等の成果を最大限活用しつつ、エネルギーシステム構築のための関係者調整等のノウハウ等の共有化を図る。
また、分散型エネルギーリソースの普及は、こうしたリソースをIoTにより遠隔制御し、電力の需給バランスの調整に活用するバーチャルパワープラントを構成する土台となる。地産地消型エネルギーシステムの普及を進めるとともに、新たなエネルギーサービスを展開するエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスの創出を図る。

エネルギー分野における新市場の創出と、国際展開の強化による成長戦略の実現

加速する技術革新は、エネルギー分野において新たな市場を生み出す可能性をもたらしている。例えば、電気製品の長時間駆動を可能とする蓄電池技術の向上は、これまで石油製品を動力源としていた自動車を電気で駆動することを可能とするに至った。情報通信のデジタル化・大容量化は、需要家のエネルギー消費の実態を個別・詳細に分析することを可能とし、エネルギーマネジメントを通じて需要の適正管理を可能とする新たなサービスを生み出すとともに、エネルギー需給バランスについて、供給量のみではなく、需要量を管理することでバランスさせることも可能としている。また、AI・IoT等の新たな技術は、分散型の新たなエネルギーシステムの構築を始め、需給予測の高度化、発電所運転の最適化・更なる効率化といった更なる可能性を秘めている。こうした新たな技術のエネルギー分野での実装を進めていく。
こうした新たな技術は、従来のエネルギー供給事業者に固有のものではなく、異業種において発展してきたものが多数を占める。一方、優れた技術であっても、国際市場において急速にコモディティ化することで競争上の優位を喪失していくことが繰り返されており、新製品や新サービスの効率的な供給体制と、市場のニーズを常時取り込み、不断の革新を続けていく事業体制をいち早く確立することが必要である。
電力システム改革を始めとする制度改革は、エネルギー分野を開放し、優れた技術を有する異業種の事業者の参入を促進することとなり、こうした新規事業者がエネルギー分野の顧客との距離を狭め、新たな価値を見つけ出して新市場を創造していく重要な契機となるものであり、こうした取組により、エネルギー分野を我が国の経済成長を牽引する有望分野として発展させていく。さらに、我が国が蓄積してきたエネルギーに関連する様々な先端技術と効果的な運用の経験を、エネルギー需要が増大するアジア等において展開することで、需要増大に伴う問題を緩和することに貢献しつつ、アジア等の需要拡大と一体となって成長していく戦略的な取組を推進する。
また、技術革新と併せ、エネルギー分野においても、とりわけ電力分野を中心にサイバー攻撃の脅威が高まっている。大規模なサイバー攻撃発生時にも事業継続が可能であることは、国民生活や経済社会の安定に不可欠であり、日本の立地競争力の強化にもつながる。また、高度なサイバーセキュリティは、エネルギー分野に係るインフラシステム輸出についても、激しい国際競争に勝ち抜く力となる。サイバーセキュリティ対策の強化は我が国の持続的成長に資するものである。このため、当該分野におけるサイバーセキュリティの向上を図るべく、情報共有・分析を中心とした業界大での取組の強化や官民での先進国との連携強化に取り組みつつ、更なる対策に取り組む。

蓄電池、水素・燃料電池など我が国がリードする先端技術の市場拡大

蓄電池の国際市場の規模は、拡大していくと予想されている。今後、利用用途が世界的にも大きく拡大していく状況に対し、引き続き、技術開発、国際標準化等により低コスト化・高性能化を図っていく。
また、我が国では、燃料電池の技術的優位性を背景に、世界に先駆けた家庭用燃料電池(エネファーム)の一般家庭への導入、燃料電池自動車の商用販売や燃料電池バス運行、さらには液化水素船を用いた国際水素サプライチェーンの開発等を行うなど、水素関係技術において世界をリードしている。
我が国には、こうした技術のほか、多くの先端的な省エネルギー・再生可能エネルギー技術が存在し、これらを実際に活用していくことで新たな市場を創出していくことが可能である。電力システム改革を始めとする制度改革の推進と併せて、新たな技術の実装化を進めるための実証事業などを通じて、世界最先端のエネルギー関連市場の創出を進めていく。

インフラ輸出等を通じたエネルギー産業の国際展開の強化

今後、世界でエネルギー需要が更に拡大するとともに、パリ協定を踏まえ、持続的な経済成長と気候変動対策を同時に実現していく必要がある。こうした中、世界で起こるエネルギー転換・脱炭素化を、我が国が厳しいエネルギー制約の中で蓄積してきた技術やノウハウでけん引していくことが重要である。このため、各国のエネルギー情勢を分析しつつ、相手国のニーズに応じ、我が国の持つ優れた低炭素・脱炭素技術の幅広い選択肢を提案していく。とりわけ電力、ガス市場の全面自由化後、電力・ガス企業は国際展開を積極化しており、こうした状況も踏まえ、政策金融を活用した事業における日本のユーティリティ企業等の参入促進を始めとした国際展開を図るための投資環境整備や、適切なインセンティブ設計を含む制度改革に取り組み、電力・ガスを始めとしたエネルギー産業の国際競争力の強化及び国際展開を推進する。
産業界は、個別の要素技術・ノウハウの取引に留まるのではなく、技術やノウハウを統合してインフラやエネルギー供給事業として海外に供給するための、より広い視点に基づいた海外市場の開拓に取り組むことが求められる。
一方、政府は、我が国の企業があまり進出してきていない地域を含めて事業を展開することを促すため、我が国が持つ海外の人的ネットワークや政府間の良好な関係を最大限に活用し、新たな市場に挑戦しようとする我が国の企業が海外において安心して活動できるようにするための環境の整備に向けた取組を強化する。
1) 技術やノウハウを一体化したインフラ輸出の強化
我が国の産業は、エネルギーを効率的に活用するための技術やノウハウを蓄積しているにも関わらず、それらを総合化して国際展開することが少なかった。
今後は、こうした技術やノウハウを統合化して、相手国のニーズに応じ、我が国の持つ優れた低炭素・脱炭素技術の幅広い選択肢を提案し、世界のエネルギー転換・脱炭素化を牽引する。
そのため、上流から下流までの包括的な事業運営(一気通貫サービスの提供)や現地・第三国企業との連携による競争力強化、国際標準の積極的な獲得や相手国における制度構築支援、官民ミッションの派遣や海外実証事業による現地企業とのパートナリング等を積極的に進めていく。
特に、エネルギーマネジメントシステムは、再生可能エネルギーの大量導入により系統不安定化が課題となっている先進国や資源国、エネルギー需給体制が未成熟な新興国・途上国において、エネルギー需給構造の安定化に貢献していくことが期待されることから、事業規模の大小に関わらず、各国の実態などを踏まえて国際市場への進出を促進する。
2) アジアを始めとした世界のエネルギー供給事業への積極的な参画
世界に先駆けてLNGを本格的に利用してきた我が国の経験と整備されたインフラは、アジアの国々が今後LNGの利用を拡大していく際に共用できる資産として活用できる可能性がある。アジアの国々が、LNGの導入を進めるための制度やインフラの整備を進めていく際、我が国が、上流も含めたLNGサプライチェーン整備へのファイナンス・技術協力を行うことや、貯蔵施設を活用した仲介事業を行うことで、アジアのLNG導入国が効率的に新たなエネルギー供給構造を構築していくことを支援することが可能である。
LPガスについても、我が国は安全性・利便性を備えたガス機器や保安・販売システムを構築してきており、家庭用を中心としてLPガスの需要拡大が続くアジア地域への技術協力や現地販売企業とのJV方式等による進出により、安全性の向上・利便性の拡大に寄与することが可能である。
こうした状況を活かして我が国のエネルギー産業が海外での活動を拡大する機会とし、事業基盤の再構築にもつなげる。
また、アジア地域において今後も伸びていく石油や石油化学製品への需要の動きを捉え、現地の国営石油会社や化学産業・商社等とのJV方式による石油コンビナート・販売事業の海外展開は、我が国石油産業の新たな事業ポートフォリオとなりうるが、アジアの供給能力が急速に伸びている現下の状況に鑑みれば、アジアにおける投資を早急に行う必要があると考えられる。
これまで国内での石油精製・元売・販売事業を主要な収益源としてきた我が国の石油産業が、国際展開を進める経営判断を行うよう促すべく、政府は技術協力や政府間対話により側面支援を進める。

国際協力の展開

世界のエネルギー需要の重心がアジアにシフトしていることや、米国におけるシェール革命などの国際的なエネルギー需給構造の変化、天然ガス、再生可能エネルギー、原子力の利用拡大等エネルギー源の多様化、地球環境問題への対応など、世界のエネルギーをめぐる課題が拡大、深化し、一層複雑化してきている。
エネルギー需給構造は、国際的なエネルギー供給構造の変化、既存のエネルギー分野の垣根を崩していく世界的な技術革新の進展、地球温暖化対策、資源開発事業の大規模化による国際コンソーシアムによる取組の増加などによって、国際的な動きに左右されやすくなっており、その状況下で、各国がエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには一国での取組だけでなく、国際的な協力を拡大することが重要となっている。
こうした状況の変化を踏まえ、我が国のエネルギー需給構造上、特に密接な関係のある国や機関との関係では、より戦略的、包括的なエネルギー協力の枠組みを構築していくことが重要となる。

エネルギー国際協力体制の拡大・深化

多国間エネルギー協力の枠組みの拡大

緊急時対応や広範なエネルギー政策分野で豊富な蓄積を有するIEAや、IAEAなどの事務局機能も充実した安定的な多国間の枠組み、G7、G20、アジア太平洋経済協力(APEC)などの国際的・地域的なフォーラムに積極的に貢献していく。
さらに、エネルギー需要が大きく伸びていくアジア地域のエネルギー需給の安定性を向上するための取組について、我が国が主導的な役割を果たしていくことは、我が国のエネルギー安全保障環境をも改善することであり、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)を中核機関として、東アジアサミット(EAS)をより実効性の高い多国間のエネルギー安全保障を議論することができる枠組みへと高度化していく。
また、産消対話のための国際エネルギーフォーラム(IEF)、クリーンエネルギー大臣会合(CEM)、IRENA、国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)などの特定テーマの多国間枠組みにおいて、我が国の政策や技術の強みを活かし、国際場裏の世論形成をリードしていく。

二国間エネルギー協力体制の高度化

二国間の連携については、資源・エネルギーの確保やエネルギー産業の国際展開を推し進めるため、石油、天然ガス、石炭、鉱物などの資源国、高効率火力発電、原子力、再生可能エネルギー・省エネルギー技術、エネルギーマネジメントシステム等の潜在的な市場となる国との二国間関係を強化していく。特に、エネルギー需給構造において大きな影響力を有する米国、ロシア、中国との連携強化も深めていく。
1) 日米のエネルギー協力関係の強化
LNGをはじめ、LPガスや原油など、米国から日本への資源輸出は増加の傾向にある。加えて、今後伸びゆくアジアのLNG需要を開拓していくため、インフラ整備や規制整備、人材育成などについて日米で連携して取り組む。CCUSを含む高効率石炭火力発電の技術の展開についても協力を進める。CCUSについては、日米両政府による協力覚書(2015年文書署名、2017年改訂)の下、研究開発や第三国も含めたプロジェクトを推進する。原子力分野では、民生用原子力協力に関する日米二国間委員会などの枠組みを活用した研究開発協力や産業協力などを通じ、日米はパートナーとして、原子力の平和的利用、核不拡散、核セキュリティ確保などを国際的に確保しながら原子力を利用する体制を強化するための重要な役割を担っている。日米による協力を両国間のみを対象とすることなく、アジア、中東、ロシアなどそれぞれの地域の特徴とニーズを踏まえて、両国が協力して国際展開していくことも重要となる。現在の日米のエネルギー協力の枠組みを、より多様なエネルギー源に拡げるとともに、アジア・太平洋地域のエネルギー需給構造が今後大きく変化していくことを踏まえ、2017年に首脳間で合意した日米戦略エネルギーパートナーシップの下、包括的な日米間のエネルギー協力をより一層深化させていく。
2) 日露のエネルギー協力関係の強化
ロシアについては、石油・ガス販路の欧州域外への多角化、ロシア経済の近代化、省エネルギーの推進、東シベリア・極東地域開発等、ロシア側にとっての喫緊の課題を十分に認識し、国際的な情勢を踏まえつつ、戦略的視点に立って協力関係を検討していくことが重要であり、化石燃料分野や、省エネルギー・再生可能エネルギー分野、原子力分野における協力を進めていく。
3) アジア各国とのエネルギー協力関係の強化
著しいエネルギー需要の増加が見込まれるアジアの新興国との協力強化は、アジア地域、さらには、我が国のエネルギー安全保障の強化、エネルギー産業の潜在的な市場の開拓を進める上で重要な課題である。
世界最大のエネルギー消費国となった中国は、国際エネルギー市場での存在感を高めており、そのエネルギー情勢や政策の動向は、国際エネルギー情勢にも影響を与えうることを念頭において協力を進めることが重要である。合理的なLNG調達のための柔軟かつ透明性の高いLNG市場の構築など、消費国・輸入国として共通課題となるような問題に関しては、適切な協調関係を構築する。また、第3国における低炭素エネルギーインフラの開発を、ルールに基づき自由で開かれた形で、日中で協力して進める。
インドは、世界第3位のエネルギー消費国であり2040年までに約3倍の発電容量の増加が見込まれている。インド政府は2022年までに再生可能エネルギーを175GW導入する目標を掲げており、系統の不安定化が懸念されている。
我が国とインドの間では、2007年以来、9回の日印エネルギー対話を開催し、包括的なエネルギー協力を推進してきている。具体的には、増大するエネルギー需要の抑制につながる省エネルギー政策・制度の整備支援、省エネルギー・再生可能エネルギー・スマートコミュニティなどの実証事業などによる我が国の技術導入支援、石炭の高効率かつクリーンな利用の推進や安定した電力システムの構築、さらにLNGの低廉な調達に向けた共同研究など、エネルギー消費国同士の連携を進めている。政府間協力に加え、官民ラウンドテーブルや技術展示会・商談会を併催するなど、官民一体の協力や産業間の協力も含めた協力内容の充実と拡大を進めており、引き続き、推進していく。
また、アジア各国とのエネルギー協力については、二国間のエネルギー対話の場を利用し、各国におけるエネルギー情勢を把握しつつ、エネルギー政策の動向や個別インフラプロジェクトの推進に関する二国間協力について検討を進める。さらに、エネルギー産業の潜在的な市場の開拓を進める観点から、アジアのLNG導入に向け、上流も含めたLNGサプライチェーン整備へのファイナンス・人材育成等の協力や、石油コンビナート・販売事業の海外展開など、エネルギー供給事業への積極的な参画を進める。類似のエネルギー需給構造を有する韓国などアジア各国との関係について、天然ガスなどのアジアプレミアムの解消、原子力発電所の安全性確保、省エネルギー対策の強化、地球温暖化対策など、多くの分野で協力を進めることが可能であり、例えば、天然ガス分野における韓国とのガス対話等、連携を深めていく。
特に、我が国を取り巻く中国、東南アジア、インドを始めとする新興国においては、エネルギー需要の著しい増大により、原子力発電の利用を指向している。こうした中で、原子力発電所の安全性確保は各国の共通の課題となっており、東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験から得られた教訓を共有することで、世界の原子力安全の向上や原子力の平和的利用に貢献していく。
4) その他地域における各国とのエネルギー協力関係
中東地域各国とのエネルギー協力関係は、引き続き、安定的な石油・天然ガスの供給確保の観点から重要であり、サウジアラビアとの産業協力タスクフォースや日・サウジ・ビジョン2030共同グループに代表されるような、貿易・投資分野を含めた幅広い協力関係の強化を推進していく。
加えて、中東地域は、急速な経済発展に伴いエネルギー消費が大幅に増加することが見込まれている。このため、化石燃料の消費量を抑制し、輸出原油を確保する取組を始めている。こうした観点から、省エネルギーの推進に向けた取組の支援や原子力、再生可能エネルギー分野における協力を実施していく。
欧州においては、仏国と、原子力分野で、核燃料サイクルや高速炉開発に加え、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応や共同開発原子炉の国際展開などの協力が進展しており、引き続き、「原子力エネルギーに関する日仏委員会」等を通じて、協力を一層強化していく。また、英国についても、日英原子力対話等を通じて、廃炉技術を含む研究開発や競争環境下における原子力事業の在り方等について、知見を共有していく。その他、日欧間で共通するエネルギー政策の課題などに関する情報交換等の協力を進めていく。
また、民間ベースで活発にエネルギー貿易が行われている豪州などとの協力基盤を更に安定化させていくとともに、アフリカ各国、中南米など、各国との資源確保やインフラ輸出などの重要性に応じ、世界のあらゆる地域と全方位でエネルギー協力関係の構築を進めていく。

地球温暖化の本質的解決に向けた我が国のエネルギー関連先端技術導入支援を中心とした国際貢献

2015年12月に開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、2020年以降、全ての国が参加する公平で実効的な国際枠組みであるパリ協定が採択された。同協定には、産業革命前と比べた気温上昇を2度より十分下方に抑えること、更に1.5度までに抑えるよう努力することなどが盛り込まれた。その後、各国においてパリ協定の批准が進み、2016年11月に発効した。#59パリ協定の発効は、世界の多くの国が温暖化対策に積極的に取組んでいることを示す象徴的な出来事と言える。2017年6月には米国がパリ協定からの脱退意向を表明したが、この直後、我が国は、パリ協定の実施に向けての強固な意思を表明したことをはじめ、世界各国がパリ協定に対するコミットメントを再表明した。
温室効果ガスの排出量は、今や途上国が先進国の排出量を逆転する状況となり、地球温暖化問題の本質的な解決のためには、国内の排出削減はもとより、とりわけ排出量が急増している新興国・途上国を含めた世界全体の温室効果ガス排出量の大幅削減を行うことが急務である。
COP21では、地球温暖化対策におけるイノベーションの重要性を踏まえ、クリーンエネルギー分野の研究開発についての官民投資拡大を促す有志国のイニシアティブとして、日本を含む主要22か国とEUにより、「ミッション・イノベーション(Mission Innovation)」が合意された。合意した国々によるクリーンエネルギーの研究開発投資額は世界の80%超に上る。ミッション・イノベーションでは、2016年から5年間で参加国のクリーンエネルギー分野の政府研究開発の支出を150億米ドルから、2倍の300億米ドルまで拡大することを目指しており、日本としては、水素関連技術などのクリーンエネルギー分野の革新的な技術開発を進めていく。
また、環境負荷を低減する様々な技術やノウハウを持つ我が国の位置付けを最大限に活かすべく、イノベーションの加速を通じた地球温暖化問題解決のため、世界の産学官トップが一堂に会し、議論する「イノベーション・フォー・クールアース・フォーラム(ICEF: Innovation for Cool Earth Forum)」を毎年開催するとともに、途上国における低炭素・脱炭素技術の展開を推進するため、公的金融手段と民間資金を有効に活用できる仕組み等により、我が国がリーダーシップを発揮しつつ、世界全体で技術革新・展開を加速させていく取組を進める。
具体的に先端エネルギー関連技術の実装化を世界で進めていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギー・水素等を含め、我が国の持つ優れた低炭素・脱炭素技術の幅広い選択肢を提案し、世界のエネルギー転換・脱炭素化を牽引する。
今後、温室効果ガスを大幅に削減していくためには、国内における自らの温室効果ガス排出削減を実現していくことはもとより、温室効果ガス削減に資する環境性能の優れた製品・サービス等を国内外に展開し、世界全体の大幅削減の実現に貢献していくことが重要である。2018年3月に経済産業省において策定された「温室効果ガス排出削減定量化ガイドライン」に基づき、産業界は自らの削減貢献量を定量化し、投資家・消費者などのステークホルダーに対する情報発信を通じて、世界全体の排出削減に貢献しつつ、我が国の更なる経済成長につなげていくことが期待される。併せて、途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価するとともに、我が国の削減目標の達成に活用するため二国間オフセット・クレジット制度(JCM)を積極的に推進していく。また、日本の海事業界の国際競争力強化を視野に入れつつ日本が主導し2018年4月に採択した国際海事機関(IMO)の「GHG削減戦略」や、2016年10月に決議された国際民間航空機関(ICAO)の「市場メカニズムを活用した排出削減制度」を踏まえ、国際海運・航空からの温室効果ガスの排出削減を進めていく。

技術開発の推進

エネルギー関係技術開発の計画・ロードマップ

多くの資源を海外に依存せざるを得ないという、我が国が抱えるエネルギー需給構造上の脆弱性に対して、エネルギー政策が現在の技術や供給構造の延長線上にある限り、根本的な解決を見出すことは容易ではない。さらに、パリ協定を踏まえた「地球温暖化対策計画」では、「我が国は、パリ協定を踏まえ、全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの下、主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す。このような大幅な排出削減は、従来の取組の延長では実現が困難である。したがって、抜本的排出削減を可能とする革新的技術の開発・普及などイノベーションによる解決を最大限に追求するとともに、国内投資を促し、国際競争力を高め、国民に広く知恵を求めつつ、長期的、戦略的な取組の中で大幅な排出削減を目指し、また、世界全体での削減にも貢献していくこととする。」とした。
こうした困難な課題を根本的に解決するためには、革新的なエネルギー関係技術の開発とそのような技術を社会全体で導入していくことが不可欠となるが、そのためには、長期的な研究開発の取組と制度の変革を伴うような包括的な取組が必要である。#60
一方、エネルギー需給に影響を及ぼす課題は様々なレベルで存在しており、短期・中期それぞれの観点から、エネルギー需給を安定させ、安全性や効率性を改善していくことが、日々の生活や経済の基盤を形成しているエネルギーの位置付けを踏まえると、極めて重要な取組となる。
したがって、エネルギー関係技術の開発に当たっては、どのような課題を克服するための取組なのか、まずその目標を定めるとともに、開発を実現する時間軸と社会に実装化させていくための方策を合わせて明確化することが重要であるとの認識の下、そうした様々な技術開発プロジェクトを全体として整合的に進めていくための戦略をロードマップとして、「環境エネルギー技術革新計画(2013年9月総合科学技術会議決定)」等も踏まえつつ、「エネルギー関係技術開発ロードマップ」を2014年12月に策定した。
また、2016年4月には、2030年のエネルギーミックスの実現を図るため、省エネルギー、再生可能エネルギーをはじめとする関連制度を一体的に整備する「エネルギー革新戦略」を策定するとともに、現状の温室効果ガスの削減努力を継続するだけでなく、抜本的な削減を実現するイノベーション創出が不可欠であるとの認識の下、2016年4月に「エネルギー・環境イノベーション戦略」を策定した。
今後、2050年のシナリオ設計に向けては可能性と不確実性が混在するため、「野心的かつしなやかな複線シナリオ」が必要となる。この実現には非連続の技術開発が必要であるが、現段階では技術間競争の勝者を見極めることは困難である。このため、最新の情勢と技術革新の進展を見極めながら、各選択肢の開発目標や選択肢間の相対的な重点度合いを決定・修正していくことが必要であり、そのための仕組みとして、科学的レビューメカニズム(詳細後述)の具体化に向けて早期に検討を進める。#61

取り組むべき技術課題

海外からの化石燃料に過度に依存するエネルギー需給構造を長期的視点に基づいて変革していくための技術開発として、国産エネルギーに位置付けられる再生可能エネルギーについては、より革新的な技術シーズを発掘、育成しながら、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマスエネルギー、波力・潮力等の海洋エネルギー等の低コスト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発等を重点的に推進するとともに、再生可能エネルギー発電の既存系統への接続量増加のための系統運用技術の高度化や送配電機器の技術実証を行う。
同様に、準国産エネルギーに位置付けられる原子力については、軽水炉技術の向上を始めとして、国内外の原子力利用を取り巻く環境変化に対応し、その技術課題の解決のために積極的に取り組む必要がある。その際、安全性・信頼性・効率性の一層の向上に加えて、再生可能エネルギーとの共存、水素製造や熱利用といった多様な社会的要請の高まりも見据えた原子力関連技術のイノベーションを促進するという観点が重要である。まず、万が一の事故のリスクを下げていくため、過酷事故対策を含めた軽水炉の一層の安全性・信頼性・効率性向上に資する技術の開発を進める。また、水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する高温ガス炉など、安全性の高度化に貢献する技術開発を、海外市場の動向を見据えつつ国際協力の下で推進する。#62さらに、原子力利用の安全性・信頼性・効率性を抜本的に高める新技術等の開発を進める。このような取組を支えるため、人材育成や研究開発等に必要な試験研究炉の整備を含め、産学官の垣根を越えた人材・技術・産業基盤の強化を進める。なお、こうした取組を進めるに当たっては、小型モジュール炉や溶融塩炉を含む革新的な原子炉開発を進める米国や欧州の取組も踏まえつつ、国は長期的な開発ビジョンを掲げ、民間は創意工夫や知恵を活かしながら、多様な技術間競争と国内外の市場による選択を行うなど、戦略的柔軟性を確保して進める。また、核融合エネルギーの実現に向け、国際協力で進められているトカマク方式のITER計画や幅広いアプローチ活動については、サイトでの建設や機器の製作が進展しており、引き続き、長期的視野に立って着実に推進するとともに、技術の多様性を確保する観点から、ヘリカル方式・レーザー方式や革新的概念の研究を並行して推進する。また、放射性廃棄物の減容化・有害度低減や、安定した放射性廃棄物の最終処分に必要となる技術開発等を進める。
これらに加えて、我が国の排他的経済水域に豊富に眠ると見られているメタンハイドレートや金属鉱物を商業ベースで開発が進められるようにするための技術開発を中長期的な観点から着実に進めていく。
また、水素については、再生可能エネルギーと並ぶ新たなエネルギーの選択肢とすべく、国内外の水素需要の拡大を図るとともに、中長期的な水素コストの低減に向け、水素の「製造、貯蔵・輸送、利用」まで一気通貫した国際的なサプライチェーンの構築、電力や産業等様々な分野における利用促進などのための技術課題の解決に向けた取組を加速していく。#63さらに、アンモニアを燃料として直接利用する技術開発、水素をCO2と組み合わせることでカーボンニュートラルとしうるガスを生成するメタネーションなど、既存のインフラを有効利用した脱炭素化のための技術開発を推進していく。無線送受電技術により宇宙空間から地上に電力を供給する宇宙太陽光発電システム(SSPS)の宇宙での実証に向けた基盤技術の開発などの将来の革新的なエネルギーに関する中長期的な技術開発については、これらのエネルギー供給源としての位置付けや経済合理性等を総合的かつ不断に評価しつつ、技術開発を含めて必要な取組を行う。
また、様々なエネルギー源を活用していくために不可欠な要素である安全性・安定性を強化していくための技術開発として、例えば、二次エネルギーの中心を担う電気を最終消費者に分配する要となる送配電網を高度化するため、変動電源が今後増加することに対応して、高度なシミュレーションに基づく系統運用技術などの基盤技術の開発を加速するとともに、蓄電池や水素などのエネルギーの貯蔵能力強化などを進める。
さらに、エネルギーのサプライチェーンにおける全ての段階でエネルギー利用の効率化を進めることで、徹底的に効率化されたエネルギー・サプライチェーンを実現するため、石炭やLNGの高効率火力発電実現のための技術開発や、利用局面において効率的にエネルギーを利活用するための製品について、材料・デバイスまで遡って高効率化を支える技術の開発、エネルギー利用に関するプロセスを効率化するためのエネルギーマネジメントシステムの高度化や、製造プロセスの革新を支える技術開発に取り組む。
こうした徹底した効率化や水素の活用のための取組を進める一方、それでも最終的に対応しなければならない地球温暖化などに関する課題について、例えば化石燃料を徹底的に効率的に利用した上で最終的に発生するCO2に対応する技術としてCCSなどに関する技術開発や実証も並行して進めていく。
また、これら研究開発は、科学技術基本計画に基づいて策定される統合イノベーション戦略も踏まえて推進することとする。

国民各層とのコミュニケーションの充実

エネルギーに関する国民各層の理解の増進

エネルギーに関する広報の在り方

エネルギーの適切な選択にとって、政府による関連情報の開示、徹底した透明性の確保が何よりも重要であることは言を俟たない。政府はこの点を肝に銘じるべきである。
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故後、エネルギー全体に対する国民の関心は高まっている。例えば、東日本大震災直後、電力の安定供給に対する懸念から、節電への取組が定着し、災害時対応力を高める観点から、分散型エネルギーシステムに対する関心が高まった。また現在は、原子力に関する使用済燃料の処理・処分の問題や、依然として高い海外資源への依存やエネルギー自給率の低さ、電気料金の上昇など、エネルギー需給構造が抱える課題について、国民の間の認識も深まりつつあると考えられる。さらに最近は、パリ協定の発効を受けて脱炭素化への世界的なモメンタムが高まっており、海外で再生可能エネルギーの発電コストの低減が進む中、国内での再生可能エネルギーの発電コストや、送電線への接続問題などに関心が集まっている。
こうした状況の下、我が国のエネルギー事情の全体像を、関心度合いや背景知識の多寡によらず、誰もがある程度理解できるような効果的な情報提供の在り方、関心を持って情報に接することができるようにするための広報の方法などについて継続的な改善を図り、国民が自らの関心に基づいて最も適切に整理された情報を選択し活用できるよう、科学的知見やデータ等に基づいた客観的で多様な情報提供の体制を確立する。その一環として、エネルギーに関する基礎用語や基本データ、最新の動向やトピックなど政策に関連する情報をできる限りわかりやすく表現するよう継続的に努めるとともに、その内容を、資源エネルギー庁のホームページなどを活用して、随時、丁寧に発信していく。
また、こうしたエネルギーをめぐる状況の全体像への理解を幅広く得ながら、並行して、エネルギー安全保障、エネルギーコストや環境負荷低減のための負担、再生可能エネルギーや原子力を取り巻く課題、地球温暖化問題など、個々の政策やその課題、対応の方向性についての理解を得ていくよう努めていく。
このような一つひとつの取組を地道に丁寧に行うことを通じて、エネルギーに関する国民各層の理解が深まっていけば、それが例えば、国民一人ひとりの省エネルギーの徹底や、再生可能エネルギーの供給者としてエネルギー供給構造への参加、放射性廃棄物処分の立地選定への関心の高まりなどにつながり、国民の主体的な取組が広がっていくことが期待される。
一方、こうした形で国民各層がエネルギー事情に対する理解を深める機会を充実させていく上で大きな障害となるのが、「安全神話」の存在である。「安全神話」は、政府や事業者が設定した基準や条件を満たせば、リスクはゼロとなり、それ以上の理解を必要としないかのような印象を与えることとなった。
従来のエネルギー広報は、こうした認識を改善することができず、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故後、行政や事業者は、情報共有の在り方、地元とのコミュニケーションに関する問題意識の不足など多くの批判を受け、国民からの信頼を低下させることになったことを深く反省しなければならない
#64
したがって、今後のエネルギー広報の在り方については、関心の度合いに応じて情報量を適切に整理した複数の包括的なエネルギー情報を用意することが必要である。また、このような情報には、常にリスクが存在することを明示し、更に関心を持ってもらうことで理解を深めていく動機付けとリスクに関する正しい理解を得ていくことが必要であり、これらの取組を強化する。#65
その際、客観性を高め、「国民目線」で個々の事情に対応したより適切な情報提供を行えるよう、第三者による助言を得ながら取組を進めていくために、民間有識者から構成されるアドバイザリーボードを更に活用していく。

客観的な情報・データのアクセス向上による第三者機関によるエネルギー情報の発信の促進

メディア、民間調査機関や非営利法人等に対する情報提供を積極的に行い、第三者が独自の視点に基づいて情報を整理し、国民に対してエネルギーに関する情報を様々な形で提供することで、国全体としてエネルギーに関する広報が広く行われるような環境を実現していく。#66
このような取組を促進する一環として、情報を発信していく主体が、エネルギーの状況を把握し、様々な分析を行えるようにするため、エネルギーに関連する統計情報等を迅速かつ容易に入手できるよう、ホームページの内容を充実する。

エネルギー教育の推進

こうしたエネルギー事情に関する理解の拡大と深化を得ていく上で、学校教育の現場でエネルギーに関する基礎的な知識を教育プログラムの一環として取り上げることは、大きな効果が得られると考えられる。
エネルギーはあらゆる国民生活、産業活動を支える基礎であり、そのエネルギー源の大宗を海外に依存する我が国の現状について、子供の頃から理解することは、社会人へと成長し、エネルギー政策に国民として関与していく主体となった際に、適切な判断を行っていく上で大いに役立つこととなることから、エネルギーの専門家や事業者、行政官のみならず、エネルギー問題に関係する様々な人が積極的に教育に参加していくことが求められる。
このような取組の結果、子供の頃からのエネルギー教育を通じて、高等教育段階においてエネルギーを専門分野として学ぶ人材が増えていくことが期待され、将来のエネルギー需給構造を支える人材へと育成していく確かなキャリアパスの確立にもつながる。

政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実

エネルギーをめぐる状況の全体像について理解を深めてもらうための最大限の努力を行う一方で、エネルギー政策の立案プロセスの透明性を高め、政策に対する信頼を得ていくことが重要である。審議会や有識者会合等を通じた政策立案のプロセスは、最大限オープンにし、透明性を高めていく。#67
また、国民各層との対話を進めていくためのコミュニケーションを強化していく。原子力などエネルギーに係る様々な課題については、内容が専門的で複雑であったり、安全性やリスク等の説明が難解であったりすることが理解を妨げる要因となるため、一方的に情報を伝えるだけでなく、丁寧な対話や双方向型のコミュニケーションを充実することにより、一層の理解促進を図る。こうした対話型の政策立案・実施プロセスを社会に定着させていく取組を様々な形で進めていくことが望まれる。
その際、国のみがエネルギー政策の立案・運用に責任を持った形にするのではなく、自治体、事業者、非営利法人等の各主体がそれぞれ自らの強みを発揮する形でエネルギー政策に関与している実態を踏まえ、これらの主体を新たに構築していくコミュニケーションの仕組みにしっかりと位置付け、責任ある主体として政策立案から実施に至るプロセスに関与していく仕組みへと発展させていくことが重要である。例えば、多様な主体が総合的に議論する枠組みへの実現に向けて、関係省庁と全国の自治体が連携した地域のエネルギー協議会を活用したり、地域共生に関するプラットフォームを地域の実情に応じて構築し原子力に関するコミュニケーションを実施するなど、多様な主体がエネルギーに関わる様々な課題を議論し、学び合い、理解を深めて政策を前進させていくような取組を進めていく。#68

第3章 2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化への挑戦

野心的な複線シナリオの採用~あらゆる選択肢の可能性を追求~

今問うべきは、日本の潜在力を顕在化させる打ち手

技術間競争の高まりは、脱炭素化の「可能性」を高めている。一方で、現時点では、経済的で脱炭素化した、変動するエネルギー需要を単独で満たす完璧なエネルギー技術は実現しておらず、技術間競争の帰趨は未だ不透明であるという点において、「不確実性」を内包するものである。#69また、こうした技術の変化は、過渡的にはエネルギー情勢を不安定化させるとともに、エネルギー転換後においても、コア技術を自国で確保しない限り地経学的なリスクが残る。#70
このように、ここ数年の情勢変化の本質を「可能性」と「不確実性」に求めるとすれば、今問うべきは、日本のリスクと可能性を見極め、可能性を顕在化するための打ち手を構想することである。
エネルギー転換に向けた取組は、必ずしもバラ色の世界ではない。全てのエネルギー源には光も影もある。技術・インフラ・産業構造・政策体系が複雑に絡み合うところに、エネルギー構造の特徴があり、その変革には時間もコストもかかる。他方、エネルギー転換の必然性は世界的な共通課題となりつつある。こうした現実を直視し、エネルギーをめぐる自国の置かれた環境に合わせて、戦略を構築できた国が優位に立つ。
資源小国である日本は、資源の乏しさを技術でカバーしてきた。しかし、最近は低炭素化分野での新興国の台頭が著しく、日本の存在感は相対的に低下している。#71さらに今、脱炭素化分野での技術革新競争が本格化しつつある中で、仮に、低炭素化のみならず脱炭素化分野でも、世界のエネルギー構造変革への挑戦に躊躇すれば、日本のリスクは顕在化する。
他方、脱炭素化エネルギーシステムはなお開発途上であり、各国の挑戦も試行錯誤にある中、日本は、水素・蓄電・原子力といった脱炭素化技術の基盤を持ち、かつ、資源国と新興国、先進国と緊密な関係を構築している数少ない国である。
こうした日本が保持する大きな可能性を秘めた技術的な資産をどのように活用していくのか、どのような手を打てば日本の潜在力が開花しうるのかという視点で、2050年に向けたシナリオのあり方を検討する。

主要国の比較、全方位の複線シナリオの有効性

主要国は、自然変動型の再生可能エネルギーだけではなく、水力や原子力などの多様な脱炭素化手段を組み合わせたシナリオを採用している。英国は、北海油田の枯渇、石炭の老朽化と原子力の廃炉に直面する中で、再生可能エネルギーの拡大・ガスシフト・原子力維持・省エネルギーといった脱炭素化の手段をバランスよく組み合わせて、CO2削減に成功している#72
他方、ドイツは、省エネルギーと再生可能エネルギー拡大のみで脱炭素化を実現するシナリオを選択しているが、省エネルギーによる需要削減は大きな成果を今のところ挙げていない一方で、再生可能エネルギーの量的拡大と裏腹に原子力が減少しているため、結果として石炭への依存比率は足元で44%であり、CO2削減が停滞し、電気代も高止まりしている。#73
また、現在、安価で低炭素な電力システムを達成している数少ない国や地域は、太陽光や風力といった出力が変動する再生可能エネルギーの大量導入国ではなく、仏国やスウェーデン、米国ワシントン州など、水力や原子力を主軸にする国・州が中心である。このことは、現状の技術で安定的な脱炭素化のツールと言えるのは主に水力と原子力であり、変動する再生可能エネルギーだけでは現時点では脱炭素化には及ばない、という事実が示唆される。#74

我が国固有のエネルギー環境(資源有無、国際連系線の有無、面積制約)

エネルギー選択には国ごとの特殊性・固有性がある。①化石資源の賦存状況、②自然条件で決まる変動再生可能エネルギーの稼働率、③送配電ネットワークやガスパイプライン網などの国際的なエネルギー連系状況、④エネルギー相対価格体系といった点が各国のエネルギー選択を左右する。こうした点に着目した場合、我が国のエネルギー環境は、国内炭を持つ一方で国際電力網を持ち再生可能エネルギーの拡大が容易なドイツよりも、北海油田の生産が減少傾向にあり島国で国際連系線の容量が限られる英国に近いと言える。#75
再生可能エネルギーの変動を火力で吸収することを回避する有力な手立ての一つとして、国際連系線で再生可能エネルギー立地国と電力需要国を効果的につなぎ、より大きな電力プールを形成して、再生可能エネルギーの変動を吸収することがある。ドイツやデンマークは隣国との電力の融通を電力需給の調整弁として活用する中で再生可能エネルギーを拡大している。欧州ではEU大で国際連系線の容量を増やすという試みに着手している。こうした国際連系線が整備されれば、例えば水力資源が豊富なノルウェーの揚水発電をEUの送電網に組み込み、「グリーンバッテリー」として活用することも可能となる。このような国を超えた連携により変動性の再生可能エネルギーの導入を促進する取組の中にあっても、EU全体での変動性の再生可能エネルギー導入比率は2016年実勢で13%程度にとどまっているのが現状である。高効率で低コストの蓄電技術が必ずしも確立していない現状で、国際連系線を活用して再生可能エネルギーの導入量を大きく伸ばす一部の国はあっても、EUという大きな閉じた電力市場全体で見れば、導入量の拡大にも現時点の技術では課題がある。国際連系線を活用した再生可能エネルギー拡大という戦略は、日本にとって様々な課題があり、再生可能エネルギーの出力変動の制御に活用可能な技術の革新が必然的に求められる。#76
また、我が国は既に、面積当たりの再生可能エネルギー導入量は世界トップレベルにある。再生可能エネルギーにも立地の適地があり、大量導入を進めれば、いずれ面積制約に直面する。その制約を克服するためには、非連続なイノベーションによる発電効率の抜本的向上が不可欠となる。#77

あらゆる選択肢の可能性を追求する野心的な複線シナリオの採用

2050年シナリオに伴う不確実性、先行する主要国情勢から得られる教訓、我が国固有のエネルギー環境から判断し、再生可能エネルギーや水素・CCS、原子力など、あらゆる選択肢を追求する「エネルギー転換・脱炭素化を目指した全方位での野心的な複線シナリオ」を採用する。#78

2050年シナリオの設計

「より高度な3E+S」~複雑で不確実な状況下での評価軸~

エネルギーの選択には、各国固有の環境が反映される。
我が国は、自国の化石資源に乏しい。国際的なパイプラインも国際連系線もない。中東依存度は主要国の中で突出して高い。長期のエネルギー需要は人口減少により量的に増大し続けるとは見込まれない中においても、電力の品質への要求水準は維持しなければならない。成熟経済であるが故に、エネルギーインフラ(送電線、ガス導管、ガソリンスタンド等)が既に全国に張り巡らされている。エネルギー多消費産業を中心にエネルギー効率は極めて高い。#79この結果生み出されたのが、高信頼のエネルギー技術であり、それに基づくサプライチェーンを構成している。このような高品質・高信頼のエネルギー関連技術・産業が存在することが、エネルギー開発をこれから本格化する新興国やエネルギー転換に挑戦する資源国とのエネルギー外交上のレバレッジとなっている。他方、東日本大震災後の計画停電や燃料供給の停滞は、それまでのエネルギーインフラにも国民生活・経済活動へのリスクとなる脆弱性がある点を再認識させた。
これらを踏まえれば、日本のエネルギー選択の基本方針として3E+Sが基本となることは、長期を見通したとしても変わらない。他方、長期のエネルギー転換に向けては、より複雑で不確実な状況下においてエネルギー選択を行っていくことが求められる。このため、当該選択にあたっては、以下に示す「より高度な3E+S」を評価軸として設定することが適切である。#80
具体的には、不確実な状況の中での対応力を重視し、の4点をエネルギー選択の評価軸とする。

科学的レビューメカニズム

2050年へ向けて「野心的な複線シナリオ」を検討しても、その実現に向けた過程において、技術動向や世界情勢は予見しがたい形で大きく変動する。その中で、「より高度な3E+S」を満たすエネルギー選択を適切に実行していくため、最新の技術動向と情勢を定期的に把握し、透明な仕組み・手続の下、各選択肢の開発目標や相対的重点度合いを柔軟に修正・決定していく「科学的レビューメカニズム」を構築する。
このメカニズムが担う機能は、エネルギー選択を具体化する上で極めて重要であり、以下のような多層的な検証メカニズムとしなければならない。
1) 内外の人的ネットワークを駆使した情報収集・解析
2) 統一的な評価軸での技術の比較検証
3) 各技術が内包する多様なリスクの定性・定量的評価
4) 各技術に関する自国産業の比較優位の検証
5) 1)~4)に関する客観的・多面的・専門的な分析の結果に基づき、選択肢ごとの開発目標を設定するとともに、選択肢の相対的重点度合いを判断し、それに応じて政策資源の重点化を決めていく。
#81
先行例を参考にしながら、
1) エネルギー情勢分析と学術・技術に関する人的ネットワークの形成
2) エネルギーに関する経済的・技術的なデータベースの構築と公開
3) 脱炭素化エネルギーシステム間のコスト・リスク検証手法の開発と公開
4) 国民的関心に応えるためのエネルギー情勢判断の基礎材料の提供
等の点に留意して、具体化する必要がある。

また、このような科学的レビューメカニズムを通じて、国民に対してエネルギーに関する最新の情報を正確に提供し、幅広く伝え、理解を深めてもらうとともに、国民一人ひとりが暮らしの中で主体的なエネルギー選択を行えるよう促していく。#82

脱炭素化エネルギーシステム間のコスト・リスク検証とダイナミズム

従来のエネルギー選択の検討においては、電力システムに関する電源別コスト検証というアプローチが中心となってきた。これに対して、2050年シナリオは、電力のみならず、非電力の熱・輸送システムなども含めた低炭素化・脱炭素化に挑戦するものとなる。また、電源別のコスト検証のみでは、実際に要する他のコスト(需給調整コスト、系統増強等に要するインフラコスト等)も含めたシステム全体でのコストの比較をすることは困難である。#83
そこで、「電源別のコスト検証」から「脱炭素化エネルギーシステム間でのコスト・リスク検証」に転換する。これにより、電力・非電力、熱・輸送といった複数のエネルギーシステムの脱炭素化の技術的成熟度などを横断的に把握することが可能となる。また、システムコスト検証とすることで、実際にかかるコストのトータルでの比較が行えるようになる。
電力システムの脱炭素化としては、例えば、太陽光・風力といった変動再生可能エネルギーをメインとしつつ、その間欠性を蓄電や水素といった電力貯蔵システムで補う「再生可能エネルギー・電力貯蔵系システム」、海外の再生可能エネルギーやCCSを施した褐炭など、安価なエネルギー源を水素ガスあるいは合成ガス(メタン)に転換する「水素・合成ガス化システム」、水力・地熱・原子力などの「既存の脱炭素化エネルギーシステム」などが考えられる。
なお、これ以外にも「デジタル技術で統合する分散型エネルギーシステムによる省エネルギーの高度化」、輸送システムの脱炭素化としては、電化、水素化、自動運転などによる交通量制御といったアプローチ、熱システムの脱炭素化としては、電化、水素化、合成ガス化といったアプローチが考えられる。
これらの技術の成熟度を、既存のシステムのコスト・リスクをベンチマークとして評価することが考えられる。
このような脱炭素化エネルギーシステムを用いた現状の評価から見出せることは、原子力や水力、地熱といった脱炭素化の選択肢は実用段階にあるが、再生可能エネルギーのベースロード化の鍵を握る蓄電や水素といった技術、化石資源の脱炭素化の鍵を握る水素や合成ガスといった技術など、システム全体の脱炭素化を実現するための選択肢はいずれも開発段階にあるという点である。#84また、各選択肢には固有のリスクがあり、この管理が技術的にどこまで可能かという検証も必要である。こうした点も含め、科学的レビューメカニズムの中で、専門的かつ中立的な検証を継続して行い、選択肢の熟度に関する認識を広く共有できれば、このこと自身が、選択肢間の競争を加速する効果を持つようになると考えられる。
さらに、この脱炭素化エネルギーシステムによるアプローチは、よりダイナミックなエネルギー転換を促す効果もある。蓄電・水素・デジタル化といった脱炭素化エネルギーシステムの技術が合理的なコストで実用化に至れば、従来のベースロード、ミドル、ピーク電源といった垣根を越えて多様な電源の脱炭素化が進むとともに、こうした技術が低廉なコストで熱と輸送システムの脱炭素化にも利用可能となる。加えて、脱炭素化技術が小型化されることにより、電力・熱・輸送のシステムがコンパクトなエリアで完結する分散型エネルギーシステムの可能性をも高めていく。

各選択肢が直面する課題、対応の重点

エネルギー転換・脱炭素化への挑戦は、我が国の電力・熱・輸送システムの脱炭素化への挑戦と、海外での脱炭素化貢献による大幅な排出量削減、この両面での取組に他ならない。#85他方、現状、脱炭素化エネルギーシステムの選択肢は複数存在するが、変動するエネルギー需要に単独で対応が可能な実用段階の選択肢はなく、あらゆる選択肢にはそれぞれの特徴、光と影がある。野心的な目標を着実に実現していくためには、最新の情勢と技術の動向を見極め、「より高度な3E+S」の評価軸に基づき、その時点で最適な形で、複数の脱炭素化エネルギーシステムを組み合わせ、国内と海外での脱炭素化へ向けた取組を着実に進めなければならない。このために、まず脱炭素化エネルギーシステムに関するあらゆる選択肢について、人材・技術・産業基盤を強化し、官民が結束して課題解決に挑戦していく。この挑戦の成果が、科学的レビューメカニズムを通じて冷静かつ客観的に評価され、その選択肢の位置づけが決まる。こうした問題意識の下での主体的な挑戦と選択肢間の競争により、我が国のエネルギー選択の幅を広げ、困難な状況を切り開いていく。さらには、エネルギー転換に資するプロジェクトを的確に選択し、民間による投資の予見可能性を高めながら、技術開発や人材の育成・確保への取組の充実など、重点的な政策資源の投入を強化していく。

再生可能エネルギーの課題解決方針

価格低下とデジタル技術の発展により、電力システムにおける主力化への期待が高まっている再生可能エネルギーに関しては、経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指す。地熱・水力などの安定した再生可能エネルギーの増強のための取組、太陽光・風力といった出力が変動する再生可能エネルギーの課題解決を進める。
このため、まず国内の再生可能エネルギー価格を国際水準並みに引き下げ、FIT制度による補助からの早期自立を図り、既存送電網の開放を徹底、補完電源としての火力容量維持の仕組みを早期に整える。#86
これと並行して、さらなる大量導入と経済的に自立し脱炭素化した主力電源化に向け、技術革新によるブレークスルーを要する課題に正面から取り組まなければならない。すなわち、面積的な制約の克服のための発電効率の抜本的向上、調整力の脱炭素化に向けた高性能低価格の蓄電池や水素システムの開発、需給調整をより精緻に行うためのデジタル技術の開発、再生可能エネルギーの分布に応じた送電網の増強、分散型ネットワークシステムの開発といった本質的な課題の解決に向け、地域と連携し、これを可能とする人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手する。

原子力の課題解決方針

東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。#87
現状、実用段階にある脱炭素化の選択肢である原子力に関しては、世界的に見て、一部に脱原発の動きがある一方で、エネルギー情勢の変化に対応して、安全性・経済性・機動性の更なる向上への取組が始まっている。#88
我が国においては、更なる安全性向上による事故リスクの抑制、廃炉や廃棄物処理・処分などのバックエンド問題への対処といった取組により、社会的信頼の回復がまず不可欠である。このため、人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手し、安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求、バックエンド問題の解決に向けた技術開発を進めていく。東京電力福島第一原子力発電所事故の原点に立ち返った責任感ある真摯な姿勢や取組こそ重要であり、これが我が国における原子力の社会的信頼の獲得の鍵となる。#89

火力の課題解決方針

可能性と不確実性を伴う情勢変化の下、エネルギー転換・脱炭素化が実現するまでの過渡期において、内外で化石エネルギー源は一次エネルギーとしてなお過半を占める主力と予測されており、地政学的リスクへの対応に向けて自主開発を継続する。
この中で、過渡期の方針は、よりクリーンなガス利用へのシフトと非効率石炭のフェードアウト、世界における化石燃料の低炭素化支援に傾注する。
また、長期を展望した脱炭素化への挑戦も同時並行で展開し、CCSや水素転換を日本が主導し、化石燃料の脱炭素化による利用を資源国・新興国とともに実現する。
#90

熱システム・輸送システムの課題解決方針

現状、熱システム、輸送システムとも、化石燃料に大きく依存しているが、電化・水素化等への転換を可能とする技術革新が進みつつあり、その可能性を追求する。まずは、高温の熱や超大型輸送など電化や水素化への難易度が高い領域を除き、中温~低温の熱や小型・中型車を軸に、電化や水素化等に向けた技術革新を深化させていく。
これに加え、自動車のCV(ConnectedVehicle)化や再生可能エネルギー・熱エネルギーの分散利用も組み合わせ、電化、水素化、電動化、分散デジタル化等をベストミックスさせることで、両システムの脱炭素化を進める。
さらに、重要なことはインフラ整備の課題である。熱システムと輸送システムは、化石資源の利用を前提としたエネルギーインフラ(ガス導管やガソリンスタンド網など)が形成され、国民生活の基礎を担っている。こうした今あるエネルギーインフラの機能を損なうことなく、電化・水素化したインフラを整備することは容易なことではない。技術革新の進展と歩調を合わせて、インフラ更新への道筋について共通の目標を持ち、予見可能性を高めながら対処していく。

省エネルギー・分散型エネルギーシステムの課題解決方針

再生可能エネルギーの小型化や高効率化、蓄電池や燃料電池システムの技術革新、輸送システムの電動化、そして需給制御を地域レベルで可能とするデジタル化技術やスマートグリッド技術の進展は、これらを効果的に組み合わせることで、電力・熱・輸送のシステムをコンパクトに統合した効率的で安定、かつ脱炭素化につながる需要サイド主導の地域における分散型エネルギーシステムの成立の可能性を高めていく。
自家発導入を率先して進めてきた鉄道・通信・病院・基地なども、エネルギーセキュリティの観点から、革新的技術に裏打ちされた分散型エネルギーシステムの開発に取り組んできている。
地域とエネルギーセキュリティ、この双方の観点から、技術に裏打ちされ経済的で安定した分散型エネルギーシステムの開発を主導し、世界に提案するとの姿勢で臨む。
業種別にエネルギー消費原単位等の目標を設定する産業トップランナー制度(ベンチマーク制度)については、現在設定されている指標や目標等を検証し、必要な見直し等を行うことによりグローバル・トップレベルにある我が国の省エネルギー水準を更に向上させるための制度として活用していく。#91

シナリオ実現に向けた総力戦対応

総力戦対応

2050年を見据えたエネルギー転換・脱炭素化の道のりは、可能性に満ちている反面、その過程には数多くの不確実性が横たわる。野心的な複線シナリオを追求し、「より高度な3E+S」の要請を満たすには、世界の競争相手との相対的なポジションを常に意識し、先手を打っていく戦略性が求められる#92
日本にとって、このプロセスは、挑戦的なものになる。国内のエネルギー市場の拡大が見込みにくい中、エネルギー転換・脱炭素化をめぐるグローバル競争において強力な国家・企業群に伍していかなければならない。#93
こうした中で必要なことは、「総力戦」での対応である。エネルギーは国家・経済・社会の礎であり、あらゆる活動の原点である。そのエネルギーが転換期に来ているという認識、危機感をまずは共有する。その上で、脱炭素化エネルギーシステムの課題を正しく抽出し、その解決に向けた果敢な挑戦を行う。同時に、脱炭素化技術による海外での貢献を行い、エネルギー転換の国際連携ネットワークを形成する。エネルギーインフラの再設計を実行し、総合力のあるエネルギー企業と地域に根差した分散型エネルギーシステムの経営を担える企業群を共に育成する。こうした対応により、長期的な視点で行動する金融資本の支持を得ていく。エネルギー転換に向け、政策・外交・産業・金融の好循環を実現することが何より重要である。#94
エネルギー転換のプロセスでは、技術と人材がエネルギー安全保障の源となる。2050年まで30年余り、現在の10代、20代の人材が2050年の中核を担う。エネルギー転換へのイニシアティブは、長期にわたる技術と人材投資の戦略に他ならない。各選択肢の可能性を追求し、課題を克服して、最適なエネルギー選択につなげていくために、官民を挙げて、継続的な技術革新と人材の育成・確保に挑戦していく。

世界共通の過少投資問題への対処

総力戦対応でエネルギー転換・脱炭素化を進めていく必要があるが、その際、エネルギー価格が変動する中での過少投資問題への対処は避けて通れない。
FIT制度で補助を受けて大量に導入された再生可能エネルギーは、電力価格の変動を増幅し、かつ、政策支援を受けた分だけ価格水準の低下を招く。このことが、本来ならば市場で選択されるはずの他の電源の投資回収を阻害する。再生可能エネルギーの大量導入で先行するドイツでも、この事態を放置すれば、これからは、再生可能エネルギーも含めて、いかなる投資も回収できなくなる可能性があると指摘されている。#95
他方、技術開発投資、発電投資、送電網の増強投資、分散型ネットワークシステムへの投資、海外への投資など、エネルギー転換に向けてなすべき投資は目白押しである。また、低炭素化・脱炭素化・分散化への試みは同時に着手しなければ、世界のエネルギー競争に劣後するリスクがある。このため、困難な投資環境の中でも予見性を確保し、必要な投資が確保される仕組みを、着実に設計し構築していく。#96

4層の実行シナリオ

エネルギー転換・脱炭素化に向けた総力戦を具体的に実行していくため、国内政策、エネルギー外交、産業・インフラ、金融の4層に関し、以下に掲げる方向性を基本として、取組を具体化・実行していく。

エネルギー転換実現に向けたエネルギー政策の展開

エネルギー政策は、1税制・FIT制度などを通じ政府が国民の負担から得た資金を分配・投資する資金循環メカニズム、2事業規制などの規制・制度、3市場設計、の3つの基礎の上に成り立っている。革新的な技術開発や投資については、科学的レビューメカニズムの対象となる脱炭素化エネルギーシステムの進捗を見極め、相対的重点度合いを判断する。それに応じてエネルギー転換に資するプロジェクトを的確に選択し、技術開発や人材の育成・確保への取組の充実など、重点的な政策資源の投入を強化していく。また、市場における価格シグナルが、リスク投資を阻害しているとすれば、エネルギー市場設計に相当の工夫が必要である。主要国で先行するポスト電力自由化の市場設計の先行例にも学び、具体化する。そして、規制下におかれている送配電ネットワークの次世代化に向け、送電事業の効率化と並行して必要な送電投資を行う、新たな制度改革の検討に着手する。さらに、エネルギー転換に向けた過少投資問題に対処し、技術に基づくエネルギー安全保障を確保し、低炭素化から脱炭素化に向けたエネルギー転換を実現する。このために政策を展開するとの国の意思と方針を明確に打ち出し、民間の投資判断に予見可能性を与え、その行動を促していく。

エネルギー転換に向けた国際連携の実現

エネルギー転換・脱炭素化は日本一国で成し遂げられるものではない。日本のエネルギー企業がエネルギー転換に必要な投資需要を十分に確保していくためには海外市場の獲得が欠かせない。#97我が国のエネルギー起源CO2排出量は約11憶トンであるのに対し、世界の排出量は300憶トンを超える。エネルギー転換による低炭素化と脱炭素化は、国内のみならず広く海外でも進めることが効果的である。このため、化石資源に依存する資源国や新興国と協調して低炭素化・脱炭素化に取り組む。さらには、エネルギー転換に向けた国際連携を日本が提唱し、新たなエネルギー外交を展開していく#98
IEAの予測によれば、SDGsに基づく持続可能な発展シナリオでも、2040年に化石燃料は一次エネルギー供給の過半を占め、再生可能エネルギーや原子力もその比率は拡大する#99特定のエネルギーだけでなく、低炭素化から脱炭素化まで全方位でのエネルギー選択に関する技術を持つことで、資源国から新興国に至るまで、その経済的ステージに応じた提案が可能となる。#100このことが、我が国のエネルギー安全保障と世界のエネルギー転換への貢献・市場獲得にもつながる。エネルギー転換・脱炭素化に向けた国と国との協力が促されるインセンティブ設計も重要である。既存の二国間オフセット・クレジット制度(JCM)に加え、環境性能に優れた製品・サービス等が普及することによるCO2削減貢献量の算定手法の提案など、我が国が世界のエネルギー転換に向けた公正・透明・有効なスキームを提案していく。

エネルギー転換を担う産業の強化とエネルギーインフラの再構築

世界のエネルギー企業は、エネルギー転換のため、戦略を大胆に見直し、事業分野・ポートフォリオの組み換えを行い、世界市場を舞台に展開している。他方、日本のエネルギー企業は、国内市場の依存度が高く、蓄電池・水素開発・次世代再生可能エネルギー・次世代原子力など、既存の枠組みを超えた取組はこれからという段階にある。電力・ガス・石油という伝統的な垣根を越えて、脱炭素化への挑戦を掲げた経営戦略を構想する総合エネルギー企業の出現を期待し、新技術による競争力の向上を目指して、高リスクだが可能性のある事業経営を促す方向で事業環境を整備する。
一方、分散型エネルギーシステムの世界は、各地域に根差した経営マインドにあふれる新興企業が担い手として登場する可能性がある。世界市場を舞台に活躍する総合エネルギー企業群と地域で分散型エネルギーシステムの開発を担う企業群、この世界と地域で活躍する企業群を生み出す事業環境を用意し、それぞれの強みを活かし、エネルギー転換・脱炭素化を加速する構造を作り出していく。
また、この過程で、送電網の次世代化、分散型ネットワークシステムの開発などエネルギーインフラの再構築を加速していく。

エネルギー転換・脱炭素化に向けた資金循環メカニズムの構築

金融資本市場においても、エネルギー転換・脱炭素化のうねりが企業や産業、社会の持続可能性に与える影響を見極めようとする動きが本格化している。この金融産業に対して、受け身で対応するのではなく、国がエネルギー転換・脱炭素化に向けた政策・外交・産業・インフラ強化のシナリオを打ち出し、これと併せて、エネルギー転換・脱炭素化シナリオを掲げた経営戦略を企業サイドが提案する。こうした国・企業の能動的な提案が、内外の金融資本の支持を集め、必要な資金が供給されて、官民一体となった我が国主導のエネルギー転換・脱炭素化を加速するという、エネルギー転換・脱炭素化に向けた資金循環メカニズムを構築する。#101

おわりに

第5次エネルギー基本計画は、2030年エネルギーミックスの実現と脱炭素化に向けた2050年エネルギーシナリオの2つを統合した計画である。#102第4次エネルギー基本計画を策定して以降のここ数年で、再生可能エネルギーの価格は低下し、中国をはじめとした新興国がエネルギー需給の両面で主要プレーヤーとなり、地政学的なリスクも中東情勢の不透明性が増す中で高まっている。脱炭素化のカギを握るエネルギー技術開発の主導権をめぐり、国家間競争も本格化している。今次エネルギー基本計画は、こうした情勢変化の中での日本のエネルギー選択の基本戦略を示すものである。

我が国がエネルギー戦略を構想するに際しては、常に踏まえなければいけない視点が2つある。それは第一に、東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国は、再生可能エネルギーの2030年エネルギーミックスの実現とそれに止まらない導入を追求しながら可能な限り原発依存度を低減する姿勢が求められることであり、第二に、化石資源に乏しくパイプラインや送電線で他国とエネルギーを共有することが容易にはできない島国である我が国は、常にエネルギー技術という希少資源を開発し確保しなければならない、という点である。

福島と技術、この2点を踏まえるとすれば、原発依存度低減という姿勢が求められる中でも、あらゆるエネルギー技術の選択肢を維持し、その開発を継続していくという点は、2030年エネルギーミックスでも2050年エネルギーシナリオでも、変わることはない。
その上で、2030年エネルギーミックスは、主として既存技術による最大限の対応を念頭に展開する。再生可能エネルギーと原子力によるゼロエミッション電源比率の達成を目指すが、2050年を見据えながら、その水準を超えた更なる拡大と前倒しを追求する。2050年エネルギーシナリオは、非連続の革新技術での対応を念頭に置く。我が国の技術を活かし、産業競争力の強化につなげるエネルギー転換・脱炭素化への挑戦である。既存技術の対応可能性を見極め、かつ、革新技術の進捗を見極めながら、2030年エネルギーミックスと2050年エネルギーシナリオを実行していくことが重要であり、本格的な科学的レビューメカニズムを導入して、エネルギー選択の重点をしなやかに決定する。

このレビュープロセスと同調して、エネルギー転換及び脱炭素化につながる全ての選択肢に関して、官民協調の開発プロジェクトを立ち上げ、国際協力体制を構築し、内外でのエネルギー転換投資を促す政策を展開する。エネルギー産業の体力強化を図り、エネルギー転換に向けたエネルギー産業・金融対話も実行する#103

エネルギー基本計画をしなやかに実行することで、技術に基づく3E+Sの実現、脱炭素化への国際貢献、成長と生活の安定と繁栄の基礎とする。#104